八神蒼は裏切られる

第12話

 『裏切り』


 だいたいの人が、大なり小なり経験したことがあるだろう。


 一般的にはいい意味では使われないその言葉に含まれる意味は様々で。また影響が大きいものもあれば小さいものもあり。


 国同士が裏切る、とかであればとんでもない影響力を持つことになるが、友達同士であればそこまで大きなことにはならない。


 もちろん、その後の関係は険悪なものとなるだろう。


 もしもおんなじグループの中での出来事であったなら。他の人にまで迷惑をかけるのは想像に難くないだろう。


 けど。親友、と呼ばれる立場の人間でなかったのなら。心に与えられるダメージは少ないのではないかと思う。


 だが。もしも裏切られたのが恋人や、親友であったら?


 親友であればまだいいかも知れない。友達が1人減るだけだから。いや、それでもだいぶ心に来ることではあるけど。


 けど恋人に裏切られたなら。大多数の人は怒るだろう。


 なぜ自分のことを裏切ったのか。


 なぜ自分が裏切られなければならなかったのか。


 なぜ裏切るという選択肢を取ったのか。別れる、という選択肢はなかったのか。


 そもそも裏切るくらいならなぜ最初から付き合ったのか。


 そんなに自分が悪いことをしたのだろうか。


 そして――そんな裏切るやつに生きている価値はあるのか。


 など。疑問は尽きない。


 そして疑問が尽きないにも関わらず、その後当事者同士で話すことなどないだろう。できないだろう。


 一度裏切られたのだから。もう一度話し合うなど――こちらの話したい話したくないの意思に関係なく、そんな機会は与えられないのが当然だ。


 相手が嫌だというから。こちらから願い下げだったりするし。


 そう考えたら、僕はまだ幸運だったのかもしれない。


 偽とはいえ付き合い始めてまだ1ヶ月で依存――しているけど夫婦となっているほどでもなく。


 その相手以外に話ができる相手がいないわけではなく。


 中学の時の――いや、正確に言えば中学2年生のときのように1人ではないから。


 それに、僕には『勇気』というものも少しは出てきた。


 だからこそ、話し合えるかもしれない。なぜそんなことをしたのか聞けるかもしれない。


 それに、僕たちはまだ付き合っているわけではないのだから。


“偽”という枕詞に、これほど感謝したときは今までになかったのかもしれない。


 そうして僕は今、眼の前の僕を裏切った“偽”の恋人――朝神舞との話し合いを始める。





 ______






 僕が舞――いや、朝神が裏切ったかもしれない、という情報を得たのは友達からであった。


 そう。僕にも友だちができて。中学の時の友達いない、いじめられていたときからは一転し。


 LINEの連絡先にも20人くらいの友だちが登録されている。


 そしてクラスLINEにも入ることができた。すごいよね。あんなに大人数が会話してるんだもん。


 最初に入った時びっくりしすぎて死にそうになったよね。死なないけど。


 そうして充実した高校生活を送っていたんだよ。


 普通の友達がいて、自分のクラスがあって。ちょっと僕には釣り合わない“偽”彼女がいて。


 クラスの人たちからは朝神の彼氏として見られて。冷やかされて。


 髪型も変えてみたんだ。メガネをコンタクトにして。前髪を目にかからないようにして。


 朝神監修の元、マッシュにもチャレンジしてみたんだ。もちろん、黒マスクではないからな?


 いい気分だった。全部朝神の力――というふうに見られているかもしれない。それにしても、友だちがいる。彼女がいる。その高揚感は計り知れなかった。


 けど、僕は僕だ。そんな一朝一夕で変わるわけがない。だから、そんな幸せな日々が長く続くわけがなくて。


 3日前くらいだったかな。僕の友達で、クラスでもよく話してくれる宮西鈴という女子――彼女は僕が朝神と付きあっているにも関わらずボディタッチがすごい――から、僕のスマホに一つの写真が送られてきた。


 その写真には、様子が写ってあったんだ――






_______







NTR にはなりませんのでそこだけ把握よろです!


あと、本日まだテスト週間なので、更新明後日になる可能性が高いです。その後は毎日投稿……したいなぁ……と。

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