3-1
平屋を出たあと、ひとりでホストファミリーとなるはずだった早川の家を訪ねることにした。
どうなっているのかとても気になったのだ。変更になる前までは何度も通信していたこともあり、住所は頭に入っていたので辿り着くまで色々な人に聞いて目的地の最寄り駅へ向かう。
家は日霧市の隣の市、小崎町を列車で横切った先の是枝市にある。
駅からもまた訊ね歩くが、その番地に辿り着くと、すでに更地になっていた。
「すみません。あの。ここに住んでいた早川さんなんですけど」
庭に出ていた隣の家の女性に訊ねる。
「知らないよ。その話はよしてくれ」
忌々しいといった表情で家の中へ入ってしまい、玄関をぴしゃりと閉める。
外気は暑いのに、心の中を寒さが通り抜けていく。
自分はここに来るはずだったのだ。この家に。
法律書に、確かさらりと記されていた。8が選出された家庭は財産を没収すると。
家もすべてなくなるのだ。涙が出そうになる。早川家の子供は今、どうしているのだろう。まだ6歳のはずだから、どこかの施設にいるのだろうけれど。親が殺されるなら・・・・・・あの子は。
ざらざらとした質感が肌の隅々に食い込んでくる。体に密着する湿度が気持ち悪い。
日霧市に戻る。市役所へ行って、早川家の男の子の居場所を訊ねようかとも考える。
だが、訊ねたところでどうにもならない。居場所を教えてもらえたとしてもその時点で、目をつけられる可能性が高い。役所は敵か。
後回しだ。それ相応の理由をつけて役所の人を説き伏せられる自信はない。
だが、いてもたってもいられない。
駅に戻り、駅前のデジタル地図で改めて観光した8居住地区を確認する。本当に近い。学校から徒歩でおよそ30分程度だ。
足を向けた。8からなにか直接話を聞きたい。話を聞くだけでは罪に問われないだろう。これが日本で暮らしていく以上、避けて通れない問題なのだ。
暗い地下へと降りていくと、早速3人ほどの大人の男性が品のない笑顔を浮かべ、13、4歳くらいの男の子を暴行している。男の子は手足を傷だらけにしていた。
地下空間内は静かだ。男の子を誰も助けようとしない。
咲夜は男たちの中に割って入る。彼らはスーツを着ていた。
「ちょっと。やめてください」
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