第15話 Happy lunch
『『『『「いただきます!」』』』』
メニューは、カレーライス、その箸休め、ポテトサラダそしてアイスティー。
ことちゃんが食べて欲しそうにしているから、まず、ポテトサラダ。
これはおいしい。ホクホクしてて、マッシュと具の味が良くバランスしてる。
ことちゃんはと見ると、うれしそうな顔になってる。
『なに、テレパシーを送りあってるの?』
「テレパシーってことはないですけど、このポテトサラダおいしいです。これ、ことちゃんが作ったんですよね」
『気に入ってくれた?』
「うん、とってもおいしいよ」
『よーくんがおいしいって言ってくれてうれしい』
『良かったわね、こーちゃん。私のカレーも食べて』
「とてもおいしいです。箸休めのスライスしたリンゴを炒めたものも甘酸っぱくて良く合います」
『気に入ってくれたかね。それ、あんまり見たことがない箸休めだろ?』
「はい」
『
『まあ、鐘治さんったら。これは、マンガかなんかで見て開発したのよ』
鐘治さんと江梨さん、仲いいじゃないですか。ちょっとほほえましいですね。
『『いっぱい食べて!』』
『母さん。これいつものカレーよりおいしいよ』
『
あれ、ことちゃんがびっくりしてる。なぜ??
『
「ウチの両親は休日に仕事に出ることが多く、そのような場合、僕と妹で家事を回さなければならないんです。僕は、料理と洗濯が担当で、妹が掃除の担当です」
『料理と洗濯……大したものだよ』
軟化しすぎです鐘治さん。
『芳幸さん、妹さんはいくつ?』
「
『そのくらいの年だと、洗濯は別、とか?』
「よく聞く話ですが、別に洗濯してくれと言われたことはないです。一度、別々でなくてよいのかと質問したことがありますけど、それには及ばず、という変な言葉遣いの回答がありました」
ことちゃんが会話についていけないって顔をしている。そりゃそーだ。
『よーくん?』
「えーとね、女の子の中には、中学生ぐらいになると、自分の服とほかの人の服と一緒に洗濯してほしくないって言う子がいるんだ。特にパンツとか」
『ふーん』
『こーちゃん。こーちゃんはパパと『鐘治さん。その質問は心に秘めておきましょう』』
江梨さん。それは、ある意味とどめを刺しているようなものです。
『とはいっても、生地の仕様によって洗濯の仕方を変えないといけませんので、どの道複数回洗濯しなければならないこともあってそんなに手間は変わりません』
『江梨、そうなのか?』
『そうよ。だから我が家の洗濯は私に任せて。“家事での自己実現”が私の目指すところだから!』
これ、僕にとっては、“地平線の向こう”のことで、理解のとっかかりすら掴めないんだけど、これも夫婦の形のひとつなんだろうな。
颯さんは僕と同じなのか、自身の理解が正しいのかどうかわからない、という顔をしている。
ことちゃんもきょとんとしている。
『じゃあ、デザートを出しましょうか。こーちゃんには、芳幸くんが持ってきたカップケーキ、他のみんなはケーキね』
江梨さん、鐘治さんもニヤニヤしてる……なぜ?
『このカップケーキ、可愛いし、おいしい!』
『芳幸さん。これ、いいケーキだね』
『確かにうまいな』
「我が家の界隈では有名なBelle Equipe(ベルエキップ)っていうケーキ屋さんのケーキです。喫茶スペースもありますので、ちょっと休憩という用途にも使えます」
「我が家では、何かにつけBelle Equipeのケーキを買います。地元のお店ですので盛り立ててあげたい気持ちがありますし、何よりおいしいので」
『地元のお店を盛り立てるという考え方は良いことだ。店名はフランス語の“よき友”ではなかったか』
「はい。いい言葉ですね」
『ウチもあっち方面に行ったとき、利用してみるか』
「それは……店主になりかわって、お礼を申し上げます」
『『『『ハハハ』』』』
『ところで、芳幸くん。ホワイトデーにカップケーキを贈る意味って知ってる?』
「え、何が意味があるんですか? その、慈枝の薦めるままに選んだんです」
『まあ、検索してみて。それはそれはすごい意味があるのよ』
慈枝め!
『ママ?』
『こーちゃんには後で教えてあげる』
「颯さん?」
『すいません、知らないです』
『ここは、鐘治さんが一歩リードね』
『まあーそういうことだ。芳幸くん、頑張ってくれ』
何を?
というか鐘治さん、軟化どころか溶けてるんじゃないんですか?
食事、デザートが終わり、再びことちゃんの部屋で、ベッドに並んで腰かける。
『……あのね……』
「どうした?」
『夢を見たの』
「うん」
『よーくんが、私の作ったカレーをおいしいって食べてるの』
「うん?」
『でも、夢で作ったカレーはママと同じレシピだったの』
『ママのカレーのほうがおいしかったかな……』
しまった。あんまりおいしいって言っちゃいけなかったんだ。
ことちゃんが泣きそうになってる。
…
……
ヨシ!
拳ひとつぶん開けてた間隔を詰める。
もちろんことちゃんの左半身と僕の右腕を触れさせて、手を握る。
「ことちゃんが作ったポテトサラダ、とってもおいしかったよ」
「だから、きっとおいしい料理を作れるようになるよ」
『……』
「待ってる」
ことちゃんの顔にゆっくり笑顔がもどってきた。よかった。
『ありがとう。私、頑張る』
『もたれてもいい?』
ことちゃんの質量とほんのりした匂いが心地いい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ご訪問ありがとうございます。
"質量"は"重さ"と思っていただいても構わないのですが、"重さ"と表現すると回収回で少々問題が……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます