宿泊行事
20代の女性が小学生の時に体験したお話しです。
林間学校だったか修学旅行だったか、とにかく宿泊の行事の時に体験しました。
泊まった宿が民宿のような場所で、部屋は和室の旅館のような8畳くらいの部屋でした。
宿は貸切状態だったので消灯後も入り口の扉を開けておき、先生が見回りをした部屋から閉じていくというやり方をしていました。
クラスメイト5,6人で1部屋に寝泊まりするということでテンションが上がり消灯後もヒソヒソとみんなでおしゃべりをしていると、Aちゃんという子が怯えながら
「ねぇ、今あそこから音しなかった?」
と『広縁』という旅館にあるあの窓際のスペースの方を見ながら言いました。
そこは障子を閉めた状態だったのですがその向こう側から音がしたというのです。
同室のみんなは怖がりながらも
「変な冗談やめてよ~」
「怖いこと言わないでよ~」
と半ば冗談めかして答えていました。
しかしAちゃんは真剣な表情で
「絶対したって… 誰も気づかなかったの…?」
Aちゃんは普段は割りと真面目なタイプで変な冗談は言わない子だったので、皆なんだか不安になっていき表情が強ばっていました。
私もAの言葉とその場の雰囲気に怖くなっていきました。
そんな雰囲気の中声が聞こえてきました。
「あっあっあっ…」
声のする方を見ると驚いた様子で一点を見ているBちゃんでした。
みんなBちゃんの目線につられてその方向を見るとそこは扉の開いた部屋の入り口でした。
全員が一瞬息を飲みました。
入り口の所に大人の女性と男の子が手を繋いで立っていて、廊下の照明で逆光になっていてシルエットのようにも見えました。
一拍置いて全員がパニックになり大声で叫びました。
「ぎゃーーーー!!」
「何あれーー!!!」
「イヤーーーー!!」
ドタドタドタドタドタドタドタドタ
「お前らうるさいぞ!!!」
学年主任の男性の先生でした。
みんなパニックになりながらも
「だってそこに人が!」
「女の人がいたんです!」
などと説明をしましたがもうそこには女の人も男の子の姿もありませんでした。
「とにかく黙って寝ろ! 周りに迷惑だろ!」
そう一喝され先生は出ていき扉を閉めました。
みんな布団に入ったのですが恐怖から誰も喋れずにいました。
外が白んできた頃に安心したのか何人かは寝ましたが、私は寝ることはできませんでした。
その日は学校に帰る日だったので夜に寝れなかった分バスでぐっすり眠りました。
学校に到着し帰りの会を済ませると学年主任の先生のクラスへ向かいました。
夜のことが気になって仕方なかったからです。
同室のみんなが見ていて、女性と男の子は入り口のところにいたのだからそこから入ってきた先生も絶対に見ているはずだと思ったからです。
まずは夜に騒いでしまったことを謝り、落ち着いてあの夜にあった出来事を話しました。
先生は少し顔を強ばらせながら小さい声で
「実はあの宿で昔自殺した人がいたとかっていう噂があったんだよ。でもみんなビックリするから内緒にしてな。」
「はい…誰にも言いません。それで…先生は…その…」
先生は察してくれたのか
「俺は何も見てないよ」
そう笑顔で答えてくれました。
もしかしたら私を怖がらせないための嘘かもしれませんが。
宿泊行事 完
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