第16話 はーいみんなー、組になってー(地獄の呪文
「それでは、授業内容を説明する!!」
シャロン先生の号令で説明された授業内容をざっくりと要約するとこうだ。
・男2人女2人で4人1組になって、山にいるアルミラージを5匹討伐し成果物であるツノを5つ持って帰る事。
・制限時間は三時間。
・万が一大怪我をした場合や迷った時は『救済の笛』を吹いて先生を呼ぶ事。すぐに待機している教師陣が助けに向かう、などなど。
アルミラージとは、頭に一本のツノを生やしたウサギの魔物である。
危険度をカテゴライズする指標は一番下のF。
大人1人でも倒せる程度の強さだ。
運が悪ければ負傷するかもしれないが、死ぬことはないだろう。
(男2人女2人で4人1組……!?)
授業内容よりも何よりも、この部分にユフィはギョッとした。
村の教会にいた時の記憶が蘇る。
友達同士で組を作るというのは、友達ゼロのユフィにとって地獄の時間であった。
耳に蛸が出来るほど聞いた『ユフィちゃんは先生と組もっか(優しい目)』が脳裏にリピートして泡を吹きそうになったが、組は事前に決められているとのことで安堵した。
本当に本当に、天に昇るほど安堵した。
というわけで、シャロン先生が組み分けしたクラスメイトたちのところへ行くユフィだったが……。
「おっ、同じ組だな、リーファ!」
「アルト君だ! アルト君がいてくれたら頼もしいよ、よろしくね!」
「おいおいリーファ、僕を忘れてないかい?」
「もー、忘れてないよジルくん。よろしくー!」
3人は元々の友人か昨日のパーティで既に打ち解けあったのか、とても仲良さげな感じだった。
(圧倒的アウェイ感……!!)
どう会話の輪に入っていいかわからずオロオロするユフィ。
「それで……」
リーファと呼ばれた女子生徒が、困ったような表情でユフィの方を向く。
「君は、確か……えっと……」
アルトも、言いづらそうに言葉を詰まらせていた。
(ああ! 『マジかこいつと組むのか』の視線が痛い!)
勇気を雑巾絞りのように捻り出し、深々ーと頭を下げてユフィは言う。
「…………ユフィです、よろしくお願いします」
「あ、うん、よろしく」
「よろしくー」
「よろしくね」
3人で話している時とのテンションの差が凄い。
3人は明らかに微妙そうな顔をしていて、ユフィとどう接していいかわからない様子だ。
(うう……無理もないよね。昨日今日と色々やらかしちゃったし……)
とにかく強制的とは言え、ミジンコゴミムシの自分と組まされているのだ。
(せめて、足を引っ張らないようにしないと……)
そう自分を奮い立たせるユフィであった。
「では、始め!」
シャロンの号令と共に授業が始まった。
◇◇◇
授業が始まり、生徒たちが山へと散開して行った後。
「さてさて、今年は何組達成できますかね?」
補佐役として後ろで待機していたヒンメル先生が、シャロンに声を掛ける。
「今年の新入生は優秀を聞いている。8割くらいは達成して欲しいものだな」
そう言って、シャロン先生は生徒の名簿に目を下ろす。
「ユフィ・アビシャス……入学試験の結果はぶっちぎりの最下位。ふん、所詮は平民の子か」
「さっきの挙動不審な子ですか?」
「ただの臆病者だ。どうせすぐに泣き言を抜かして、田舎に帰るに違いない」
吐き捨てるように言う。
シャロン先生のユフィに対する興味は、それ限りであった。
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