第10話

 とりあえず、舞と二人でハートの飾りがしてあるベンチに座る。あー。今日は青空がキレイでいい天気だなぁ。(現実逃避)


「ねぇ舞。舞は今日はご飯何なの?」


 けど、現実逃避をするんじゃなくて、こうなるんだったらとことんカップルらしく。


 ホントのカップルってさ。こういう他愛もない話から


『え? それ美味しそうだね』

『でしょ!? ……あ、一口いる?』

『いるいる!』

『じゃあ――あーん』

『えっ!? ――あーん』


 とか言ってるんだろ? あー羨まし。


 というかそんな話からイチャイチャに繋げられるのおかしいだろ。想像力中学生男子かよ。いや、中学生男子は下ネタだったわ。


 ……カップルが話してたらそういうふうに広がるのも当然といえば当然か。いや、当然にしてもらったら困るんだけど。


「私は普通に自分で作ったけど……」


 そう言って僕の方に見せてきたのは見覚えのあるおかずたち。


 あっそっか。僕って舞といっしょに夜ご飯食べてるんだった。忘れてた。記憶力君お仕事してくれないかな?


 僕自身は最近よくわからないことが起こりすぎててオーバーヒートしてるんだ。頼むよ。


「すごいね。僕なんてコンビニ弁当だよ」


 今言った通り、僕の今日のお昼はコンビニで買った鮭弁当。美味しいよね。鮭って。塩分が強かったらよりいいとおもうんだ。


 だって塩って舐めれるじゃん? あれ塩分が病みつきになってたまらないんだ。……高血圧? 知らねぇよそんなん(


「えー? 自炊しないの……?」


「だって……めんどくさいし。夜ご飯まで舞に――「ストォップ!!」るし……え?」


「いや!! ここ外だから! バレたらどうするの!?」


「……あっ」


 舞に慌ててとめられて、ふと正気に戻る。


 やっべ。いつもみたいに話してた。なぁ、八神。ここ外だよ? いつもみたいに僕の家じゃないんだ。


 いつ、誰に、何を聞かれてるかなんて全くわからないだろ?


 いや、僕の話を聞く人なんていないとは思うけどさ――もしかしたら、もしかしたらいるかもしれないじゃん。今は話題になってるわけだし。


 ……舞のおかげというべきか、舞のせいというべきかはわからないけど。


「まぁいいや。食べよ?」


 ということで。舞は肉じゃが弁当を。僕は鮭弁当を食べる。


 隣のベンチには、僕たちよりも年上に見えるカップルが。僕の視界に入る中には、すごくイチャイチャしているカップルが。


 僕ら、話してないし浮いてるかもしれない。けどそんな事を考えずに、ただひたすらに、お互いになにも話すことなく食べる。


 周りから見られてるのがわかっていても、そんなこと気にせずに食べる。そんなこと、気にせずに――


「ね、蒼。肉じゃが――いる?」



 ……舞さん。そんなに高頻度で爆弾落としてたら爆弾の在庫なくなるんじゃないですかねぇ……(白い目


 いるよ? そりゃあ美味しいし。けどさ。この場合っているって言ったら100――いや、1000%あーんってしようとしてるよね!?


 やめて。羞恥心がすごいの。カップルだとはいえ、僕今日教室に手を繋いで入るときですらとんでもなく緊張したんだから。


 ということで迷う。肉じゃがか、羞恥心か。あーんをされるのか、あーんをされないのか。


 そもそも人から見られてるのか、みられてないのか。いや、これに関してはみられてるか。


 ということは、羞恥心とか関係ないのか。つまり僕が出すべき結論は――


「ほしいなぁ……?」


 ほしい。そしてあばよくばあーんってしてもらいたい。これ一択だろ!!


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