②はじめての味 ~看病のお礼にはじめてのチュー/陰キャ吸血鬼の大胆告白(?)

//環境音 森

窓の外から鳥の声が聞こえる


「……」//主人公の太腿に寄りかかって、すやすやと寝息を立てている


「んん……」//声をかけられて目を覚ます


「……」//まだ寝ぼけている


「ハヒッ!」//状況を理解し、驚いて飛び上がる


//SE 床を後ずさる


//SE 棚にぶつかり、落ちてきた空の鍋で頭を打つ


「ひゃあ!」


「ううう……」//頭を押さえる


「はっ……」//視線に気づく


//SE 床に落ちていた本を拾う

とっさに顔を隠す


「ひっ……」//話しかけられて怯える


「へっ……?」


「う、うん。この学校の生徒……だよ……」


「う、うん……い、一年生……」


「君、も……?」


「うん……。せせ、制服の刺繍見た……から……」


「ハヒ……」//何かに気づく


「ハワワ……ご、ごごごめんねっ……勝手に、服脱がせて……」//動揺


「なな、何もしてないから……!」//混乱して段々早口に


「な、何もしてないは嘘、ごごご、ごめん……ねっ……」


「いい、い嫌だったよ……ね……こんな陰気な魔女に勝手に体触られて……」


「しょ、しょしょ消毒っ……机に消毒液あるから使って……あっ……でっ、でも、私の物なんか使いたくないよね……ごめんね」


「ごごごめん、本当にごめん……ね……」


「おお、お詫びっ……お詫びに出来ることならなんでもするからっ……」


「でで、でも私なんかにできることなんてなんにもないし……」


「わ、私ほんと何やってもだめで……性格も暗くて喋るのも下手で、嫌な気持ちにさせちゃうから……」


「ここ、こんなのが近くにいたら不快、だよね……ごめんね……」


「ごめんねっ……君の視界、汚しちゃって……!同じ空気吸ってごめんね……!」


「今すぐここから出ていくから……!」


「そ、そうだ学校の敷地からも出て行った方がいいよね……!そうすれば誰にも迷惑かけないし……い、いや、いっそこの国から……ううん、この星から出て行った方がいいよね……私ってやっぱりこの世にいちゃいけないよね……ごめんね……いますぐ図書室で私をこの世界から跡形もなく消し去る魔法を探してくるから!でっ……でも私なんかが校舎に入ったら学校の人に迷惑が……」


