65.逆ハーレム
「お、お館様、お初にお目にかかります! チヨメ様配下のくノ一、アヤメと申します!」
「同じく、くノ一のクイナです! お館様、よ、よろしくお願いいたします!」
今、僕の前には緊張した面持ちの2人の少女がいた。
この子たちはチヨメの配下の子たちで、今回チヨメとともにアルゴン帝国からボロン王国へと潜入して、軍事情報を集めるのが目的だったみたいだ。
「うん、初めまして。よろしくね。そんな緊張しなくていいからね」
「あ、ありがたき幸せ!」
「もったいないお言葉です、お館様っ!」
うん、まったく緊張は解けないみたいだ。
まぁ、それも無理のないことかもしれない。
チヨメ曰く、彼女たちからすれば僕は天上の存在みたいで、そうそう会える機会がないみたいだった。
実際に彼女たちにはAOLでも会ったことがないので、こうした顔合わせの機会でもなければなかなかないことかもしれない。
「アヤメ、クイナ……これからお館様と一緒に、私たちはアルゴン帝国に向かう。あなたたちもついてきて」
「「はっ、承知しました!」」
2人はキビキビした態度で返事をした。
かなり気合いが入ってるのかもしれないな。
「2人はアルゴン帝国の宰相に軍事情報を集めるように言われてると思うんだけど、とりあえずこれまでのことをチヨメから聞いといてね」
「「は、はいっ!!」」
僕が話しかけると、途端に彼女たちは身体を硬直させていた。
少し慣れるまではそっとしておこうかな……あんまり緊張させちゃ疲れちゃうだろうし。
「それじゃ、後はよろしく」
僕は後のことをチヨメに任せ、部屋を出た。
「ふぅ~、今日はゆっくり寝れるといいなぁ……」
昨日の夜からほとんど寝れてないので、夕食を終えた僕のお腹は満たされ、眠気がだいぶ強くなってきていた。
「お風呂に入ってさっさと寝よう……」
「あっ、見つけましたわ!」
お風呂場へ向かうちょうど廊下の曲がり角でフランさんに出会うと、嬉しそうに声を上げた。
「どうしました? フランさん」
「どうしたもこうしたもないですわ! ちゃんと護衛してくれないとダメじゃないですの!」
「え? それはアルゴン帝国に向かうときの話じゃないんですか?」
「違いますわ! もう、あの時から護衛期間は開始してますのよ? 片時も離れずに一緒にいてくれなければ困りますわ」
僕は、てっきりアルゴン帝国に向かう道中や、あっちでの護衛を条件にしていたと思っていたので、まさかもうスタートしてるとは思ってもなかった。
「えっと、それはすみませんでした。では、今日はもうお風呂に入って寝るだけなので、明日からでもいいですか?」
「私は『片時も』と言いましたのよ。お風呂も睡眠も……ええ、ぜひ一緒に行きましょう!」
「え」
フランさんはそう言うと、僕の手を取って歩き始めた。
「あ、あの――」
「あ、そうでしたわ。チヨメさんもいなければダメですわね。どこにいるかご存知ですの?」
フランさんは急に立ち止まって、思い出したように尋ねた。
「え、あ、はい。さっきまで話してたのであっちの部屋に――!?」
「わかりましたわ! すぐに迎えに行きましょう!」
「わっ!」
再びフランさんはウキウキとした表情で歩き出し、僕は引っ張られるようにして連れて行かれた。
チヨメたちがいた部屋まで行くと、フランさんは僕に話したようなことをチヨメにも説明し、
「さぁさぁ、皆さんで行きましょう! 裸の付き合いというものですよ!」
アヤメとクイナの2人も強引に風呂場へと連行するのだった。
◆◇◆
「さぁ、寝ますわよ!」
「はい……」
「わかりました……」
そう言ったフランさんの肌はツヤツヤと輝いていた。
お風呂では、それはもうお約束なことがいっぱいあったからね!
胸をゴニョゴニョしたり、洗いっこしたり……あれ、これもはやフランさんのハーレムなのでは?
「チヨメさんと寝るのは初めてですわね。さぁさぁ、こちらへ……」
フランさんがベッドに入って手招きをする。
「……護衛だから私はベッドに入らなくてもいいです」
「そんなのダメですわ! 危険はどこからやってくるかわかりませんもの。もしかしたらこのシーツの中からかも……!」
「そんなことはない……と思います」
チヨメはなにかフランさんから感じ取ったのか一緒に寝ることを避けようとしていたけど、
「はあ~~温かいですわぁ~~」
「あの、これだと動けない……」
最終的には抱き枕状態にされていた。
「次はアヤメさんとクイナさんも一緒に寝たいですわ。もっと大きいベッドにしてもらおうかしら」
さすがにこのベッドに5人寝ることは難しかったので、アヤメとクイナは2人で1つの部屋を与えられ、そっちで寝ることになった。
「今日はチヨメもいるし、僕は部屋に戻りましょうか!」
「お、お館様、そんな……!」
チヨメがショックを受けた顔で僕のほうを見た。
そんな表情見たことなかったので、なんだかちょっと新鮮な気持ちになる。
「あら? 大丈夫ですわ! 反対側が空いてますもの。さぁ、ソーコさんもこちらに……!」
若干フランさんの息が荒くなってるような気がしないでもないけど、
「お、お館様……」
目を潤ませるチヨメを見たら、僕だけ逃げることはできなそうだ。
「さぁさぁ……」
「はい……」
僕がベッドに入ると、フランさんは満足そうな微笑み、両手を広げて僕とチヨメを抱き寄せるのだった。
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