第25話 計画

 先週はスイミングスクールの定休日だったので、一週空いた。

 その間、両方の家族で行楽に行く計画を練る。これが、“考えていることもあるから楽しみにしてて”である。


 ことちゃんをあまり待たせるわけにいかないから、早く案を作らなきゃ



 時期は、4月中旬~下旬。

 ことちゃんの誕生日が4月30日。

 “菜の花は、可愛いから好き”


 うん。花だな。


 向島百花園……あしかがフラワーパーク……市貝町芝桜公園……国営ひたち海浜公園……


 国営ひたち海浜公園は……菜の花あるし、ネモフィラがすごいっていうことだ。


 アクセスは、常磐線じょうばんせん勝田駅かつたえきからバス又はひたちなか海浜鉄道かいひんてつどう湊線みなとせんの終点、阿字ヶ浦駅あじがうらえきからバスか。

 湊線の那珂湊駅なかみなとえきから徒歩10分で “那珂湊おさかな市場”……観光市場だね、5歳にとっては結構な距離かな?時間的に厳しいかも。


 アクアワールド大洗おおあらいは、日帰りで廻るのは厳しそう。残念。


 よし、国営ひたち海浜公園にしよう。旅程を組んで……

 喜んでくれたらいいな。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「こんにちは、ことちゃん、江梨えりさん」

『よーくんこんにちは』

芳幸よしゆきくんこんにちは』



 プールに向かう、ことちゃんと、ヒマを見送って、プールが見渡せるギャラリーから手を振った後、いつもの通りキッズコーナーに戻ると、またまた、ももちゃんが遊びに来た。


 うーん……そうだ、桃ちゃんをあきらに紹介して、晶にそろそろ“お兄ちゃん”に目覚めてもらおう。


「晶、おいで」

『芳にぃ、なに?』


 晶のほうが桃ちゃんより背が高いね。晶め、桃ちゃんを少しは意識しているみたい。ヨシ!


「桃ちゃん、この子は晶、桃ちゃんより1つ年上かな。晶、この子は桃ちゃん。晶はお兄ちゃんだから、良く面倒を見てやるんだぞ」

『うん、わかった。桃ちゃん。いっしょに遊ぼ』

『うん』


 よし、桃ちゃんうれしそうだね。

 これで、ことちゃんを裏切らないで済むし、晶もお兄ちゃんに目覚めてくれるだろう。




「ことちゃん。お花好きなんだよね?」

『うん。大好き』

「僕もお花は好きだよ」

「ことちゃんは、どの花が好き?」

『チューリップが好き』

「うん」

『私の名前の菜の花も好き』

「そうだったね」


 ヨシ!


「あのね。お花がいっぱいの公園があって、そこにみんなで行きたいと思ってるんだけど」

『チューリップもあるの?』

「チューリップもあるし、菜の花もあるよ。他にはネモフィラって青い花があるんだって」

『行きたい!』

「じゃあ、ママと相談するから、ママを呼んできて」

『ママ―』


 成功だね。ナンパに成功した時ってこんな気持ちになるのかな。したことないけど。


『なあに芳幸よしゆきくん。こーちゃんをデートに誘ってるの?』

「はい。デートというより、両方の家族で行楽です」


『はい、じゃあ説明して』

「テーマは、お花とことちゃんの誕生日ということで、茨城県の国営ひたち海浜公園です」

『どんな花があるの?』

「4月下旬だと、菜の花、チューリップ、ネモフィラです。クリスマスローズはぎりぎり無理みたいです」

『ネモフィラって、青い花でしょ。よく観光ガイドでいっぱい咲いてるのを見かけるわね』

「写真部に入っていた慈枝よしえは、“たぶん絶景”と興味津々でした。ということで、我が家は全員賛成です」

『ママ、私行きたい。その公園には私の名前の菜の花もあるんだって』

「近隣には“那珂湊おさかな市場”って観光市場がありますが、時間的に厳しいかもしれません」


『我が家は、あしかがフラワーパークには行ったことがあるけど、国営ひたち海浜公園は行ったことがないから賛成ね。こーちゃんは聞くまでもないと。あとは鐘治かねはるさんとはやてね』


 よかった、被らなくて。


 江梨さんは、たぶん鐘治さんにメールを送った。

 意外と短文みたい。いいな、こういうの。


「菜の花の花言葉は“快活”とか“明るさ”だそうですね。ことちゃんによく似合っている感じです」

『花言葉は意識したことが無いけど、そう。そんな花言葉が』


♪♪♪


『鐘治さんも颯も賛成だって』

「じゃあ決まりですね。ことちゃん、行けるよ」

『やった!』

『こーちゃん。よかったね』

『よーくん、一緒にお散歩しよ』

「うん」


「日程ですが、4月下旬だと我が家というか父母は4月26日しか空いてないんです。選択肢がなくて申し訳ないです」

『うちもそんなものよ。天下のGWなのにね』

「じゃあ、すいませんが日程は4月26日の日帰りということで、メール入れておきます」

『こっちも入れましょう。そんなに遠くないからせわしない行楽にはならないでしょ』


♪♪♪


「OKですね」

『こっちもOK』


「次は、交通手段ですね。それぞれの車でっていうところなんですが、渋滞とか、駐車場とか、帰りの運転とかに難があると思うんですよ」


 大変そうなんだよな。父さん、家族で出かけると。


『確かにね』


『あのね、私、よーくんと電車に乗っていきたい』

「え?」

『この前、よーくんと一緒に電車に乗って楽しかった。でもちょっとだけだったから、もっと、いっぱい電車に乗りたい』


 この前送ってったときのことか?

 普通列車で数分間だったけど、そんなに楽しかったのかな?


『電車はいいアイディアかもしれないわ。結構自由がきくし。高速道路より退屈しないかも』


「えーと、鉄道だと、最寄りのJRの駅は、常磐線勝田駅。ここからバスが出てますが、勝田駅で乗り換えるひたちなか海浜鉄道湊線の終点阿字ヶ浦駅からバスでっていうアクセスもあります」

「その他の観光スポットは、“那珂湊おさかな市場”という観光市場があります。湊線の途中の那珂湊駅から徒歩10分、これは大人の足でっていうことなんでしょうね。だから、ことちゃんの体力的にも厳しいかもしれません」

『よーくんなんでも知ってるんだ。すごい』

『芳幸くんは鉄ちゃんなの?』

「先週プールお休みだったんで、いろいろ調べたんですよ。旅程のプランは作って、メールしますよ」


『芳幸くん。自信と自覚を取り戻せたみたいね』


 ありがとうございます。江梨さんのおかげで、迷いがなくなりました。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ご訪問ありがとうございます。


 茨城県へお越しの際は、国営ひたち海浜公園、阿字ヶ浦海水浴場、那珂湊おさかな市場、アクアワールド大洗をよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る