「と、とにかくもう二度と君の前には姿を見せないから!ごめんね……ごめんね……!」


「……」


「え……」


「嫌じゃなかった……?」//恐る恐る


「気持ち……よかった……?」


「エヒ……ヘ……ヘヘヘ……」//思わずにやつく


「へっ……?な、名前……?」


「わ、私、サーシャ」


「う、ううん。あ、会ったことない。初めまして……」


「わ、私、授業、出れてないから……」


「どど、どうして、って……それは……その……」


「……」//困ったように黙り込む


「こ、ここ……?ここは……も、森小屋だ……よ……」


「私、ここに住んでるの……いつもここでポーション、作ってる……」


「りょ、寮には馴染めなかった……から……」


「ぽぽ、ポーションの材料、森で集めてたら……君が倒れてるのを見つけて……」


「人食い花の棘に刺されて……動けなくなってたから……連れてきて、手当てを……」


「おお、お礼だなんて……そんな……」


「か、体はもう……大丈夫……?」


「……」//回復した様子を見て、ほっとする


「よかった……」//素直な感想


「やや、優しいだなんて……エ……エヒ……」//照れ


「とと、ところで、君はどうして森の中に……?」


「星占い……?」


「星占い術の授業があったんだ……」


「そそ、それで、お星様はなんて言ってたの……?」


「大切なものが、森で見つかる……」//復唱


「た、大切なものって……?」


「じ、人生で、かけがえのないもの……?」


「何のことかは、わ、わからないの……?でも、お星様はそれが森にあるって、言ってるの……?」


「な、夏休みの……宿題、なんだ……」


「そ、それで休みの間、家に帰らないで……寮に、残ったの……?」


「大切なものを探すために……」


「それで……校庭の森まで……?」


「す、すごい行動力だね……わ、私も君みたいに、なれればな……」


「わ、私にはポーションしかない……から……」//目を逸らしながら


//SE 手が触れる

主人公、サーシャの手を取る


「ハヒッ……」//驚いて硬直


「そ、そんな……そこまで褒められるほどのことじゃ……」//少し嬉しい


「ヒァ……」


「か、顔色……?」


「青……ざめてる……?」


「そ……それは、その……」


「……」//言い出しづらくて、少し黙ってしまう


「も、もうしばらく飲んでないから……貧血気味で……」


「な、何をって……」


「そ……その……」


「……」


「血……」//沈黙に耐えかねて喋りだす


「ちち、血が……足りないの……」


「わ、わわ私っ……吸血鬼っ……だからっ……」


「……」//言ってしまった……という沈黙


「へ……?」


「初めて会った……?」


「そ、そうだよね。私たち、とっても少ない種族、だから……」


「私も、家族の他で会ったこと、ない……」


「で、でも物語みたいに、怖い種族じゃないんだ……よ……。ただ自分の体で血を作るのが苦手なだけで、牙はあるけど、ほ……他は人間とあんまり変わらない……」//緊張を誤魔化そうと早口に


「ハヒッ……?」//予想外の発言に驚く


「君の血を……くれるの……?」


「でで、でもそんなっ……駄目、だよ……怪我だってしてるし……」


「た、たた、助けたお礼だなんて……」


「いいいい……!嫌だなんて、そんなっ……そんなことない……」


「むむ、むしろ……むしろ、むしろっ……」//気持ちの高ぶり


「君の血……とっても……」


「……」//美味しそう、とは恥ずかしくて言えない


「ほ、本当に……いいの……?」


「……」//嬉しい


「あ……」//何かを思い出す


「で、でも……採血用の注射器、この間壊れちゃったんだ……」


「うう……」//しょんぼり


「ハヒッ……!?」


「ちょちょ、直接……?君の体に口づけて……!?」


「わわわ、私、そんなはしたない子じゃ……ない……よ……」//恥じらい


「うう~~……」//でも欲しいんでしょ?と問われ困ったように


「ほ、本当にいいの……?ほんとのほんとに……?」


「き、君のこと……噛んでもいいの……?」


「は……」


「初めて……だから……」


「直接口づけて、血、貰うの……」


「い、痛くしちゃったらごめんね……」


「はぁっ……」//荒い息遣い。嬉しさと興奮、理性がせめぎ合う


「ごめんね……ごめんね……」//謝りながらも興奮を抑えきれない


「ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ血、貰うね……」


「腕……触るね……」


//SE 主人公の前腕に触れ、軽く持ち上げる音


「……」//どきどき


//SE 服がすれる音。近づく


「ごめんね……ちくっとする……よ……」//近くで。緊張しながらも優しい声色


「ん……」//口元を主人公の腕に寄せる


「はぷ……」//遠慮がちに噛む


「……!」//想像以上の甘美な味に驚く


「んんっ……ちゅ……」//少量だが、夢中で吸う


「ん……」


「ぷはっ……」//口を離す


「はーっ……はーっ……」//軽く息をつく


「……」//初めての味に感動


「あああ、あのっ……」//いてもたってもいられない気持ち


「わわ、私……私のっ……」


「私のつがいになってください!」


「……」


「ハヒッ……」//しばらく間をおいて我に返る


「わ、わわわ……私、いきなりなんてこと……」//動揺と恥じらい


「わわ、忘れてっ……今の……」


「ななななんでもないっ……なんでもない……からっ……」


「ごご、ごめん……ね……急に変なこと……言って……」


「ほほ、ほら、もう日が暮れてきてるし……」//話題を変えて誤魔化そうとする


「今日は……泊っていって……ねっ……」

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