第7話

 ということで、やさしーく舞と手を繋ぎながら歩き、とうとうボス部屋(教室)にたどり着いた。


 まだ手を繋いでいることには慣れないし、もしかしたら手汗をかいているのかもしれないっていう心配はあるけど、そんなことを心配を吹き飛ばすほどに教室の雰囲気は凄かった。


 僕と舞が一歩踏み出すと、教室の中の空気が「………」となる。


 まぁそれはそうだよね。だってさ、クラスで一番かわいい――と僕が勝手に思っている――女の子とモブが一緒に、しかも手を繋いで歩いてきたと。


 そりゃあ驚くよ。僕だっておんなじ立場だったら驚いてるよ。……今は別の意味で驚いてるけど。


 まぁけど出席番号が離れているので、手を繋いだまま教室内でも過ごすということはなく、どこからともなく手を離してお互いの席に向かう。


 ちゃんとお互いに寂しそうな演技をするのも忘れない。こういうリアリティが大切なんだ。


 すると、僕の方には大量のさっきの道とおんなじような視線が、舞はというと――


「舞ちゃん。ちょっとこっち」


 はい。事情聴取に連行されたみたいですね。まぁ頑張ってくれよ。僕には関係――ないから――


「なぁ。八神。これは一体なにが起こってるんだ……?」


「き、京極……? ななに……?」


 訂正。僕にも大いに関係あったみたいです。というか返事の仕方に陰キャがにじみ出てますね。許して。


 ……はぁぁ。早速追求ですか。想定してないよ。まさか僕に話しかけてくるもの好きがいるなんてね。


 さぁ。こっからは戦い――いや、相手を見定める時間かな。もしも敵対心剥き出しで接してくるんだったら、覚悟しないといけない。


 けど、京極がいい人、であったなら。友達として――いや、僕なんかがおこがましいかもしれないけど、友達としてやっていけるかも――


「ん? いやだってな……全く接点がなさそうなクラスメイト二人が、入学式の次の日に手を繋いで歩いてきたらよ……びっくりするだろ?」


「たしかにね……まぁ……そうだね。付き合ってるんだよ」


 僕が、“付き合ってる”の部分を強調して言うと、京極につられて僕のところに来ていた男子たちから


『グァァ!』『クソぉ!?』『まぢか!?』


 と言った喚き叫びが聞こえてくる。


 ふふふ。そう。僕たちは付き合ってるんだ。ごめんね。“偽”カップルとして、だけど。


 というか自分でクラスメイトに付き合ってるっていうのなんか変な感じだね。


 中学の時なんてそれこそ――いや、そのときは言ってたか。堂々と。それで――


 いや、今そんな昔のことは関係ないや。


「本当に付き合ってるのか……?」


「うん。前から知り合いだったからね」


 前から知り合い、これは昨日舞との話し合いで設定として決めたことだ。


 他には、もともと一緒に遊びに行くくらいの仲の友達であったこと、そこからなんやかんやあって付き合っていること。


 入学前から付き合っていたけど、昨日は様子見のために付き合っている素振りを見せていなかったこと、とかかな。


 これも全部、僕と舞の母校が離れていたからできることだね。


 もしも知り合いがいたらって思うとゾッとするよ。


『こいつら付き合ってなかったどころか知り合いですらなかったぞ!』


 なんて言われたらどうするよ。風当たりが……酷いことになるよ……。うん? お前覚悟してるじゃないかって? いやいや、それは最悪の話でしょ?


 少しおどろいた顔をして京極だったけど、僕が考え事をしているうちにもとに戻ったのか話しかけてきた。


 はい。もう覚悟はできてるよ。なんとでも言ってき――


「――羨ましいなぁ……前から知り合いだったなんて。あんな可愛い娘と。――なぁ、どうやって落としたんだ?」


 ――あれ。僕に対しての恨みつらみを言ってこないんだ。もしかして仲良くできるタイプの人ですか?







______







ご都合展開って良いよね


風邪ひきました。つら

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