第5話 プレイヤー情報
彼は立ち上がると、人影のあった建物を手でひさしを作り見上げた。
「いつもああやって上から狙って来るんだ。あの子の武器、アサルトライフルだから」
服についた土埃を払う手にはすり傷が出来ていて、細かな砂利がついた傷口からは血が滲んでいた。
「あの、腕から血が…」
「ほんとだ。平気平気、これくらい」
そう言って腕を隠してしまったけれど、腕以外にも傷が出来ていた。自分の身を挺して守ってくれたんだ。
「ありがとう、助けてくれて」
「どういたしまして。視界のどこかで黒髪が揺れたら、すぐ建物の中に身を隠した方がいいよ」
「アドバイスありがとう。僕ついさっきここに来たばかりで」
「そっか。それじゃあここにいるプレイヤーのことも知らないの?」
「恥ずかしながら」
「ならボクが教えてあげる。教えると言ってもコードネームと、誰がどの武器を所持しているかくらいなんだけどね」
腰を抜かしてしまったせいで未だ立ち上がれずにいる僕に視線を合わせるようにして彼はその場にしゃがみ込んだ。
「ここは危ないから、せめて遮蔽物のある所に移動しよう。立てる?」
差し伸べてくれた手をしっかりと掴み、立ち上がる。
彼の後について行くと、半壊の廃屋があった。さっきの何にもなく開けた道よりは安全そうだ。
「話の続きだけど、ここには君以外に五人のプレイヤーがいる。最古参のエントゥジアズモ。武器はバズーカで、どんなに遠く彼でも見つかればジ・エンドさ。次にアイロニー。武器はポイズンで、男を虜にする子だ。そしてクレピュスキュール。武器はリボルバーで、彼女の姿を見た者はニトロ以外いない。それでさっきの黒髪の子がスキアー。武器はさっきも話した通りアサルトライフルを所持してる。ボクはロコ、武器はサバイバルナイフ。実はボクもプレイヤーの一人なんだ」
そうだったのか。もし戦う気があるなら、人気のない所だしとっくに攻撃されているだろう。それにはなから攻撃するつもりだったら、そもそも狙撃されそうな僕をわざわざ助けたりなんかしないだろう。
「君は?」
「ミンストレル。武器はボムだよ」
「ふ~ん。ボクから教えられることはここまで。君とボクじゃ一応敵同士だから、助けるのはこれで最後。次に会ったら容赦なく攻撃するからそのつもりでいてね。検討を祈るよ、ミンストレル」
友達になれそうだったのに。やっぱり、戦闘は避けられないのかな。
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