第32話やるべきことは照れること

「あ! ご、ごめんなさい! 助けてくれた人に私、とんでもないことを――!」




 露骨に慌てた東山みなみから視線を逸し、界人はボリボリと頭を掻いた。


 ケダモノ――面と向かってそんなことを言われて、なんだか妙に顔が熱くなる。




「い、いやぁまぁ、それほどでも……。う、うん……流石に東山さんみたいな小さくて可愛い人にケダモノだなんて言われると照れるなぁ……えへへ……」




 えへへ。今どき小学生でもそんな笑い方はしないだろう。


 どう見ても照れている様子の界人に、えっ、と、東山みなみと榛原アリスが同時に声を上げた。




「え? え? 界人君、もしかして照れてんの……?」

「そ、そりゃ、いくら俺でも照れるぐらいするさ。だってケダモノって言われたんだぜ? 照れるよこんなん……」

「ちなみに――どういう理由で照れるの?」

「えっ? ケダモノって要するに、立派な人、って意味だよな?」




 界人の言葉に、東山みなみが珍妙な表情を浮かべた。




「だって山にいるケダモノは人間みたいに陰口も言わないし、嘘もつかないし、無意味に殺し合わないだろ? クマなんて地上に敵なんかいないのに、小さな鈴の音ひとつで逃げていくんだぜ。獣はそれぐらい争いが嫌いなんだよ。人間よりよっぽど理性的で立派なんだ。俺もそういう人だって言ってくれたんだよな、東山さんは?」




 その言葉に、東山みなみの目が丸くなった。


 その反応に、界人も何かを察した。




「え、え、え、もしかして違うの……!?」

「……ほらね東山さん。界人君ってこういう人なの。ちょっとズレてるというか、価値観が人と違うんだよね」

「ほ、本当、みたいですね……。獣の方が人間より理性的……確かにそうかも知れない……!」

「うーん、哲学的だなぁ、界人君の価値観は。確かに獣の方が人間より理性的で立派かもしれないなぁ……」




 東山みなみと榛原アリスは何事かに感心したようにそう言った。




「ち、ちなみに世間一般的にケダモノってどんな意味なんだ!?」

「あー、いいよいいよ、そっちの意味は知らなくて。界人君は知らなくていいと思う。ね、東山さん」

「そうですね。せっかくこんなにいい話なのに上書きしたら勿体ない気がします。今のは忘れてください、八代君」

「えぇ――!? なんか二人とも俺を子どもみたいに扱ってない!? なんかものすごく大人にあしらわれた気分なんだけど!」

「あしらわないと勿体ないよ。……ほら、そろそろ肉も煮えたんじゃない? 遅めの朝食、ね?」




 これまた界人をあしらうような一言とともに、榛原アリスはニヤニヤと笑った。


 なんかやっぱり、女の子ってわけがわからないなぁ……。


 界人は座りの悪い気持ちとともに、鍋代わりのミルク缶を火から下ろした。



◆◆◆



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