第76話 幕が上がる

「ま、魔王ゥ!!!」


 アゼルの、……つまりはアゼルのされていた魔人ルシアが怒りの咆哮をあげる。



「お、起きやがったか」


 魔人の覚醒に気づいたアゼルはすぐさま跳躍して焚き火越しにいるイリアのもとへと着地する。



「魔王、てめえ!!」



「アゼル、やっぱり悪いですよ。いくらなんでも椅子代わりにしなくたって」



「あ? 俺が悪いのか? アイツを追い払ったところでまた襲ってくるんだから手元に置いといた方が安全だろ。夜が明けたらしかるべき場所に突き出せばいいじゃねえか」



「ま、私も魔王の意見には賛成だけど、手足の腱の一本も切らずに五体満足にしておくなんて魔王も甘いわよね」


 冷たい声でアミスアテナの声が通る。


「…………お前が一番怖ぇよ」



「ふざけやがって。魔王、マ王、マオウ!! 死ネェ!!」


 ルシアの狂気は徐々に深度を増していく。


 1秒毎に大事な何か理性が剥がれ落ちていくようにも見える。


 しかし、彼はそんなことを省みることもなく、魔銃と魔聖剣を手にアゼルたちへと駆け出す。



 戦いの第三幕が切って落とされた。

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