俺の犬になれ
俺の犬になれ1
目もくらむ程の高いタワーマンションを前に、ゴクリと唾を飲んだ。
「また来てしまった……」
ここに来るのは2度目になる。
1度目は、大学に入学して間もない頃。
出来たばかりの友達に
「この大学に、めちゃくちゃイケメンがいるんだけど、今日その人の家でセレブ飲み会があるんだって」
と目を輝かせて言われる。
セレブ飲み会?何それ。
それに男が居るなら行きたくないな。
「ごめん、私そういうのはチョット……」
「えー、いいじゃん。行こうよ」
腕を抱かれ甘えるように言われた私は、上手く断れなくて残念ながら行くことになってしまった。
私は断るのが苦手で女の子には弱く、その結果頑張ったけど敗北したのだ。
男なんて全く興味がないし、未だに苦手なのに……。
夜ーー
友達に手を引かれるように連れられて、セレブ飲み会とやらに相応しい超高層のタワーマンション上層階に連れて来られた。
重厚そうなドアの前で友達がインターホンを押すとデレた顔の男が出迎えた。
この人がお金持ちの人?と小さな違和感を感じながら玄関に足を踏み入れた瞬間、懐かしい香りがした。
なんだろう。
胸がザワつくような……
心がかき乱されるような感じがした。
長い通路を抜けてドアが開けられる。
さっきからペラペラと話してくる玄関まで出迎えた男はハイテンションに
「
と中にいる人に話した。
……
そんな名前、ありふれていてどこにでもいる。
でも、さっき玄関で感じた懐かしさと、その名前が一致してーー
「え…………遥?」
その声に呼ばれるように俯いていた顔を上げると、頭の中が真っ白になった。
「……嘘っ」
その瞬間、この世で一番会いたくな無い男と再会してしまった。
余りのショックで、その後誰と何を話したのか、どんな風に過ごしたのかほとんど覚えていない。
翌日、普通に朝自分の部屋で、いつもと同じアラームで目が覚める。
時間を確かめる為にスマホを手にするとメッセージ通知があって開封した瞬間、スマホが手からすり落ちて顔面に直撃した。
「痛っ」
ぶつかった鼻を押さえながら、思わずスマホに叫んだ。
「
昨日のことはほとんど覚えてない。
でも、いくら酔ってたからって連絡先を交換するような仲になったとは思えない。
万が一誤って連絡先を交換したとしても、その後メッセージをやり取りするような仲じゃないでしょ!?
私の記憶が無い間に、一体何が起こったの?
震える指でメッセージを開封すると
『馬鹿なのは俺の前だけにしておけ』
と理解に苦しむメッセージが。
「なんじゃそりゃーー!!」
一瞬で気分が悪くなって、思いっきり布団にスマホを投げつける。
「こんなやつの連絡先なんて消してやる!
いや、でも待って。……一応残しとくか、何かあった時の為に?とりあえず名前は編集して、究極のゴミ屑と言う名で…………うん、よし!」
お願いします。神様。
出来るだけでいいので、私から彰を遠ざけてください。
「ん?あれ?何これ」
腕に血が固まったような小さな赤い点を見つけて首を傾げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます