4-9


「はい、ここまで」


親に宛てた日記のほんの一部でしかないけれど、悠斗は区切りをつける。


数分窓をあけ、部屋の換気をする。窓を開けている間は、誰も、なにも話さなかった。


窓を閉めると、遥が前に出た。


「本番は終わりですか」


「一応これで、終わろうかと」


「すぐに僕たちをリセットするのですか」


少し悲しそうだ。悠斗は答える。


「念のため、編集が終わるまでは君たちを借りたままでいようと思っている。どうして」


「今回のことを忘れたくないのです。遥君の気持ちにより近づいた気がするので。この気持ちを、このことを多くの同胞や人々に知ってもらいたい。そしてそれを見届けたいのです」


「計画が成功したとしても、海外やベースで多くの人が事情を知るまでには時間がかかると思う。レンタル期間は7日にしてある。延長してもいいけど……金銭的に厳しいし延長期間が長くなるほど店の人にも怪しまれる。編集動画をネットワークに流すまで。それで妥協してほしい。せめて10日かな」


「わかりました。それが、僕の遥でいられる命の時間ですね」


「あなたも動画が完成して世に流すまではいてもらいます」


悠斗が由香利に言った。


「かしこまりました」


「通報はまだ考えていますか」


「いいえ」


由香利もリセットされることに若干戸惑っているようでもある。


許可を得て、セーフモードに切り替える。由香利も遥も、居間の空間から消えていった。


「朗読はひと通り終えたな。8のインタビューを始めようか」


「そうだな。聞きやすいのはやっぱり吾妻かな」


健吾が頭を掻く。


「どこに住んでいるんだろ」


咲夜は呟く。


「日霧の8居住地区にいないということは、是枝のほうだろう」


悠斗がそう見当をつける。8居住区の一箇所でしか撮影をしないのも動画を作るにあたっては偏りがあるだろうという話になった。


今日いきなり突撃していくよりは、明日学校で吾妻にこっそり相談してみようということになって、みんなと別れた。


遥の朗読が頭の中をループしていた。

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