『魔王』ってそもそもなんなのよ?

ファンタジーなどではもう当たり前のように登場する存在『魔王』。


悪の権化、魔族の王、敵対勢力のトップ、とにかくヤベー奴、まあだいたいこんな形で使われているのが、現在の娯楽作品の中での『魔王』だろう。


では、そもそも『魔王』とはなんであるのか?


『魔王』とは、そもそも仏教用語であり、その存在が経典に記されています。


仏教の世界観において、世界は三つに分けられる。これを“三界さんがい”と呼びます。


欲望に捉われし存在の住まう“欲界よっかい”。


淫欲と食欲を超越した存在の住まう“色界しきかい”。


あらゆる欲望、物質的条件を超越した存在の住まう“無色界むしきかい”。


我々人類がいるのはもちろんこの三界の内、“欲界”である。修行を重ね、徳を積み、より上位の世界を目指すというのが大まかな流れだ。


もちろん、悪徳を重ねれば下層へと落ちていき、地獄が待っている。


上に位置する天界と言えど、その下部の六層は欲望を超越できていないので欲界に属し、それを“六欲天”と呼びます。


そんな欲望に満たされし世界の最上位に位置するのが、第六天・他化自在天たけじざいてんであり、そこに住まうのが第六天魔王波旬はじゅんです。


第六天の魔王は仏教徒の心を乱し、信仰の道を諦めさせるという絶対悪とされます。


ですが、魔王は“格”が高いです。


というのも、信心を重ねる事により過去の業を打ち消し、功徳を増す切っ掛けとなるからです。


魔王の誘惑を跳ね除け、更なる境地に進むことを魔を降す、すなわち“降魔ごうま”と呼びます。


仏陀の場合も、マーラという悪魔が現れ、悟りを開こうとする仏陀に対して、娘をけしかけて誘惑したり、あるいは怪物に襲わせたりと、数々の妨害をしてきます。


欲望、あるいは恐怖を増幅させ、修行を諦めさせようとしますが、悟りを開くにはこの妨害を乗り越えなくてはなりません。


言ってしまえば、『魔王』とは解脱するべき存在を選別する試験官のような役割であり、悟りを開こうとする者が必ず降さなければならない魔そのものなのです。


ちなみに、最も強烈な欲望である“性欲”の象徴・男根。これを魔羅まらと呼ぶ場合もありますが、これは魔王マーラから来ています。


欲界から色界に上る際には、性欲と食欲を超越しなくてはなりません。ゆえに、魔王マーラの娘の手管に“御立派な物”が反応するようでは、まだまだ修行不足と言うわけです。


日本において『魔王』と言えば、やはり思い浮かぶのが織田信長でしょう。


信長自身が自らを『第六天魔王』と称していますが、これは武田信玄に対抗してのことです。


織田信長が比叡山延暦寺を攻撃した際、武田信玄はこれを非難する手紙を送っており、その際に自身の事を『天台座主』と記しています。


『天台座主』は天台宗のトップを意味し、天台宗の総本山である比叡山を攻撃した信長を非難し、攻撃を仕掛けるための正当性をアピールするのが狙いでした。


まあ、信玄が座主であるわけがないので、あくまで威嚇のための嘘を書いたと言ったところでしょうか。


これに対して、信長が返信で自身の事を『第六天魔王』としました。


魔王の役目は仏教徒に信仰を諦めさせる事です。


つまり信長は信玄に対して、「延暦寺の事は残当」と返したわけです。


信長さん、マジで魔王! そこに痺れる憧れる!


人々の心を砕く存在、それが『魔王』なのです。




魔羅が動かんくなったわ>( -ω-)人   (´・ω・` ) <悟り? ED?

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