第18話

 いつからだろう。私が彼――八神蒼君に心を惹かれていたのは。


 入学した当初は、なんとも思っていなかった。というか、どっちかといえば静かで、掴み所がない。私が苦手な側の人だと思ってた。


 その予想は当たってて、実際、いわゆるクラスの『一軍』と呼ばれる人たちとは絡んでなかったし。


 まぁ……、異常に京極君には気に入られてたみたいだけど。


 そしてしばらくして。彼と、クラスで一番可愛い――それは男子からの評判だけではなく私からみても――と言われている女子、朝神舞が付き合ってる事が判明した。


 私は朝神さんとは仲良くしてて。クラスでも一緒にいたりした。


 彼女と私、それに仲のいい人たち(男女問わず)で遊びに行ったりもした。


 だから、ちょっと衝撃だった。しかもそれを隠すことなく、堂々と二人がイチャイチャし始めたんだからびっくりだよ。


 それを私は――受け入れてたつもりだった。


 他のみんなと同じように、祝福して。見守って。このまま二人が仲良くいてくれたらいいな、って思ってた。


 いや、思ってたつもりだった。


 二人がイチャイチャしてるのをみてる間、私はどこかもやもやしてる気持ちがあった。


 それを最初は、私に彼氏がいないことから来るものだと思ってた。リア充に対する嫉妬? になるのかな? 醜い感情だなって。


 けど違うってことがだんだんわかってきたの。


 その二人がイチャイチャしてる時はもちろん、心がざわつく。けどそれ以外のときも心がざわつく。


 そう、たとえば――


 自分で自覚した。そして気づいた。


 あ……。私は、リア充に対する嫉妬でもやもやしてたんじゃなくて。


 八神くんが私じゃない女子とイチャイチャしてることにもやもやしてたんだなって。


 なんで八神くんに惹かれたのかはわからない。

 なんで八神くんのことが好きになったのかはわからない。


 けど、好きって気持ちは本当なんだなって思った。


 だから私は行動に移った。


 なるべく朝神さんの行動を洗って、なにかおかしいことはしてないのかなって調べて。


 いつか、いつかボロが出てくる。そう思って探してた。けど、見つからない。


 だったら次は、私の方からなにか行動を起こせばいいんだ。そう思って、八神くんの連絡先を追加した。


 幸いなことに私も、八神くんもクラスラインに入ってたから良かった。


 そっからは、私の攻勢がスタートした。


 なるべくボディタッチを増やして、なるべく八神くんと話すようにして。


 もちろん、壁は作られた。朝神さんと、私ではまた別。そう思われてるのはあきらかだった。


 けど、友だちとして。友達としてなら、仲良くなれた。これで充分。


 そう、この気持ちにはふたをして。そう思ってたのにさ。


 取れちゃったんだよ。写真が。


 私と、朝神さん、その仲いい人たち――京極君も含む――で、遊びに出かけた時。


 私が写真を取るのが好き、っていうのはみんなに周知されてたことで。だからカメラを構えててもなにも疑問に思われなかった。


 それで、なにかいい写真がないかな……って思ったときに、朝神さんと京極君が並んで歩いてて。


 あれ、この構図なら……。そう思った。


 この邪な気持ち、自分で枷をつけとかないといけないって思ってたけど、そのときだけは外れちゃった。


 そしていい写真が取れた。この写真なら。この写真を使えば――朝神さんから八神くんを奪える。








 _________








 お久しぶりです。生きてます。


 受験期です。10日には私立の受験です。(都道府県バレは知らん)


 なのでこの更新はゲリラで、また1ヶ月ほど休みますが。


 この物語のことを忘れずにいてくれたら嬉しいです。


 よろしくお願いします。


             きさらぎ

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