『成仏』しましょう♪

成仏じょうぶつ


よく耳にする単語ではありますが、これも詳しく解説しておきましょう。


もうこれは書いたまんまです。


仏・覚者に成ることを、『成仏』といいます。


しかし、これは時代や国によって大きく意味合いが異なってきます。


そもそも、“仏”になったのは誰かと言えば、当然、仏陀ことゴータマ=シッダールタとなります。


かの御仁は厳しい修行の末に涅槃の境地に至り、輪廻よりの解脱を成し、覚者すなわち仏になったのです。


初期仏教においては、仏陀と同じ境地、すなわち悟りを開いて涅槃に到達する事を『成仏』と呼んだわけです。


ただ、仏陀こそ真の仏であるという考えが初期仏教では強かったため、成仏したとしてもそうは呼ばず、仏陀以外の覚者の事を阿羅漢アラカンと呼んで、差別化を図っていました。


あくまでオリジナルは仏陀であり、その弟子達はコピー品としたわけです。


この状況が大きく変わって来たのは、大乗仏教と密教が台頭してきた頃です。


大乗仏教においては衆生にも仏性があるという思想が広まるようになり、輪廻と功徳を繰り返すうちに、オリジナルの仏になると考えられるようになった。


これに密教の思想も加わっていった。


信仰によって本尊を加持し、煩悩を振り払う事によって、生きながらにして成仏できるとしました。


これを『即身成仏』と言います。


なお、似た言葉に『即身仏』がありますが、これは全然違う意味の言葉です。


『即身仏』は言わばミイラのことです。


僧侶が永遠の瞑想(入定にゅうじょう)を行う事です。


鈴を鳴らしながら読経し、死ぬまでこれを続けます。音が聞こえなくなったら入定にゅうじょうというわけです。


こうして水分が抜け切るまで土中に留め置かれ、ミイラ化した者が『即身仏』となるわけです。


一方の『即身成仏』は生きた人間が、仏を祀り、加持祈祷を繰り返す事によって煩悩を振り払い、悟りの境地に到達することを指しています。


つまり、『即身仏』はミイラとなり、“物理的”な身体が仏になるという、肉体的・物理的な意味合いが強い。


一方の『即身成仏』は現世に存在しながら、大日如来と結合して仏となるという意味であり、“精神的”な意味合いでの成仏となります。


こうした事は仏教の伝来した国々で見られますが、ここでさらに一捻り加えてきたのが、日本というわけです。


現代日本を生きる我々にとって、『成仏する』とはどういった意味合いで取られるでしょうか?


おそらくは誰かが死んだ事を思い浮かべ、特に天国なり極楽浄土へと旅立っていったことを連想するでしょう。


逆に『成仏できない』となると、死した人の魂が未練によってなおも現世に留まり、浮遊霊なり怨霊なりになってさまよい続けていると考える事でしょう。


つまり、日本においては『成仏』と『死』が密接に絡み合ったというわけです。


御霊信仰に見られる日本独自の死生観が、仏教の思想と結合する事により、現代我々が考える『成仏』へと変遷を遂げていったのです。


死体の事を「仏さん」と呼んだりするのも、その流れです。


死は救済であり、死ねば誰しも極楽浄土へと導かれ、仏となる。


この考えは日本独自のものであり、万人仏性の一つの到達点とも言えるでしょう。


まあ、この辺りは宗派ごとにかなり思想の差異があり、かなりもめた歴史もありますけどね。



浄土真宗

「念仏唱えるだけでOK! 阿弥陀様のご助力で誰でも極楽浄土行きや! 成仏、成仏ぅ~♪」


天台宗

「んなわきゃねーだろ! ちゃんと修行しろよ!」


日蓮宗

「行はいらん! 何はさておき法華経だ!」



実際のところ、因果応報の理論だと現世の行いによって来世が決されるわけですから、念仏だけで『成仏』できるなら、簡単過ぎるとは思いますけどね。


欲望からの解放あっての解脱であり、成仏ですから。


死生観や死の哲学は、宗派や国によって千差万別です。


それほどまでに議論を尽くされながら、なおも答えが出ないのが“死”と言うものであり、恐怖と魅了の対象となって来たかを如実に表しています。


さあ、あなたはどの哲学を以て『成仏』しますか?



おいでませ極楽浄土♪>( -ω-)人  (´・ω・` )<今宵共に狂い咲き~♪

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