閻魔様とお地蔵様
『
皆さんのイメージしやすいキャラではないでしょうか。
片や、強面で死者の行く末を判定する裁判官。
片や、道端にひょっこり立つ笑顔の石仏。
真逆な雰囲気のある両者ですが、実はこの御二方、“同一存在”だということをご存じでしょうか?
『閻魔』の起源はインド神話における死者の王ヤマから来ています。
ヤマはインド神話における原初の人類の一人とされ、双子の妹ヤミーと夫婦関係でもあります。
日本でもそうですが、インドもまた『人類の始祖=兄妹の夫婦』というわけです。
なお、大洪水によって世界が崩壊し、結局人類の血筋はヤマの兄弟であるマヌの血筋になってしまいますが。
さて、ヤマが最初の人類であり、同時に最初の“死者”でもあります。
ヤマの死によって、死者の道が見出され、ヤマが死者の王となったのです。
なお、この際に昼夜の概念も生まれました。
ヤマの死までインドには昼夜と言う概念がなかったのだが、悲観に暮れるヤミーに“今日”の出来事を忘れさせるため、神々は“夜”を生み出し、昼と夜を境目として、昨日、今日、明日という時間の概念が生み出されました。
このヤマの死者の王としての側面が仏教でも取り入れられ、
六欲天の第三天・夜摩天、あるいは
中国においては、道教の神・東岳大帝と習合し、地獄において亡者の審判を行う十尊の裁判官、すなわち“十王信仰”とも結び付けられ、現在の形になっていきます。
死者の裁判は合計十回行われ、閻魔はその五番目になります。
閻魔の知名度が高すぎて、他の十王が全然分からないなんてこともままあります。
そして、日本においてはこの十王に対応する仏が宛がわれたのです。
平安末期の末法思想と共にあの世の裁判官である十王への信仰も高まり、神仏習合の流れもあって、十王それぞれに対応する“仏”と引っ付いたと言う感じです。
これを“本地仏”と言い、その十王と神仏習合の結果、閻魔と引っ付いた仏というのが“地蔵菩薩”というわけです。
要するに、「普段は○○という神なんだけど、その正体は××という仏なのよね」という風に理解してください。
閻魔以外の他の十王にも、それぞれ対応する仏と習合しています。
地蔵菩薩の起源はこれまたインド神話にあります。
地母神プリティヴィーが元ネタとされ、この女神は大地を守護し、財を蓄え、病を治すといった利益信仰があり、これが仏教にも取り入れられ、地蔵菩薩が成立したとされています。
漢字表記の際、“大地”が全ての命を育む力を“蔵”するように苦悩の人々を、その無限の大慈悲の心で包み込む。
ここから“地蔵”が誕生しました。
さて、その地蔵菩薩なのですが、非常に重要な役割が仏陀より任されます。
***
仏陀
「私が入滅して、次に覚者となるのは弥勒菩薩だ。彼が降臨するまでの間は、地上世界が無仏の状態となる。地蔵菩薩よ、君が弥勒菩薩が現れるまで衆生を救う役目を与える」
地蔵
「はい! 頑張らせていただきます!」
仏陀
「うむ。では、六道全てを踏破できる“
地蔵
「はい! 頑張らせていただきます!」
仏陀
「ちなみに、弥勒菩薩の降臨は56億7000万年後だ。それまで“抜かりなく”衆生を見てやってくれ」
地蔵
「はい! 頑張らせていただきます! ……ん? 56億7000万年後?」
***
56億7000万年も無休で働けとか、仏陀さん、ブラックってレベルじゃねーぞ、それ!
とまあ、そんなこんなで地蔵菩薩は衆生を救うべく、あらゆる世界を踏破し、その苦しみを拾い上げていきました。
地蔵菩薩の特性は“代受苦”。すなわち、人々の苦難を身代わりとなり受け救う、というものです。
また、特に子供に対しては優しく、賽の河原で獄卒にいじめられている子供を救うのも、地蔵菩薩の大事な役目です。
子安地蔵などとも呼ばれる所以です。
また、道祖神としての性質も併せ持つようになり、道行く人が誰でも気軽に拝める存在となって、ますます信仰を集めるようになりました。
そんなわけで、地蔵菩薩の信仰が高まり、それと合体した閻魔もまた信仰が強まっていったというわけです。
表向きは裁判官で、裏ではどこにでも現れる凄腕エージェント。
まさに世界規模の遠山の金さんですな。
だから、閻魔の裁判は誤魔化しが利かないのです。
『
なにしろ、地蔵菩薩は“
だから、閻魔には嘘が通用しない。
いつも見ている、閻魔&地蔵コンビ。
皆さんも閻魔様の前に出たときは、裏表のない答弁を心がけましょうね。
地蔵監視カメラ説>( -ω-)人 (´・ω・` ) <盗撮イクナイ、閻魔様
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