サーシャのつがい 〜陰キャ吸血鬼ポーション術師と過ごす夏休み〜

新谷四季

①出会い ~恥ずかしがり屋の吸血鬼に優しく看病される

//環境音 森

木々のざわめきと鳥のさえずり


主人公、地面に倒れ意識を失いかけている


//SE 草を踏み分ける足音

近づいてくる


「ハヒッ……」


//SE 荷物を落とす音

驚いて持っていた薬草袋を落とす。中には森で採取した薬草が入っている


「え……あ……」


「ひ、人……だよ……ね……?」


「どど、どうしてこんなところに……」


「わ……た、大変、人食い花に捕まってる……」


//SE がさごそ

荷物から鋏を取り出す


//SE ジョキジョキと蔦を切る音


//SE どす、と鋏を置く音


「生きてる……?」


//SE 服のすれる音

近づいて屈みこむ


「……」//緊張


「……」//顔を近づけ、匂いを嗅ぐ


「エヒ……」//耳元で


「いい匂い……」//素直な感想


「美味しそう……」


「……じゃ、じゃなくて……」//焦って顔を上げる


//SE 首に手を触れる


「す、すごい熱……」


「ど、どうしよう……」


「……」//逡巡


「……」//決心


「わ、私がなんとかしなきゃ……」


「んんっ……」//力を込める


//SE 主人公の上半身を抱き上げる

力がないので半ば引き摺る形になる


「も、もう少し我慢して……ね……?」


//SE 主人公を引き摺っていく音






主人公、朦朧としている。周囲の音が徐々に鮮明になってゆく


//SE 鍋の煮える音


//SE フラスコに軽く触れる音


「この子でもない……この子だったかな……」//少し離れた場所から


「あった……」


//SE ポーションを手に取る


//SE 近づく足音に合わせて、フラスコの中の液体が揺れる


//SE 布ずれ音。屈みこむ


「苦しそう……」//不安げに


//SE ポーションを傾ける。液体が揺れる音


//SE ベッドが軽く軋む。主人公の傍に腰掛ける


//SE 服がすれる音


「お……お口、開けて……ね……?」//緊張しながら主人公の唇に手を当て、開かせる


「回復のポーション、だよ……」


「ん……」//口に飲み口を当てる


//SE こぽこぽと液体が傾く音


「……」//不安げに見守る


「すごい汗……」


//SE 布ずれ音。干してあったタオルをするりと引き抜く


「拭いてあげる……ね……」


//SE 額から首元まで汗を拭いていく


「ん……」//他人の体に触れるのが恥ずかしく、まだ緊張している


「はっ……」//軽く息を呑む。何かに気づいた様子


「は……初めて会った人の服を脱がすなんて……」//恥じらい


「で、でも。怪我してるかもしれないし……仕方ないよ……ね?」//若干の下心


「……」//心なしか息が荒くなる


//SE ボタンをプチプチと外す


//SE 服をめくる


「はっ……」//主人公の怪我が思っていたより深い


「棘に刺されてる……」


「た、大変……肩から毒が回って……」


//SE 薬草袋を探る


//SE 取り出した薬草を乳鉢に入れ、ごりごりとすり潰す


//SE ベッドから立ち上がる


//SE 金具にかかった皮手袋を取り、手に付ける


//SE 鍋が煮立つ音


//SE 液体の揺れる音。湯煎していた瓶を掴み取る


「あつつ……」


//SE 瓶の中身を鉢に注ぐ


//SE 皮手袋を外す


//SE 乳棒で軽くかき混ぜる音。

薬草とポーションを混ぜ合わせる。やがてしっとりとした塗り薬になる


「解毒のポーションと月光草の粉末で作った塗り薬……これで効くはず……」


「まだ少し熱いけど……我慢して……ね……?」


//SE 乳鉢を軽くこする音。薬を手に取る


//SE ベッドが軋む。傍に腰かける


//SE 服のすれる音


「お薬……塗るよ……」//顔を近づける


//SE ぴとり

薬のついた手で主人公の胸に触れる


「あっ……」//主人公が痛みに震えるので、少し驚く


「だ、大丈夫。大丈夫だからね……」//耳元で。緊張しながらも、落ち着かせるような声色。母親が病気の子供をあやすイメージ。自分が母にそうしてもらったことを思い出しながら


「助けてあげるから……」


「大丈夫……」


「これでよくなるから……ぬりぬり、するから……ね……?」//心配で切ない気持ち


「……」//息を整える


「ぬり……ぬり……」


「ぬり……ぬり……」


「大丈夫……大丈夫だよ……」


「……」//緊張した息遣い


//SE 服のすれる音。顔を上げ、耳元から離れる


「……」//心配そうに見守る


「……」//薬が効いたことに安心し、息をつく


「よかった……お薬、ちゃんと効いた……」


//SE タオルで主人公の顔をそっと拭く


「大丈夫……寝てていいから……ね……」//穏やかな声色


「……」//しばしの沈黙


「喉……乾いた……」//ぽつりと漏らす


「……」//鼻で息を吸い込む。匂いを嗅ぐ


「すごく……美味しそうな匂い……」


「い、いいよね。少しくらい……」


「ちょっとだけ……ちょっとだけなら……」


「はっ……はっ……」//荒い息遣い。軽く舌を出す


「……だ、だだだめ、だよ。勝手にする、なんて……」//我に返り、恥じ入った様子で


「それに、怪我だってしてるし……」


「う……」//罪悪感と自己嫌悪で涙が滲む


「わ、私、最低だ……怪我してる人相手に……こんなこと……考えるなんて……」


「でも……ずっと飲んでなかったし……」


「この人の匂い、とっても……」


「もう……頭がクラクラして……」//意識が朦朧としてくる


「……」//フェードアウト

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