第49話 二手に分かれて

(と、とにかく、皆さんのお役に立たないと……!!)


 心に強く誓い、必死にユフィは必死にジョンを探し回る。

 しかしその熱意が仇となった。


「きゃっ……」


 探すのに夢中で足元がお留守になってしまい、ユフィは木の根に足を取られて転んでしまう。


「ユフィちゃん!」


 エリーナが驚いた声を上げ駆け寄ってくる。

 一方、エドワードは「何をしているんだ…」と呆れた様子でユフィを見つめていた。


「大丈夫? 怪我はない?」


 そばにいたライルが手を差し伸べてくれる。


「あ、ありがとうございます、大丈夫で……いたっ……」


 軽くではあったが、ユフィは膝を擦りむいてしまっていた。

 ちょうど石がある所でこけてしまったのか、皮膚がさっくりと切れて流血している。


「待ってて、すぐ治してあげるから!」


 エリーナがユフィの膝に手を翳し、目と閉じてから、すうっと息を吸い込んだ。


「……癒しの神よ」


 エリーナが魔法を唱えると、ユフィの膝が淡い光に包まれる。

 次の瞬間には、ユフィの膝は元の綺麗な状態に戻っていて痛みも嘘のように消え去っていた。


(エリーナさんの回復魔法……凄い……)

「これでよしっと」


 エリーナが満足げに頷く。


「あっ、ありがとうございます……お手間をかけさせて、本当にごめんなさい……」


 申し訳なさそうに頭を下げるユフィの頭に、エリーナがそっと手を添える。


「気にする必要はないわ。私もよく、何もないところで躓いたりするもの」

(ううっ……優しさで胸が痛い……)


 優しく撫でながらエリーナに慰められて、ユフィは申し訳なさで一杯になるのであった。

 その後、気を取り直してジョン探しを再開する。


「このままじゃ埒が開かないから、手分けして探そう」


 というエドワードの提案により、二手に分かれて捜索することになった。

 ユフィはライル、エリーナと一緒に。


 エドワードはジャックと一緒に、という組み分けである。


「一刻も早くジョンくんを見つけて、飼い主の元へ送り届けなきゃ……」


 瞳を真剣に細めて、エリーナは草の根を掻き分けるように捜索している。


(エリーナさん、本当に優しいなあ……)


 思わず、ユフィは尋ねてしまう。


「エリーナさんは、なぜ聖女を志したんですか?」


 なんら脈絡のない質問だったため、エリーナはきょとんと目を丸める。


「あっ、あっ、ごめんなさい、エリーナさん、凄く人のために一生懸命になれて、凄いなって思って……聖女になりたいという気持ちも、そこから来ているのかなって思ったと言いますか、気になったと言いますか……ま、纏まっていなくてごめんなさい」


 ユフィがテンパりながら言うと、エリーナは優しく微笑み言葉を口にした。


「私が回復魔法を学ぼうと思ったきっかけは……祖母が病気で苦しんでいるのを見て、何もできなかった無力さを痛感したから……って、これは、入学式の時に言ったわね」

「あああっ!! ごめんなさいごめんなさい! そうでしたねすっかり忘れててっ……」

(ばかばか私! なんて失礼なことを!!)


 ペコペコと頭を下げるユフィ。

 シンユーが『にゃにゃっ!?』と驚いたように飛び降りる。


 ふふっと、エリーナは可笑そうに笑って。


「実はもう一つあるの」

「もう、ひとつ?」


 ユフィが恐る恐る顔を上げると、エリーナは表情にシリアス味を滲ませて口を開いた。

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