第8話 新たなステージへ◆side琴菜◆

『――ちゃん』


 “可愛いくて、優しい所……”、“吸い込まれるような笑顔”

 よーくん、私のことを“可愛い”って言った。


『こーちゃん』


 私は、よーくんが好き。


琴菜ことな


「えっと、なに、ママ?」

芳幸よしゆきくんのことを考えてたでしょ』

「うん」

『芳幸くんのことが好き?』

「……うん」

『芳幸くんに好きになってほしい?』


 よーくんに、“好きだ”と言われるところを想像したら、顔が熱くなっちゃった。


『顔が赤くなってるわね。好きになってもらうにはどうしたらいいと思う?』


 えーと……そうだ、ももちゃんにおやつをあげたら、とってもよろこんだ。だから、よーくんにもおやつをあげると好きになってくれる……かな?


「よーくんにおやつをあげる」

『うん、それは好きになってもらうための一つの方法ね。ママは中学校の時、料理の実習の時間に作ったサンドイッチをパパにあげたことがあるわ』


 おままごとで、Alyssa(アリッサ)が健太郎けんたろうくんの胃袋を掴むんだっておもちゃの目玉焼きをあげてた……ママはサンドイッチでパパの胃袋を掴んだのかな?


「やっぱり、手作りがいいのかな?」

『もちろんそうよ。チョコはどう? 溶かして固めるだけだから簡単よ』


 チョコは、パパやお兄ちゃんにあげたことがある……


「もっと別なもの」

『フフ、白玉だんごなんてどう? これも簡単よ』

「ママの作った白玉だんご、つるんとしてておいしい……うん、白玉だんごにする。作りかた教えて」

『わかったわ。ミカンの缶詰があるから、これを使ってフルーツ白玉にしましょう』


 いつも買い物をしているスーパーの看板が見える。


『今日は、ごちそうにしましょう。スーパーによって行きましょ』


 よーくんと仲良しになったことを、パパやお兄ちゃんに言うのかな。


「……パパやお兄ちゃんに言うの?」

『うん。アドレスを交換したしね』

「私、手伝う」



『パパ、お兄ちゃん。ご飯できたよ』


『お、おいしそう。これ、なんて料理?』

「フーカデンビーフて言うんだって」

『あれ、こーちゃん。ママの手伝いしてるんだ。パパはうれしいよ』


『『『「いただきます」』』』


『母さん、こーちゃん、これおいしいよ』

「いっぱい食べて」

『おいしいでしょ。これは、はやてやこーちゃんから見たひいおばあちゃんに教えてもらったのよ」



『さあ、ここで皆さんに発表です。ほら、こーちゃん』


「私、スイミングスクールで好きな人ができたの」


 また、顔が熱くなってきた。


『こーちゃんもそんなお年頃かーどんな男だ?』

『そんな、こーちゃんが……俺じゃない男のことを……』


 やっぱりパパは落ち込んだ。


鐘治かねはるさん、わかりやすく落ち込まない! 女の子はいずれ“俺じゃない”男を連れてくるのよ。自分が連れてこられたの忘れたの?』

『……忘れてないけど……俺が抱っこして歌うたって寝かしつけたこーちゃんが……』

『もー、混乱してる鐘治さんはほっとくとして……名前は、武川たけかわ 芳幸よしゆきくん。高校の2年生』

『母さん。その人彼女がいたりしない?』

「彼女はいないと言ってた……って、颯、こーちゃんの目を甘く見ないほうがいいわよ。私も中々誠実そうな人だと感じたわ」

『ゴメンゴメン、我が家の女性陣二人が見極めたんなら確かだろう。ふーん俺より3歳上か。どっちがお兄ちゃんなんだろ?』

『何言ってんだ颯! 騙されてるに決まってるのに!』


 え、お兄ちゃんやパパは何を言ってるの?


「ママ?」

『颯が言ってるのは、芳幸くんは颯より3つ年上のお兄ちゃんよね。でも、こーちゃんが芳幸くんと結婚したら、芳幸くんは颯の弟になるってこと。パパの言ってることは気にしなくていいわ』


 結婚!


『許さんぞ!!』

『鐘治さん落ち着いて。颯も無意味に鐘治さんを刺激しない』

『ハハハ、ゴメン。俺は、こーちゃんが気に入ったんなら賛成かなぁ。ちょっと切ないけど……』


『ほら、こーちゃん。芳幸くんのどんなところが気に入ったんだっけ?』

「えーと、よーくんは『よーくん? そんな呼び方許さんぞ!』」

『鐘治さん!! こーちゃん大丈夫よ、続けて』


 かっこいいよーくん、優しいよーくん……私頑張る!


「よーくんは、かっこよくって、優しくて、私のことを気遣ってくれるの。私のことは可愛くて、優しくて、笑顔になるとさらに可愛くなるって言ってくれるから」


『おお、芳幸さんかっけー。俺は、芳幸さんに会ってみたくなったな。そういえば、こーちゃん、自分の呼び方が“私”に変わってる……芳幸さんの存在は大きいな。俺たちも“こーちゃん”から“琴菜”に変えたほうがいいのか?』

『まあ、おいおいね』


 お兄ちゃんは、味方になってくれるんだ。うれしい。


『俺は、こーちゃんが……』

『なぁに、鐘治さん!?』

『いえ……』


 パパが落ち込んだまま……ちょっとかわいそうかな?


『それで、今後、芳幸くんと色々連絡をとることがあるかもしれないから、アドレスを交換しました』

江梨えりまで!』

『鐘治さんは何を邪推しているのかしら。鐘治さんや颯に同報したり、相談したくなることもあると思うから、転送設定しておくからね』


『ん-と、今後、芳幸くんをウチに招待することもあるかもしれないじゃん。予定を合わせたりするのにアドレスの交換は良いことじゃないかな。こーちゃん、みんなこーちゃんを見守ってるからね。もちろんお父さんも』

『何、我が家の敷居は跨がせ『鐘治さん!!!』』

『……はい』


「みんなありがとう」

『冷めるといけないから、ご飯食べちゃいましょ』


『江梨~』

『はいはい、ビールね。ほかのこともわかってるからね』


 よーくんのこと、みんなが歓迎してくれたみたいで良かった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ご訪問ありがとうございます。

 Alyssa Percival Hill(アリッサ パーシヴァル ヒル)こーちゃんの同級生(イギリス人)




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