第47話 未来
目が覚めた。
ことちゃん。
どうして、なぜ、僕の許に来てくれたか、正直よくわからない。
"オーラに惹かれた"という
チョコ云々は、最初はきっかけと考えていたけど、今は最後のハードルを越えるためのブースターであったと解釈してる。
最後のハードルの手前まで助走した、駆けだした動機は何だろう?
うぬぼれてると言われるかもしれない……言われてもかまわないんだけど、やっぱり、僕の何かに魅力を感じてくれた、んだろう。
僕の父母はお見合いだ。
和真と
Taoufik(タウフィク)と
何を、感じたの、みんな?
分かってるんだ。類推したって、“こうであらねばならない”等のトラップを作ってしまうだけだ、と。
なぜなら、カップルの数だけきっかけがあり、プロセス、ハードルがあるから……
この先……どんなハードルがあるのか…乗り越えたい。
『うん……よーくん、おはよう』
「ことちゃん、おはよう」
『……どうしたの?』
「え、僕、変な顔してる?」
『ううん、今日のよーくんはいつもよりドキドキする」
伝わってるのかな?
腕枕をしたまま、ことちゃんの左肩に右手を添えた。
ことちゃんが、抱き着いてきた。
『いつも、ハグしてもらってるから……今日、帰っちゃうんでしょ』
「ごめん、今日、予備校なんだ。でも、3時からだから、午前中は一緒にいられるよ」
『じゃあねー自転車の練習に付き合って』
『おう、いいよ』
僕も、幼稚園の年長さんのころから自転車始めて、速く走ったら転ばない、なんて考えてたんだよな。
『
「みなさん、おはようございます」
『『みんなおはよー』』
『『『『『おはよう』』』』』
おや、今日はトーストなんだ。
トースト、ベーコン、スクランブルエッグ、ほうれん草のソテー、飲み物はミルク。
『『『『『『『「いただきます」』』』』』』』
『今日、よーくんに自転車の練習見てもらうの』
『いつもの公園?草むらに入らないよう気を付けてね』
『芳幸さん、近くの河川敷の公園が空いてるから自転車の練習にうってつけなんです』
「そうですか。河川敷だとなるほど草むらは要注意だな」
うん、マムシとかがいる可能性があるからな。
『じゃ、行ってきまーす」
なるほど、外周に舗装した遊歩道があって、かつ空いてるから自転車の練習にうってつけだ。
『あのね、曲がるのがうまくできないの』
「うん、それはね――」
…………
「お、今のは上手に曲がれたぞ」
『本当。うれしい』
…………
「お茶飲んじゃったかな?じゃあ、そろそろ切り上げようか」
『うん』
僕も飲み物なくなったし、熱中症になるとまずいからね。
「ことちゃん。自転車上手だよ」
『よーくんに褒めてもらえるとうれしい』
「実際は、公園と違って車も人もいるから、周りをよく見てね」
『うん』
『「ただいま」』
『おかえり~こーちゃん転ばなかった?』
「ことちゃん、上手でしたよ」
『もうすぐお昼ご飯よ。二人とも手を洗ってきて』
お昼ご飯をよばれた後、家路というか予備校に行くために涼原家を辞した。
いつものことであるが、全員で見送ってくれた。
『また、来てね』
「うん、次の満月の日に来るよ」
『次の満月は8月18日だな。楽しみにしておくよ』
「鐘治さん。月の出の時刻や月齢に詳しいようですが、お好きなんですか?』
『前に話した月への思い入れが高じて、月齢、月の出、月の入りはカレンダーを暗記してるんだ』
『漁師じゃないから、実生活には役に立たないけど、見ごろがわかるのは感謝ね』
「そうですか、いいですね」
「じゃあ、皆さん。お世話になりました。由莉さん、曽祖父の分まで長生きしてください」
『芳幸くん、ありがとうね』
「ことちゃん、またね」
『よーくん、またね』
予備校を終えて、帰宅したのは22時だった。
『おかえり。ご飯できてるわよ』
「ありがとう……って今日仕事じゃなかった?」
『聞いたわよ江梨さんから、いろいろと。だから、英雄な息子を讃えようと思って、切り上げてきたのよ。
……仕事を父さんに押し付けてきたな。
「まあ、ご飯食べながら話すよ」
『『「いただきます」』』
…………
『ふ~ん、おじいちゃんがね。隅に置けないって言っていいのかしら』
「いや、由莉さんが言ってたけど、自分のことを忘れて欲しくないっていう気持ちの表れじゃないかな」
『うん、ひいおじいちゃんは切羽詰まっていたのは確かだから。でも、浮気は浮気よね』
『そうね』
そういう、アルゴリズムということは覚えておくべき……かな?
次に、話題は心肺蘇生の件になった。
江梨さんから情報が入ってるので、簡単に話した。
『芳幸、よくやったわね。親として誇らしいわ』
「うん、ありがとう」
『ねえ、お兄ちゃん。どうしてその人を助けてあげようと思ったの?』
「自分でもよくわからない……倒れているところを見て、奥さんの声を聞いて……自動……AEDの一部となったのか、AEDを含んだシステムになったのか……」
『自分を機械扱いしてる割には、かっこいいことを言ってたみたいね』
『え、お兄ちゃん、かっこいいことを言ったの?』
『
『キャー』
「ちょっ、母さん!」
『確かにキャーよね。慈枝は
『え、いや、それは機会がないから。それに颯さんにはそんなセリフ似合わないよ」
おやおや、性格が把握されてますぜ、旦那。
『南鳥島近海の北緯24度35分、東経149度05分には、998hPaの台風――』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ご訪問ありがとうございます。
芳幸くんのセリフは「―の夢は僕の夢だよ 絶対に甲子園につれていくから」のインスパイアということで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます