『おかしい人を亡くしました』【2】

「お供えに出せそうだったのはリングォと水ぐらいでした、蝙蝠の翼とかマンドラゴラ。臭い果実なんて渡したらどうなるか……」


『魔物合成術師がいれば果汁100%のリングォジュースを作ってくれそうですけど』


「無い物ねだりはしない主義です」


『亡き者にしたのは貴方のせいの様なモノですけどね』


「細かい事は気にしない。それが世渡り上手の理由だってボクの婆ちゃんが言ってましたよ」


キツネにリングォと水を飲ませた。穴が空いていたみたいで貪る様にリングォを頬張っていた。


そして水とリングォ3個を食べ切ると腹をさすった。


《ご馳走様、久々のご飯でちょっと食べすぎちゃった気もするけどまあ良いや。願いを一つだけ叶えてあげるよって言おうとしたんだけど特別に二個叶えてあげようって言ってもこの状態の僕に出来る事なんて数少ないんだけどね》


『喋った!?』


「一体何が出来るんですか!?イノリギツネは遭遇率が低いせいでデータが少ないんです」


《うーんとね。例えばダンジョンにいるモンスターを……ココはモンスターいないんだった。それなら最奥までテレポートを!あっ、今の無し。うーん》


「私達に聞いてくれないんですか。ってか喋ってる」


『元々にとかとは言ってないですから。寝てて話聞いて無かったんですか?』


「うわっズルッ。そりゃあそうですけどそれならボクだって出来ますよ」


『じゃあ神社のキュートなマスコットと死体漁りの情弱腹黒一服情弱賢者で交換チェンジしましょう』


「褒め言葉と悪口が極端すぎるんでバランス良くした方がモテると思いますよ」


『生憎色恋沙汰で生きてる訳じゃないので』


《あの……良いかな?》


どうやら叶えてくれる願いが決まった様だ


《一つ目はココのダンジョンの隠し部屋を教える事。二つ目は先祖代々継いできた技を使って君達の願いを叶えよう》


「すいません、先に二つ目の方をお願いします。重いんですこの人」


引きずられていた魔物合成術師の頬には乾いた涙の線が残っている様な気がした


《コメント欄》

・聞いたらコケ男が泣くぞ

・○んでも酷い扱いを受ける男

・コケ男……お前に可愛い女の子が現れて嫉妬しかけた俺が間違ってたみたいだ。だから成仏してください

・元気に出張して呪ってて草


「どんな技なんですか?その技と言うのは……」


《化け騙しって技だよ。それで願いは?》


「この人今亡くなってるんですけど……蘇生出来たりって」


《出来るよ。その代わり一つ頼み事があるんだけど……》


申し訳なそうに耳をパタンとするキツネを見て何だと思うと


《この技凄い体力を使うんだ。だから後で少しで良いのでさっきの果実を……》


「ああなんだ、それぐらい大丈夫ですよ?さっきとは違う焼いた奴に果実の味がした水もお供えします」


《ありがとう……それじゃあ》




ダマし!》


その言葉と共に宙から葉っぱが落ちてきた。それを砕いてパラパラっとコケ男さんにかけた。


何の変哲も無いそこら辺に落ちている様な落ち葉な筈なのに砕いた瞬間ソレはまるで星屑の様に輝きやがて消えていった。


《コメント欄》

・うおっ綺麗だ……

・今度俺も彼女にやってみようかな

・ドンマイ。次があるよ

・やる前からフォローするのは草


《……つかれたぁ》


「一体何をしたんですか?」


《体を騙したんだよ、死んでる身体を生きてると勘違いさせたそれだけ。副作用も何も無いから安心して》


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る