第10話 過ぎし日の残響
ふと、夢を見る。
いや、実際に起きた現実である以上、これは記憶、もしくは記録の再生か。
燃えている。
私の大事だったもの。大事だった人たち。全てが燃えている。
優しかったお父さん、お母さん。親切にしてくれた村のおじさんおばさんたち。
一番仲の良かった親友や、気のいいお兄さん。それに私を慕ってくれた村の子供たちも全て。そう、全てが真っ赤に燃えていた。
ほんの一日。
私が完全な勇者に至る為の儀式に臨み、村を空けたたった一日で、
私の守りたかった日常、本当に守りたかった人たちは全て灰になった。
何もない村だった。
何もない、何の穢れもないことが誇りの村だった。
勇者が、勇者に成りうる子供が産まれたことを村人全てが自分のことのように喜んでいた。
そんな村を突如魔族が襲ったという。
勇者という存在が確立する前に、私を殺してしまうためであったのだと聞いた。
私のせいだ。
私のせいだ。
私がいなければ。
私が、
私さえ、
私の手に残ったのは、
私が握りしめたのは銀晶の聖剣。
だから今度は守ってみせる。
必ず全てを救ってみせる。守ってあげることのできなかった全ての為に。
この地上に落ちた全ての悲しみを掬いとってみせる。
だから、許さない。
この悲劇を生み出した者を。そして守れなかった自分自身を。
いつか、この惨劇の元凶に
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