第40話 もう一人の全力疾走ヒロイン
『そうか、
『良かったじゃない、
いつものファミレス。
「ことちゃんは全力疾走だし、おかあさんの
『それでいいのよ。ひとつ誤解があるみたいだけど、父は和真を買ってるのよ』
交際が続いてるんだから、根っから反対してるとは思ってなかったけど、そうか買ってるんだ。
「和真、どうなんだ」
『そりゃあ緊張はあるけど、まあ、いろいろお手本になることはあるな。今は、そっちのほうが大きい』
「そうか」
『芳幸こそ、めちゃくちゃ買われてると思うぞ』
『だけど、しつこくおままごとに付き合わされて泣いてた芳幸くんがね〜お姉さんはうれしいよ』
その話は……勘弁して。
『なにそれ、おもしろそう。宇都宮さんそれ詳しく教えて』
『えーとね、年少さんの時にね――そのときに――』
『へー、
誇張が入ってるよ。
『(ヒソヒソ)なあ、当時も今も芳幸は全力疾走ヒロインが集まるのか? まあ、気に入ってもらえるようにがんばれ。味方は多いほどいいと思うぞ』
『(ヒソヒソ)Yoshiyuki, I wish you good luck』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
駅についた。
ことちゃんと、意外にも
ことちゃん、白地に胸に大きめの花の絵がプリントされてるTシャツ、デニムホットパンツ、編み上げサンダルと夏の定番。
涼し気でいいですね。
二人で歩くとき手を繋ぐのはもはや習慣となっており、合図も、声掛けもなし。
『迷いも遠慮もないな』
「あ、すいません。普通にやってしまいました」
『いや、いいんだよ。それだけ自然にふるまえるというのはいいことだ』
『というわけで、安心材料をやろう』
?
『
「それは……
『いや、それほどでもない。というか、単為生殖ではないから女の手柄というのは間違ってる』
『そもそも、武家みたいに家業があるからシステムとしての“家”と
『この点、涼原家は家業を営んでないから、システムとしての家という概念が薄く、代々の男は婿養子という点も相まって、家父長的な性質が強くない』
『勝旦さんもそうだし、その先代の幸嗣さんはオーバーラップしてないので直接話したことはないが、そうだったらしい。もちろん俺もそのつもりだ。芳幸くんがどう感じたかはともかく、それは理解してほしい』
巷間流布されているオヤシ像で勝手にイメージしてました。ごめんなさい。
『あと、勝旦さんについて、2m近い巨漢っていう点で心配しているかもしれないがいたって優しい人で、“孫になんてことをしてるんだ!”とか言わないから堂々としていればいい。俺に挨拶した時のようにな』
『お祖父ちゃん、いつもお菓子くれるよ』
「ことちゃん、良かったね。鐘治さん、教えていただいてありがとうございます。頑張ります」
『だから、そんなに気負わなくていいんだよ』
鐘治さん、これを告げるために迎えに来てくれたんだ。マメだね。
『『ただいま』』
「お邪魔します」
『お帰り、鐘治さん。芳幸くんも“ただいま”って言ってもいいのよ?』
江梨さん、初めて会う人もいるのになんてことを!
「ま、まだ、ちょっと早いと思います」
『そうかしら?』
『こんにちは、芳幸さん。江梨の母の
『勝旦だよ、よろしくな』
「勝旦さん、千緋呂さん初めまして、僕は武『
家の奥から千緋呂さんより高齢の女性が急ぎ足で駆け寄って僕の両手を包み込むように握った?
『私よ、
え!え?
『おばあちゃん、その人は昇っていう名前じゃないわよ』
あまりのことに、ことちゃんは固まった。僕も半ば固まってるけど…
『ねえ、母さん、おばあちゃんボケちゃった?』
『全然。今朝だって碁会所に行って二人ほど打ち負かしてきたらしいわよ』
『だったら今のは何なの?』
由莉さんは江梨さんのおばあちゃんということは知ってたけど、昇って誰だ…
……!
「すいません。思い当るところがあります。由莉さんとちょっと話させてもらっていいですか?」
『え?』
『まあ、玄関先で話もなんだからリビングに移動しましょう』
『母さん、リビングに行くよ。まずその手を離して』
『こーちゃん、目を覚まして。リビングに行くわよ』
『芳幸くん、父と母には芳幸くんのことは伝えてあるし、おばあちゃんにも伝えているんだけど……先におばあちゃんと話したら?』
「あ、はい」
由莉さんの向かいに座って……あ、そうだ。
「ことちゃん、僕の隣に座って」
『うん』
『江梨、これ面白くなるのか?』
『バカなこと言わないの』
多分、昇さんというのは……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ご訪問ありがとうございます。
“芳幸くん”呼び:
鐘治さん、江梨さん(琴菜ちゃんのパパ、ママ)
“芳幸さん”呼び:
颯さん(琴菜ちゃんのお兄ちゃん)
勝旦さん、千緋呂さん(江梨さんのお父さん、お母さん、琴菜ちゃんのおじいちゃん、おばあちゃん)
本日分の近況ノートに書いていますが、昔、人違いでえらく歓迎されたことがあります(ステマ?)。
後半部分は、それを題材に作りました。
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