第13話 なんかかっこいい
ようやく外に出て来ると金髪がヘルメットを投げて来たので、反射的にキャッチする。
「早く乗れ」
いつの間にかバイクにまたがっている彼。わけがわからないけど、切羽詰まっている様子だったので急いで飛び乗る。
「しっかり掴まっとけよ」
走り出したバイクのスピードで、彼の着ているカーキ色の革ジャンや衣服についている金具が激しく翻る。
(なんか、かっこいい…っ!)
「ねえ」
「なんだよ」
「何で僕たち逃げてるの?」
「お前の命が危ないんだよ」
「勝負には勝ったんだからもう大丈…」
「そんなら後ろ、見てみな」
言われるまま肩越しに背後を振り返ると、奴とその仲間と思われる複数人の常連客が追いかけて来ていた。
「あいつら速度違反してやがる。ならこっちもギリギリを攻めるぞ。飛ばされんなよッ」
彼はハンドルを回してけたたましい音と共にもの凄いスピードで走り出した。
「今の気分は?」
高速で流れていく景色に高揚感を覚えながら、バイクの音でかき消されないように大声で答える。
「一度やってみたかったんだ、こういうの」
追われていることすら忘れて、命一杯楽しんでいた。
ふと痛みに似た感触を覚え懐を探ると、完全に存在を忘れていたボムに手が触れた。追われているのは僕なのに、このままだと彼まで危ない目に遭わせてしまうかもしれない。
男たちはどんどん距離を詰めてきている。
(誰も傷つけずに済む方法、このボムの威力を最低限に抑えられることが出来れば…)
そう強く願った途端、ボムの中に白い砂のような物が出現した。これはもしかして…もしそうなら。
「ねえ金髪」
「金髪って…他にもっとましな呼び方なかったのかよ」
「ごめん、見た目が先行しちゃって。名前もまだ聞いてなかったし」
「まあいいや。なに?」
「どこか行き止まりの所へ僕を連れて行って」
「は?、お前何言ってんだよ」
「考えがあるんだ。僕を下ろして君はその場から離れてほしい」
「正気か?」
「正気だよ」
舌打ちをしながらもバイクの頭の向きを変えてくれた。
「この路地をまっすぐだ。どうなっても知らねえぞ」
「大丈夫。金髪は直ぐにここから離れて」
被っていたヘルメットを彼に返し、路地を奥へと進む。
眼前に立ちふさがる瓦礫を確認して立ち止まる。上手くいくかわからないけど、0を当てた今の僕ならいける気がするんだ。
「やあ、にいちゃん。ちょろちょろ逃げ回りやがって、ただで済むと思うなよ」
「手間かけさせやがって」
「もうここはカジノじゃねえ。金を奪おうが命を奪おうが俺の自由だ」
奴らの手にはメリケンサックやナイフなどの近接近武器。銃火器みたいな遠距離武器がないのが不幸中の幸いかな。
ゆっくりと距離を詰められる。これがリアルな袋のねずみなんだと、緊張で冷や汗が額を伝う。
もう少し。あともう少しこっちに来てくれないと気絶へは追い込めない。だけど、右斜め前方にあるゴミの山よりもこちらへ来られたら奴らは死んでしまう。
…今だ!。
「すみませんッ」
足元に思い切りボムを叩きつける。
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