第45話 絶対に、絶対にあきらめません!◆side琴菜◆
『あなた、しっかりして、目を開けて!』
『パパ!』
男の人が倒れてる。声を出してたのは倒れている人の奥さん?
近くに男の子……あれは、
じゃあ、倒れている人は雅樹くんのパパだ。
『周囲は……安全!』
よーくん、雅樹くんのパパに走り寄った。
『反応ない……ですね。
『え? 貴方は??』
パパとママが来た。
『
『はい、反応なしです。救急車とAEDお願いします』
『『諒解! 鐘治さんAEDを、私は119します』おう、隣だな』
『奥さん、ご主人の体触りますよ』
よーくん、雅樹くんのパパの口に耳を近づけ、胸を見てる……あのかっこいい顔になってる。
『
よーくん、何とかしてあげて。
『気道確保……ヨシ! 胸骨圧迫開始!』
『1、2、3、4――29、30。反応、呼吸確認』
『ことちゃん、ごめん。汚い言葉を使っちゃった』
「ううん大丈夫。私はどうすればいいの」
『近くにいてほしい』
『ことちゃんがいると頑張れる』
「うん。離れないよ」
『反応なし、呼吸なし。胸骨圧迫再開、1、2、3、4――』
よーくん、汗だくになって雅樹くんのパパの胸を押してる……やっぱり、よーくんはかっこいい。
『
「あ、
『どうしたの?』
「雅樹くんのパパが倒れて、よーくんが助けてる」
『よーくんって胸を押してる人?』
『そう。琴菜ちゃんのカレシ。あっと、私たちは“芳幸さん”って呼ばなきゃダメなんだって』
『ふ~ん。あの人が琴菜ちゃんのカレシ……』
『陽葵、
『はーい。ちょっと行ってくるね』
『いってらっしゃい』
『雅樹くん、琴菜ちゃんにちょっかいを出したりせずに黙って見てなさいよ』
『うん……』
よーくんは絶対助けてくれるから。
『通報完了』
『AED持って来たぞ』
『パッドの準備お願いします』
『準備でき次第声をかける』
パパとママがAEDって機械のふたを開け、いろいろ取り出してる。
『パッド準備完了』
『胸はだけさせました』
『ネックレス等なし。あー汗ばんでる』
『はい、ペーパータオル。胸毛は?』
『大丈夫」
『奥さん、旦那さんはペースメーカーとかの埋め込み型機器を使ってます?』
『何も使ってないです』
『パッド装着完了!』
『カラダニフレナイデクダサイ シンデンズヲシラベテイマス』
『離れてくださーい』
「よーくん、これで汗拭いて」
『ありがと。救急車が来たら教えて』
「うん」
『カラダニフレナイデクダサイ シンデンズヲシラベテイマス』
『ぶっ『デンキショックガヒツヨウデス カラダニフレナイデクダサイ』』
『テンメツシテイルショックボタンヲオシテクダサイ』
『誰も体に触ってないな、江梨さん!』
『諒解、Discharge!』
雅樹くんのパパ、ビクッとしたけど、動かなくなっちゃった。
雅樹くんが泣きそうな顔になってる……あれ、いつのまにか雅樹くんに蘭華ちゃんがぴったりくっついてる?
『胸骨圧迫再開!ぶっ倒れたら代わってください!』
『おう! バイタルサインのモニターは任しとけ!』
『はい、お願いします』
『モットツヨクオシテクダサイ』
『わかったよ!』
『キョウコツアッパクハユウコウデス』
『
『
『主人は大丈夫でしょうか』
『私達はお医者さんではないので、確かなことは言えません』
『でも、私達は絶対に、絶対にあきらめません。芳幸くんがへばったら主人が、主人がぶっ倒れたら私が引き継ぎます。絶対に心臓を動かしたまま救急隊に、お医者さんの手に渡します』
『は、はい。よろしくお願いします』
『あの、心臓マッサージをしていただいているのはご主人のお知り合いの方ですか?』
『主人ではなくて、琴菜と仲良くしてくれている男の子です』
『え? 学生さんのようですが』
『はい、高3です。とても誠実な人で琴菜に優しく接してくれますので、私達は信ずるに足ると考えています。むろん、琴菜はメロメロです』
『うちの雅樹は、琴菜ちゃんにちょっかい出してばっかりだったのが恥ずかしいです』
『それは……水野さんにも経験があるかもしれませんが、男の子は好きな女の子の気を引こうとしてそういうことをしますから』
『はい……うう……』
雅樹くんのママ、泣き出しちゃった。
あ、おばあちゃんたちが来た。
『CPRか。俺も講習受けてるから待機しておこう』
『芳幸さん、頼もしいのね。鐘治さんと江梨もしっかりサポートしてるわね』
当り前よ、私のよーくんよ。
よーくん、頑張って……
『フフ、目が
『済んでる』
『じゃあもうすぐ来ますね』
『あー、ここは消防署から遠いです』
『そうなの、颯。それはちょっと心配ですね』
『私、救急隊のエスコートをします』
『千緋呂、お願いね』
『心電図解析、2サイクル目です!』
…………
『Discharge!』
『胸骨圧迫再開!』
神様お願い、よーくんに力を貸して。雅樹くんのパパを助けて。
…………
『心電図解析、3サイクル目です!』
…………
あ、救急車のサイレン!
「よーくん、救急車のサイレン聞こえる」
『わーった!』
『鐘治さん。救急隊のエスコートは任せて』
『お願いします、お義母さん』
『水野さん。もうすぐ救急車来ます』
『ご主人が倒れた時の状況を救急隊に伝えて下さい。持病があったらそれも伝えてください』
『はい……』
『Discharge!』
『胸骨圧迫再開!』
『心電図解析、4サイクル目です!』
『芳幸くん、大丈夫か?』
『たぶん、引き渡すまではもつでしょう』
『Discharge!』
『胸骨圧迫再開!』
…………
雅樹くんのパパが救急車に乗せられている。
よーくん、救急車の人と話をしてから私たちのところに来た。
『お兄さん、さっきはごめんなさい』
『ん、謝る相手は僕じゃなくてことちゃんだろ。ことちゃん、どうする?』
……うん……許してあげよう。
『許してくれるんだって。では、ひとつお兄さんと約束。好きな子には優しくするんだぞ』
『雅樹くん、救急車に乗ってパパについて行ってあげなよ。大丈夫、蘭華が神様に“おとうさんを助けてください”ってお願いしてあげるから』
『うん、蘭華ちゃんありがとう』
おやおや?
『昇さんと
『ひいおばあちゃん、それは縁起でもないよ』
『私はもう93ですから、いつお迎えが来ても不思議はないですよ。それに幸嗣さんや昇さんが待ってますから』
『琴菜ちゃん、芳幸さんってかっこいいのね』
「よーくんは、誰よりもかっこいいんだよ。あ、私のよーくんだからね」
『『フフ。知ってるよ』』
「よーくんかっこよかったよ。うちに帰って休む?」
『ありがとう。僕は大丈夫だよ。ごめんねほったらかしにして。これからは一緒に廻ろう……あそこの射的、良さげなお人形があるんじゃない?』
よーくんは誰よりもかっこいいんだからね。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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AEDは旭化成ゾールメディカルのZOLL AED Plus型を想定しています。
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