『修羅場』とは凌辱・NTR系ヒロインの聖地である

『修羅場』


現在、この言葉は激しい闘争が行われている場所、という意味合いで使われている事でしょう


男女の言い争っている現場とか、締め切り間際の入稿に追われる漫画家の机とか。


この『修羅場』とは元々、六欲天の第二天・忉利天とうりてんの長である帝釈天たいしゃくてん(インド神話ではインドラ)に対して、阿修羅あしゅら(インド神話ではアスラ)が戦を仕掛けた戦いの現場の事を指しています。


ちなみに、阿修羅は顔が3つ、腕が6本の姿で描かれています。


そう、阿修羅は『三面六臂さんめんろっぴ』の元ネタでもありますね。


両者の争いの原因は、阿修羅の娘である舎脂しゃしにあります。


阿修羅は娘の舎脂を帝釈天に嫁がせようとしますが、帝釈天は舎脂を一目見るなり気に入り、正式な嫁入りの手順をすっ飛ばして、舎脂を誘拐、凌辱してしまいます。


これには阿修羅も激怒しますが、その状況を悪化させたのは舎脂でした。


あろうことか、この一触即発の状況で帝釈天の肩を持ったのです。




阿修羅「娘が凌辱された! 上司と言えども許すまじ!」


舎脂「でも、帝釈天様、マジいい男! もっと抱いて! 大好き、ダーリン♪」


帝釈天「というわけだ。すまんね、阿修羅くぅ~ん」




皆さん、その現場を想像してみてください。まさに『修羅場』!


まあ、あれです。舎脂が“男根”、すなわち魔王・魔羅まらの誘惑に勝てなかったというわけですな。


なんだこの、凌辱・NTR系ストーリーの堕ちるヒロインにありがちな展開は!?


ストックホルム症候群? いや、それ以上か!?


とまあ、こんな状況なら、天地を揺るがす大戦争が勃発しますわな。


ちなみに、阿修羅は“正義”を司る神であり、帝釈天は“力”を司る神です。


そして、両者の争いは帝釈天の勝利に終わり、阿修羅は住んでいた忉利天・善見城ぜんげんじょうより追放されます。


ちなみに、帝釈天の住まいは殊勝殿しゅしょうでん。そう、『殊勝』の語源にもなっている場所です。


『殊勝』の意味は“特に優れて立派な事”です。


ええ、ご立派ですとも、帝釈天様。どこが、とは申しませんが。


忉利天より追い落とされた阿修羅は下層へと落ちていき、最終的には新たなる世界・修羅道を形成します。


修羅道は常に誰かと相争い、怒りと悲しみに捉われた世界です。


これによって、天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道の六道りくどうの状態が出来上がります。


さて、これだけ聞くと、阿修羅は娘を強奪された挙げ句、正義が力の前に敗れ去ると言う救い難い話にもなりますが、見方を変えれば阿修羅の失敗が見えてきます。


それは“妄執もうしゅう”です。


妄執は強いこだわりの事であり、解脱を目指す者が捨て去らねばならない欲望そのものと言ってもよいでしょう。


娘可愛さに争いを起こし、負けてからも帝釈天に挑み続け、天地を揺るがす戦争を幾度となく起こす。


まさに“捉われている”状態なのです。


果報・善心に優れていたとしても、こだわり過ぎてそれらを見失い、却って妄執という悪を成すというわけです。


晴れやかな正義の心も、あるいは大事を成すための大義名分も、妄執によって曇ってしまうというわけです。


高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応してくださいね、阿修羅さん。


まあ、娘を凌辱した相手を許し、改心を促すなんてまず無理でしょうけど、これを越えない限りは悟りへの道は閉ざされたままです。


もちろん、帝釈天も悪いですよ。力で娘を強奪し、それに抗議した娘の父を力でねじ伏せて、追い出してしまったんですから。


“力”だけでも、“正義”だけでもダメなのです。


両者のバランスが、すなわち仏陀の教えである“中道”こそが肝要なのです。


世の中を見てください。口では立派なことを喋っていても、それに固執するあまり平然と悪事を成す輩の多い事。


皆さんもそうした事に捉われることなく、“力”と“正義”のバランスを考えていきましょう。


もちろん、その発想にこだわってもいけません。こだわりは“妄執”への第一歩であり、修羅道へと落ちていく片道切符なのですから。




阿修羅バスター>( -ω-)人   (´・ω・` ) <“首”に捉われてますね

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