第二章 掃い屋と幽霊
2-1 癒しの加護
世間という社会が人々の協調と協力によって成り立つように、自然という世界は
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
正午前から土砂降りになってきた通りを、一組の男女が並んで歩いていた。レインコートを着た男がアリウス、傘を差した女がリーラだ。
「――七、という数からも分かるように、
「呪いを解くのも世界の手助けがあればこそ、ってことか」
「そう」
二人が話題にしているのは、これから始める
少年の背中に取り
「――だから、世界を味方につけるといっても、そんな
「いや、ちょっと、寒気が」
ぶるり、と身体を震わせながらアリウスは答えた。するとリーラも、顔に心苦しそうな表情を浮かべる。
「それは……どうしようもない。着ているものを増やせば暖かくなる、というものじゃないし」
「うん。分かってる」
「でも、だからこそ体調の変化には気をつけて。あなたはこの一週間ずっと骸骨の姿をした怨念を背負っていたんだから。肉体的にも精神的にも、見えない疲れが相当たまっているはず。今風邪を引いたりしたら命に関わる」
「そ、そこまで悪いの!」
死の危険があると告げられ、動揺した少年はつい彼女に詰め寄った。レインコートを
「あ、いえ。すぐにどうこうというわけではないの。ただ、気力体力ともに低下しているようだから、一度体調を崩せば回復するのも難しいという話」
「な、なるほど……」
「身体にかける負担はできるだけ減らすべき。……うん。雨にも、あまり当たらない方がいいかも」
口早に言いながら、リーラはその手に握った傘をアリウスへ向け差し出した。すると、今まで間断なくレインコートを叩いていた雨粒が途切れ、身体に感じる寒気が少し和らいだ。どうやら体調の悪化は雨の影響もあったらしい。
「あ、ありがと。リーラ姉」
少しばかりの気恥しさを覚えながら、二人並んで雨の道を行く。ほどなくして、三本の通りが集う交差点にたどり着いた。
「ここ、だね」
「そう」
真北の角に、
「それでは、
「う、うん」
「御堂の正面に立って。胸の前で手を組んで」
「こう?」
「ちがう。こう、もう少し上。お祈りだから掲げるように、厳粛に、真剣に。アルの命がかかってる」
「は、はい」
「偉大なる
「え? ええっと、い、偉大なる
「たいそ」
「タ、タイソたる
何度か詰まりながら――あまりにひどい場合は初めからやり直し――祈りを
「どう?」
「うん……?」
その簡潔な問いにアリウスは首をひねった。彼女の質問の意図が分からなかったわけではない。どう答えるべきか迷ったのだ。
「アリウス?」
「……うん。なんか体が軽くなった気がする」
「そう。……よかった」
ホッとした表情を見せるリーラ。
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