第13話 少年と魔方陣
ねずみ色の岩肌に囲まれた開けた空間。ゴツゴツした岩肌のみならず背の低い木や細い小川も流れ植生は豊富そうな階層。
どの階層もそうだが、不思議にも明るく照らされた洞窟内。天井からはさらに強く蒼い光が降り注いでいる。
その蒼光が仙鏡花の花弁に幻想的な銀色の花畑が広がっていた。
「こっちには何も見当たりませんね。マキナさん、そっちは何かありましたか?」
「……何も、何もないわ」
「私の方も見つからないわ」
マキナ達は花畑の周辺で広がって手掛かりを探すが、これといって収穫がない。
ミリアも草木を掻き分け捜索するが特に目ぼしいものは見つからずリオンと目が合うと、リオンも大きく肩を竦めてお手上げのようだ。
「マキナさん、皆さんに無理を言って自分で捜索出来たんです。納得しましたか?」
「納得……出来る訳無いじゃないっ!! でも…………帰るわ」
肩を落とし、悲痛な面持ちでトボトボと歩き始めるマキナ。
「あ……あれは……」
顔を上げたマキナは仙鏡花の群生地より奥、深い崖の手前に咲く青い蝶の様な小さな花を見つける。
「あれ、リーラの好きだった花だ……」
マキナが見つけた花はブルーエルフィンといいリーラが好きで、よく部屋に飾ってあったのを覚えていた。
小走りで花へ近づき、手を伸ばしたその時、元々地盤が緩んでいたのか、マキナの踏んだ地面が大きく崩れる
「きゃあっ!?」
「ちぃっ!!」
マキナに近い位置を捜索していたリオンが瞬間的に近寄り手を伸ばす──
なんとかマキナの腕を掴むも一緒に崖を滑落してしまう。
☆★☆★☆
「くっ、おい大丈夫か!?」
マキナを抱える形で深い谷底へと着くと、真っ暗に見えた谷底も薄ぼんやりと岩壁が光っていた。
「あ、ありがと」
男性に抱き止められる経験など皆無だったマキナは顔を赤らめリオンから離れる。
「あれっ? 何かあるわ」
マキナが近づくと、見つけたのは茶色の革製のバックパックだった。それもひどく見覚えのある──
「リーラっ!?」
「お、おい!」
マキナは取り乱したように奥へと走っていってしまう。
やがて突き当たりに小さな祠があるのを発見する。石で出来ており小さな神殿を模した造りになっている。
「何? これ……」
「おい! 勝手に先に行くなっ!」
リオンが追いつきマキナの肩に手を置いた時、足下で魔方陣が展開される──
「んなっ!? やばっ!」
「えっ!?」
リオンはこの魔方陣とよく似た光りを見た事があった。魔法に疎いリオンには細かな違いなどはわからなかったが、既視感を覚え必死に範囲から逃れようとマキナを抱えるが……
魔方陣からの光が2人を包み込むと、瞬く間に2人の姿は祠の前から掻き消えた─
☆★☆★☆
「マキナさんっ!!」
「リオンっ!?」
一方、仙鏡花の群生地に残されたミリアとメルト──
「どうやら谷底まで滑落したようですね。僕が下へ降りますから、ミリアさんは念の為ギルドで救助を呼んでいただけますか?」
「いいえ、私がいくわ。アナタが救助を呼んで」
「ふむ。……では2人でいきましょうか」
どちらが救助を呼びに行くかでどちらも譲らず、2人で谷底へと向かう事へしたらしい。
ミリアとメルトはほぼ直角に感じられる崖を走り様に降って行く。【剣聖】の恩恵で身体能力が飛躍的に高まっているミリアならば壁を走る事も出来るため少しでも傾斜のついた崖ならば問題ないのだが、短い金髪を揺らしメルトも余裕でついて来る。
ミリアとメルトが谷底へ着いた時、そこにリオン達の姿は無く、代わりに──
「初めてみるわね……」
「僕もです。大きさ的にこの谷の主かもしれませんね」
「グルガァァァァァァァァアアアアッ!!」
そこには体長10メートル近い巨大な鰐型のモンスターが大きな顎を開き威嚇の唸りを上げていた。
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