第7話 入学式①
新入生と在校生が一堂に会する入学式。
今宵、魔法学園の中央ホールは荘厳な空気が漂っていた。
「では次に、新入生代表挨拶です。男子学年主席、ライル・エルバードくん、前へ」
「はい」
司会の呼びかけで、演台に座っていたライルが立ち上がり、壇上へと向かう。
ライルがホール全体を見回した途端、一区切りついてどこか緩んでいた空気が線を張ったように引き締まった。
それは、ライルが第三王子という立場故のものだけでなく、彼自身が持つカリスマ性も影響しているようにも思える。
「ご紹介に預かりました、ライル・エルバードです。新入生代表として、今日この場に立つことを心より光栄に思います。今日、僕たちは栄えある魔法学園の門をくぐり、新たな人生の旅を……」
一言も噛むことなく、スラスラと言葉を紡ぐライルに、傍聴席に座るユフィは舌を巻く。
(凄いなあ、ライル様……第三王子で、学年主席でもあるんだ……)
なんだか一気に遠い存在になったような気がして、ちょっぴり寂しい。
その時、近くに座っていた男子がヒソヒソと声を立てる。
「やっぱ男子の学年主席はライル様かー」
「学年主席、ってことは……今年の新入生の中で攻撃魔法の最強の使い手ってことだろ?」
「ひゅー、憧れるぜ……俺も練習して、一流の攻撃魔法の使い手にならねえとな」
その言葉を聞いて、ユフィはひやりと背中に冷たいものが走るのを感じた。
──この世界において、攻撃魔法が使えるのは男だけ。
少なくとも、エルバドル王国の歴史において、女の性で攻撃魔法を使えた者はいない。
重要なことなので繰り返す。
攻撃魔法が使えるのは男だけで、女は使えない。
それは、エルバドル王国だけではなく、この世界全体の共通認識でもあった。
故に、この学園に主席で入学するライルは、ユフィの学年で最も優れた攻撃魔法使いということになる。
「僕は攻撃魔法の使い手として学び、成長することを選びました。なぜなら、この力は男である僕たちだけしか使えない、天からの賜物だからです。僕が授かったこの力は、国の民を他国の攻撃や魔物といった、あらゆる敵から護る必要な力だと信じており……」
他でもない、攻撃魔法の試験をトップで合格したライルの言葉が、攻撃魔法が男性特有の能力であることを如実に物語っていた。
「僕たちはこの学園で学び、成長し、強くなります。そしてこの力を使って、国のため、人々のために尽力することを誓います。魔法士としての誇りを持ち、誠実さと責任感を持って行動し、一人ひとりが重要な役割を果たすことで、僕たちは全ての困難を乗り越えることが出来るのです」
ライルの熱のこもった答辞はやがて、締めくくりへと入っていく。
「皆さん、新たな旅の始まりを祝い、前進しましょう! 僕たちの国が、僕たちの未来が、輝かしいものになることを祈って!」
わああああああっ!!
ライルが言葉を終える同時に、会場が歓声と拍手に包まれる。
皆、ライルの答辞に胸を打たれ、立ち上がり、惜しみない拍手を送っていた。
そんな中でユフィは。
(あ、圧が凄いっ……卒倒しそう……)
大勢の人々の熱量に当てられ茹であがりそうになっていた。
熱湯の中に蛸を入れたらおそらく、今のユフィの顔色になるだろう。
ライルが席に戻ったことで、ようやく会場は静けさを取り戻す。
「続きまして、女子学年主席、エリーナ・セレスティアさん、前へ」
「はい」
ライルと入れ代わりで、一人の女性が壇上へと向かう。
その女性を目にした途端、ユフィの目が限界まで見開かれた。
「うそ……」
思わず、呟いた。
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