俺の犬になれ2
⋯⋯⋯⋯
⋯⋯
結局、昨日願った願いは全く届かず、大学で出会う出会う。
そしてバッタリと会ってしまう度に、全力て逃げた。
逃げて、逃げて……逃げ続けた結果がこれだ。
アキラとは幼稚舎からの
いや、仲良くなかった、なんてものじゃない。
すこぶる悪かった。
でも、アキラのせいで何度泣かされたか分からない学校生活も、小5で私の転校と同時にアキラから解放された。
それからは住む世界も違うし、もう一生関わることなんて無いと思っていたのに……。
なのに⋯⋯
まさか大学でまた一緒になるなんて。
「はぁー」
深すぎるため息が出る。
こういうのを、いわゆる悪縁と言うのだろうか?
「はぁ~、アキラに会いたくない」
タワーマンションの入り口前で何度目かのため息をつく。
「⋯⋯でも、行くしか無い。アキラなんかに怯えなくったっていい。
私は昔の私なんかじゃないのよ!
ただ……写真を消してくれってお願いするだけ。今の私なら出来る!うん!」
自分に
大きく息を吸って吐いて、胸を張って高級感のあるエントランスに入るとカツカツと力強く大理石にヒールを鳴らし歩く。
そして、ポツンと立っている大理石のインターホンに、友達とのメッセージログに残っていた部屋番号を押してインターホンを鳴らした。
インターホン音も消えてから暫く経ったのに、全く反応がない。
「⋯⋯あれ、いない?」
それとも家が広すぎてインターホンに出るのに時間がかかるんだろうか。
『居ない』というのがハッキリ分かれば、自分の中で逃げる口実も作れる気がして、はやる気持ちでインターホンを何度か鳴らす。
でも出ない。
これで彰と会わなくていい、という事になるから嬉しい気もするけど、写真をすぐに消してもらえないのも困る。
もう日付変わったところだし、寝てるんだろうか?
複雑な気持ちを抱いてインターホンに背を向けた瞬間、背中側からプツッと音声が繋がったような音がした。
「
静かなエントランスにそんな不機嫌な声が響いて、私は驚き小さく飛び跳ねた。
バクバクとな鳴る胸押さえて振り返ると、ピカピカに磨かれたガラスのドアがガーっと音を立てて開いた。
「え」
入れって、事よね?
あんな言い方をされてむしゃくしゃした気持ちと、今から彰と会うという何とも言いようのない不安を抱えて中に入る。
すると、大きすぎる吹き抜けに眩しいくらいに輝くシャンデリアが出迎えた。
二度目になるけど、さすが都内でも有名な駅直結の高級タワマンだなと、感心しながら天井を見上げて奥に進む。
するとホテルの受付嬢の様な女性が、カウンター越しに
「お帰りなさいませ」とお辞儀をしてくる。
こんな時間でもいるんだ、と思いながらお辞儀を返し、重い足取りでエレベーターホールに向かった。
ほぼ最上階の階数を押して高層用エレベーターに乗り込む。
静か過ぎるエレベーターの中の空間は、まるで戦場に向かう前の静けさのよう。
「やれる。アキラなんて怖くない」
何度も何度も自分に唱えるように呟くと、チンッという軽快な音と共にドアが開いた。
するといきなり
さっきまで唱えていた呪文は、全く効果が無かったことが証明されたのも同然。
このままエレベーターで下まで降りて、逃げてしまいたい。
そんな事を一瞬思ったけど、今から握力テストでもするのかって位にバックの取っ手を握りしめてエレベーターから降りた。
するとーー
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