『塔』=タワーに非ず!

『塔』と聞くと、皆さんは何を思い浮かべますか?


スカイツリーや東京タワー、エッフェル塔なんかを思い浮かべる事でしょう。


ですが、これはどれも厳密には『塔』ではありません。


では、『塔』とはなんなのか?


仏教では長らく偶像崇拝をする習慣がなく、現在のような仏像などが存在しませんでした。


では、その当時の仏教徒は何を拝んでいたのか?


それは『ストゥーパ』と呼ばれるものです。


『ストゥーパ』はサンスクリット語で“高くあらわれる”を意味し、天に向かってそびえる建造物になっています。


仏教における世界観そのものであり、涅槃の境地を表しています。


ここには仏陀の遺骨(仏舎利)や遺灰が収められており、言ってしまえば“開祖の墳墓”のようなものです。


ちなみに、酢飯の事を舎利しゃりと言いますが、仏舎利とは別物です。


そもそも、サンスクリット語で“米”の事を『シャーリ』と言い、仏舎利の方は“遺体”を意味する『シャリーラ』が由来になっています。


同音であったために、翻訳の際にどちらにも“舎利”が当てられてしまったので、混同してしまいがちです。


また、空海上人は「天竺では米の事を舎利と呼ぶ。仏舎利は米に似ている」と解説しているため、ここから混同するようになったという説もあります。


最初は仏舎利を10に分け、それを元に『ストゥーパ』が建造されました。


しかし、仏陀入滅の200年後、インドを統一したマウリヤ朝のアショーカ王が仏陀の遺骨をさらに細分化し、各地に84000もの『ストゥーパ』を建立しました。


仏陀の教えを忘れぬよう、インドの各地に建てられ、仏教が伝播した他の国々でもこれが立てられました。


しかし、そうなって来ると仏舎利の数が当然足りなくなってきますが、その代替品として『ストゥーパ』の中に、経典や宝玉が用いられるようになりました。


実際、斑鳩いかるがの法隆寺・五重塔の心柱には金剛石ダイヤモンドがはめ込まれていたそうです。


そして、『ストゥーパ』は中国に伝来した際、“卒塔婆”の字が当てられました。


お墓の横に刺さっている木の板を“卒塔婆”と言いますが、あれも本質的には『ストゥーパ』と同じです。


『ストゥーパ』は基本的に五重構造になっており、下から「地・水・火・風・空」を表しています。


そして、“卒塔婆”の外郭が波打っているように見えますが、あれは遠目に見ると、“五重塔”と同じ形をした五重構造になっている事が見えてきます。


つまり、仏陀のお墓=仏教の世界=高層建造物、という遥かな高みを登る世界観そのものが見えてくると言うわけです。


その後、“卒塔婆”から“塔”の部分を抜き出して略して呼ぶのが一般化していきました。


結果、塔=お寺にある仏陀の墓=高層建造物の図式が出来上がっていったのです。


そうです。『塔』とは、基本的には仏陀の墓なのですが、その意味に変化が生じたのは近代に入ってからです。


『塔』の高い建物を意味する部分が一人立ちするようになり、近代に入ってそうした建造物が増えてくると、『墳墓(ストゥーパ)』ではなく、『Tower(タワー)』の方に意味が置き換わっていきました。



仏陀

「これも私のお墓なのだろうか?」



などと思いつつ、東京タワーやスカイツリーを眺めているかもしれませんね(笑)。



通天閣行きたい!>( -ω-)人  (´・ω・` )<新世界に旅立つ!

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