プロローグ2

そのせいで思わずき込み手からスマホが滑り落ちる。



ガシャンと高い音を立てて落ちたスマホを慌てて拾い上げる。


「大丈夫?割れてない?」

心配そうな目が向く。

だから余計に平静を装う。


「うん、大丈夫そう」

出来るだけ落ち着いて画面についたほこりをパパッと払う私の心は、不安と怒りでぐちゃぐちゃになっていた。




この写真は⋯⋯何?


なんでこんな写真があいつの元にあるの?


それに一体いつ撮ったの?

こんなの撮った覚えないんだけど。


どういうつもりでこの写真を送って来たのかは全く分からないけど、今すぐ消して貰わないと寝不足決定なのは間違いない。


あいつの事だ。

電話かメッセージで『消して』って頼んだ所で絶対消してくれないんだろう。


きっとそんな事言ったら、逆に面白がって写真をばらまかれてしまうかも知れない。



あぁー、嫌だな。

もう、あいつとは微塵みじんも関わりたくないのに。



なんで私の人生って、こんなにも上手く行かないんだろう。



奥歯をギリっと鳴らして、私はまだまだ吸える煙草の火をもみ消し立ち上がる。


「あれ?まさか、そのゴミ屑に会いにいくの?」

笑いすぎて目じりに涙を浮かべる仕事仲間に不思議そうな顔を向けられる。


「違うよ。そろそろ帰るだけ」

何故か付いてしまった嘘に、自分でも疑問に思いながらお茶代をサッと机に置く。


「ふーん」

頬杖をついて向けられる疑い目から目を逸らすと元気よく言われる。

「お疲れ!」

「うん、お疲れ」


仕事外では嘘が大の苦手な私は、そんな目から逃げるように足早にその場を後にした。

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