第9話 いつの間に?

「カジノか。賭け事はしたことがないし、したくもないから遠慮しておくよ」


「あっちの飲食店でバイトとか考えてんならやめた方がいいぜ」


「どうして?」


「あそこの店主、他所の人を毛嫌いしてるからだよ。ここの住人からしたらお前らはエイリアンみたいなもんだ。金を稼げるのはマジでカジノだけなんだぜ?」



確認を取りたいところだけど、その店主に他所の人である僕が会うことで不愉快な思いをさせるのは申し訳ない。なら、この人を信じるしかないか。



「どんなゲームで勝てばいいの?」


「おっ、やる気になった?。まあ色々あるから自分の目で見て決めろよ」


「わかった」


「いっつもルーレットやってる柄の悪い常連がいるんだけど、奴らは俺みたいにマイルドじゃないから気をつけろよ」


「ご忠告どうもありがとう」



恐る恐るカジノに足を踏み入れる。



 店内は無駄に多い照明と、煙草の煙。むさくるしい男たちは人相が悪く、各々歓喜したり怒鳴り散らしたりしながらゲームをしている。

 真ん中にある人の少ないルーレットまでやって来ると、ポーカーフェイスで感情の全く読めない白皙の男が立っていた。さっきの金髪とは正反対の印象。



「何を考えてるかわかるぞ。でもあれ、俺の兄貴だから」


「は?」



似ていなさすぎだ。



「兄貴のいるテーブルではイカサマは絶対にないし、見逃すこともないから安心して楽しみな」


「新人プレイヤーの方ですね。そこの椅子へおかけください」



この人、プレイヤーなのか?。僕のこと、他所の人って言わなかった。



「座るのか、座らないのか、早くお決めになってください」



例えここで攻撃されたとしても、武器を出すつもりはない。僕の武器はボムだから、こんな人の多い場所で防衛だとしても使ってしまったら相手のプレイヤーにも住人にも怪我を負わせてしまう。

 もし仮に攻撃されても構わない。今はとにかくこの世界で生き抜くためのお金を得ることだけを考えよう。

 促された椅子に腰かける。

 テーブルの周りには厳つい男たちが既に他の椅子を占領していた。この人たちが金髪の言っていた柄の悪い連中か。

 この人達がいるから、このテーブルだけ人がやけに少ないのかもしれない。

 でも金髪が兄貴と呼んでいた彼はイカサマを見逃さないって言ってたし、そういうことなら他のテーブルよりも安全かな。



「そろそろゲームを始めたいと思います。今回は初参加の方がいるので、ルールの確認をいたします」



冷たい視線が僕を一瞥してからルーレットへと戻る。



「このゲームは、0から37までの数字が書かれたこのルーレットで賭けをしていただきます」



彼はコインのような物を一枚こちらへ見せた。



「チップは既にお持ちの方はそちらで。新人プレイヤー様はポケットの中に入っているかと思います」



ポケットに手を入れ探ってみると、彼の言う通りチップが入っていて驚いた。

 金髪が少し離れた所でウインクするのが見える。彼がチップをくれたのか。一体いつの間にポケットに…?

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