デジャブ

2023年の冬。

私はある夢の光景と全く同じ光景、全く同じ場所に遭遇した。


夕方暗くなってきた頃のあるビルの1Fテナントで内装工事をしている。

そのビルは初めて見る場所で4階建てのビルだ。

道路に面した部分はガラス張りで黒い文字のカッティングシートで「テナント募集中 0120-○○○○-○○○○」と書いてある。

そこから見えるのは壁のない一面まっさらな部屋で、コンクリートの床と石膏ボードの貼ってある柱があるだけ、仮設の照明がいくつかあり部屋の中を照らしていた。

そんな部屋の様子を私は外から見ていた。

もしかしたら人が居たかもしれないが少なくとも視界には入っていない。


以前見たその夢の光景を覚えていた。

なんてことないこの夢の光景を覚えていたのは理由がある。

この夢は2度見たことがあるからだ。


2度目を見るまで1度目の記憶はなかったが、2度目にこの夢を見たとき


あ、この光景見たことがある。


そう確信していた。

そして2度目の夢では私がこの光景を現実で見ていると勘違いしていた。

デジャブって確か脳の勘違い的なことだったよなー。

などと考えていた記憶もある。

そして目が覚めた時に


あー、夢だったんだ。


と気づいたくらいに鮮明に見えていた。

変な夢だったなと印象に残っていたのだろう。

ただ1度目も2度目もいつ見た夢だったかは今となっては定かではなかったが、少なくとも5年以上前のことだったと思う。


2023年の冬

この夢の光景と全く同じ光景、全く同じ場所に現実で遭遇した。

仕事中のことだった。

その場所には数日前から何度か行っていた場所だったのだが、ふと工事中の建物を見て夢でのことに気がついたのだ。

時間帯なのか天気なのか工事の状況なのかわからないがその日その時までは気づかなかった。

気づいた瞬間にこの光景を夢で2度見たことも、2度目に現実と勘違いしたことも全て思い出した。


これまでのデジャブの経験はもっと曖昧な内容の夢で見たような気がするくらいのことだったため、この明らかに夢で見た景色だと確信した体験がすごく不思議でなんだか高揚した。


これはただのデジャブだったのか、それともなんの事件性もない予知夢だったのかは全くわからない。

ただ不思議でなんだか楽しくなったのは間違いない。


デジャブ 完

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