第一章 さらば無能の日々
第2話 少年と緋色の少女
リオンは差し出された手握りフラフラと立ち上がり、ヨロけるリオンを少女が抱き止めてくれる。
「っつぅ! あっ! ありがとう。アンタすげー強いんだな? 全く何したか見えなかったよ」
「まぁ、少なくともアナタよりは強いわね」
少女はボロボロのリオンを見ながら答える
「でも、俺だけは自分の事信じるって決めてんだ、だっけ? ふふっ、ちょっとクサかったけど良かったわよ。あれがなかったら助けてなかったわ」
「うっ、うるせー。……クサくて悪かったな。まぁ、でも助かったよ。ありがとう」
「どういたしまして。ごめんね、私、回復魔法は使えないのよ。自分の傷なら直ぐに治るんだけどね。治療院まで連れて行こうか?」
「あぁ、いや大丈夫。少し休めば大丈夫だ。それよりアンタ迷宮に潜る予定なのか?」
もちろん少し休めば治るような怪我ではなかったのだが、底辺冒険者のリオンには治療院に支払うような金銭は持ち合わせていなかった。
それにリオンは先程の少女の言葉を聞いて、確認したい事があった
リオンのユニークタレント【共有】はリオンにしか見えない半透明な画面で範囲内で使用可能なスキルを可視化して見る事が出来る
(やっぱり、タレント持ちだ! 剣聖? なんだかめちゃくちゃ強そうだな……多分このタレントの中に自動回復とか治癒系の効果が含まれているはず……ちょっとお借りしますよっと)
「アンタじゃないわ、ミリアよ。アナタは?」
「えっ? あっ、あぁ、すまない。リオンって言うんだ。ミリア……ちゃん? さん?」
剣聖のタレントを【共有】した途端に、身体が軽くなり、痛みが和らいでいくのが直ぐに実感でき、その効果の高さに暫し唖然としてしまう。
急に名を訊かれびっくりして我に返るとリオンはミリアと名乗った少女を見て、自分よりも若く見えるが、その強さから、さん付けで呼んだ方がいいのか思案する
「ミリアでいいわ。リオンも同じ歳ぐらいでしょ?」
「あぁ、俺は今年で16になる」
「じゃぁ、私の方が年上ね! ふふっ」
そう言ってミリアは悪戯っぽく微笑む
「えっ? 年上?」
「何? その意外そうな反応は? 私はつい先日16歳になったのよ! 年上でしょ?」
「あぁ、なんだ。そうゆう事か、良かった。本当に年上だったら……なんて、お……可愛らしい年上もいたもんだなって」
「……どういう意味かしら?」
リオンはミリアが同じ歳どころか年下にしか見えなかったので年上だと言われ驚いたのだが、それが単に少しばかり早く産まれてきた事だとわかり納得した。
思わず幼く見えるといいそうになったが何とか誤魔化せた……かもしれない
「まぁまぁ、それより、迷宮行くなら俺も連れてってくれないか? いや連れてって下さい! お願いします!」
「……リオンは何級?」
「あっ、鉄……だけど、ただの鉄じゃないって言うか……とにかく役に立つから一緒に行ってくれないか?」
ミリアは胡乱な目でリオンをみて軽く嘆息する
「役に立つって、何か有用なスキルでも持っているの?」
「あー……いやぁ、スキルとかはちょっと無いんだけど……あっ! でも、なんていうんだろう……ミリアと一緒なら強くなれるって言うか……」
「はぁ? 何それ。新しくもないけどナンパかしら? 生憎、軟派な男は対象外よ。もう大丈夫なら、自力で治療院でも行って」
そう言って肩に掛けていた腕を外し身体を離す
「あっ、いやナンパとかじゃなくて……」
「それに、私は上級から入るからアナタじゃ一緒に入れないわ」
ミリアは一度だけ振り向くとそう言って首にかけていた朱色のプレートを取り出して見せると立ち去ってしまった
(緋金級!! 強いとは思っていたけど……)
冒険者のランクは最低の鉄級から始まり、銅級、銀級、金級、聖銀級、緋金級、神鋼級とに別れ、それぞれランクを示すプレートの色が違う。
聖銀級より上の冒険者はかなり少なく、この迷宮都市でも滅多に出会う事はない。
(やっぱり……どうしてもミリアの側にいないと!)
そしてリオンは立ち去ったミリアの後を追いかけて行った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます