第19話
八神くんを手に入れられる――そう思った私の行動は早かった。
写真が取れてすぐに、用事ができたって言って一人で家に帰って。
ちゃんとあの二人がカップルに見えるのか、っていうのを再確認して。
それでちゃんと見えるっていう確証を得て。それから、八神くんに写真を送った。
浮気してるみたいだよ、の文言もつけて。
すぐ返信が来た。もしかしたら疑われるかもしれないな、って思ってたんだけど、彼の返事は全く疑っていないようで。
詳しく、って言われたから、適当にでっち上げ。八神くんが完璧に私の言うことを信じてくれた。
そこからはもう簡単で。私が唆すまでもなく、八神くんは朝神さんと別れたみたい。
そこに、私が絡みに行く。
まぁ……八神くんって、人望がある方ではないから(朝神さんと比べて)、クラスのみんなは二人が別れたってなったら朝神さんの方についたんだよね。
私も、八神くんも。クラスのみんなにあいつらが浮気してたんだ!! なんて言ったわけじゃないし。
だから、私と八神くんの二人の時間が始まった。
幸せ。ものすごく。このまま3年間過ぎてくれたらいいのに。
八神くんが、このからくりに気づきませんように――。
________
(Side 八神蒼)
昨日は良い一日、久しぶりにそう思える日になった。人と絡むことが、人と仲良くすることが楽しかった。
裏切られたのに、まだ人と絡むことを楽しみにしてた。楽しんだ。
なんでだろ。楽しかったんだよね。それこそ朝神といた頃と一緒位には。
まさか……。まさかそういうわけじゃないと思うんだけどね。
そうなんだよ。偽、だった。偽のつもりだったんだ。僕と朝神の関係は。
けど、偽じゃなくなってきてた。そんな気がしてたんだ。
相手の距離が近い、それはまぁ……よくあることだと思うんだ。ラノベとかでもあるし。
まぁグイグイ来る……というか単に距離感が近い人なんだなって思ってて。
けど、それが嫌じゃなかった。全然嫌じゃなかった。むしろ心地よかった。
朝神と手を繋いで。朝神と夜ご飯を一緒に食べて。朝神と付き合ってるっていうことをクラスのみんなにも周知させて。
もともと偽カップルになるきっかけって何だったっけ? そう思うほどには、のめり込んでた。
だからこそ、裏切られた時はショックだったんだ。もちろん偽。そんなことは僕だってわかってる。
けどさ、あそこまで仲良くしてたんだよ? それに契約だった。
その契約を裏切って、他の人と付き合う。そんなことがあってもいいのかなって。
……僕が、朝神のことを多分好きだった。これも、1つの原因だと思うんだ。
けど、その感情を抜きにしても――この行動はあんまりじゃないか?
あぁ。辛いな。もう別れてから少し経つけど。まだ辛いよ。好きっていう気持ち――なのかはわからないけどそれに近しい気持ちは、もう消えた。
けど、悲しいっていう気持ちはある。
だから今は宮西と一緒にいる。
あの人だけが、僕に絡んでくれるから。
好きとかじゃないけどね、全然。うん。
親友、だ。親友。うん。また距離が近い気もするけど。だからなんだ、今の僕のことを好きになってくれる人なんているわけないからね。
_______
受験前、現実逃避の小説執筆。
ちなみに公立は3月11日なので、それまでは更新あんまりできませんので。把握よろしくです。
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