第26話 買い物デート

「鉄道で行くのが、みんなにとってメリットが多いと思うんだ」

『みんなにとってメリット? 琴菜ことなちゃんが電車で行きたいって言ったからじゃないの?』

『うん、私もそう思う』

「か、母さん、慈枝よしえ、何を根拠にそんなことを?」

『フフフ、お兄ちゃん尻に敷かれてそうだから』

『慈枝もそう思うよね?』

『まあまあ、慈枝、美都莉みどり。尻に敷かれてるぐらいでちょうどいい『隼人はやとさん、何が言いたいのかしら?』』


 ……喧嘩というか、二人でノリつっこみ? 結局仲がいいというか即興でもシンクロが切れないんだね。


 これ、ことちゃんと知り合う前はただウザいだけだったけど、今は、なんだろ、うらやましい?


 不思議……


『琴菜ちゃんの希望はメールで伝えられてたのよ。見抜いたような芝居をしてごめんなさいね』


「で、鉄道での移動でいい?」

『私は賛成。たまには“運転お疲れ様”から解放してあげなきゃね』

『俺も鉄道でいいぞ。あと、美都莉ありがとう。あのな……』


 この人、鉄ちゃんだった。そりゃ賛成するわな。


『異議なし。』

『はいはい隼人さん了解ね。芳幸よしゆき旅程はお任せするわ。それより明日服を買ってきなさい』


「え、この前買ったけど」

『4月下旬に冬物を着ていくつもり? 隣町に新しいショップができたそうだから行っておいで』

「うん。あの慈枝さん、付き合っ『明日は柴乃しのさんと映画だから一人で行ってきて』」


 被せるように断られたよ……


「そりゃないでしょう。えーと柴乃さんって、和真かずまの双子のねーちゃんの柴乃か? どういう縁があったんだ?」

『部活繋がりとでも言っておきましょうか。お兄ちゃん得意のマネキン買いすればいいんじゃない』


 いや、あれはあれで、自分に似合ってるかどうか不安があって……


◆◆◆◆◆◆side琴菜◆◆◆◆◆◆


『今まで私や美都莉さんが発案してばっかりだったけど、今回は芳幸よしゆきくんが自分で発案して、美都莉さんたちを説得してから私に説明したのよ。当然私の前にこーちゃんを口説いてたけど』


 ママと話してる時のよーくん、かっこよかった。


『そうか。俺たちのお説教が効いたかな?』

鐘治かねはるさん素敵だったよ』

江梨えりが協力してくれたおかげだよ』


♪♪♪


『フーン……こーちゃん新しくできた洋服屋さんに明日お買い物に行こう』

「今度着ていく服?」

『そう』

『母さん。俺も一緒に行っていいかな』

『いいけど邪魔はしないこと。あ、鐘治さんのも買ってくるわ』

『邪魔って?』


『じゃあ、鐘治さんはお風呂。はやてあんた中3でしょ、勉強にかかりなさい。こーちゃんは後片付けを手伝って』

『『「はーい」』』



 パパとお兄ちゃんはリビングから出て行った。


「こーちゃん、テーブルを拭いてくれる。ママは食器を洗うから」


 後片付けといっても、食洗器があるからラクチン。


『こーちゃん、明日洋服屋さんにね芳幸くんが洋服を買いに来るの』

「よーくんが?」

『そう、芳幸くんのお母さんからメールが入ったわ。多分またマネキン買いするって。そこでね、こーちゃんが芳幸くんの洋服を選んであげて』


 私がよーくんの服を選ぶ……


「うん、かっこいい服を選ぶ」


 よし、頑張るぞ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 あ、あそこによーくんがいる。


 私の買い物は終わっちゃった。

 試着した服をよーくんに見てもらいたかったんだけど……


「よーくん!」


『あ、ことちゃんこんにちは。江梨さん、颯さんもこんにちは、お買い物ですか?』

『私たちの買い物は終わったのよ』

『じゃあ、もう帰られるんですか?』

『私と颯はね。』

『え?』

『服を買うんでしょ。こーちゃんをアドバイザーとして残していくから買い物が終わったら送って来て』

『アドバイザー……ことちゃんいつも可愛い服着てるから頼りになりますが、いいんですか?』


 よーくん、私に頼ってくれるんだ。うれしい。


『颯、帰るわよ。じゃあ芳幸くん、こーちゃんのことよろしくね』

『邪魔するなってこういうことだったんだ。えーと、芳幸さんまた後程』

『はい、江梨さん、颯さん、後程です』


 いよいよ私がよーくんの服を選ぶんだ……ママがパパの服を選んでるみたいにすればいいのかな。

 

 ヨシ!


「じゃあよーくん、一緒に選んで試着したのを見てあげるよ」

『うん、頼むよ』

「どんな服を買おうと思ってるの?」

『4月の終わりで暑くなると思うから、薄手のジャケットかパーカー、5分袖ぐらいのTシャツ、下は黒のスキニーということで考えてるんだけど、いっぱいあって目移りしてるんだ』


「これなんか似合うんじゃない……あ、こっちにもあるよ……こんなのはどう?」

『えっと、そのコラボは遠慮したいなけど……こっちはいいね』


「どう、よーくん試着できた?」

『こ、ことちゃん。試着室に頭を突っ込まないで』

「ママいつもやってるよ? うん、もうちょっとかな。今度はこれ着てみて」

『こ、これ?』



『お会計すんだよ。ことちゃんありがとうね』

「ねえ、よーくん、ジュース飲んでこ」

『うん、飲んでいくか』



 私たちは、私たちはジュースバーでジュースを買ってベンチで飲むことにした。


 このお店、ネモちゃんがおいしいっていってたっけ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ご訪問ありがとうございます。


 時代設定はSNSがまだイマイチ一般化してない頃ですのでメールです。いまなら、“チーム親”とかグループが作られるんでは、と思います。

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