第15話やるべきことは釈明

「ごっ、ごめんな榛原さん。俺、なんかまた間違ったか? 間違ったんだよな?」

「間違ったか、じゃないでしょ! このセクハラ野生児唐変木!」

「せっ、セクハラ野生児唐変木……!? 語呂悪ッ……!」

「語呂なんか気にする甲斐性ないでしょ界人君には!! それより何!? 朝っぱらから人の口の中覗いておいていいメスじゃないとか何!? ソレ一体どんな尊厳の踏みにじり方なの!? 物凄く不愉快だし物凄く怒ってるんだけど!! 間違ってるとか正しいとか以前の問題でしょうが!!」

「あ、ご、ごめん、そういうことじゃないんだよ! 俺はただ、榛原さんを食べたら美味しいかどうかが知りたくて……!」

「えっ」

「えっ」

「……私のこと、食べるつもりだったの? マジで? 物理的に、の意味だよね?」

「あ、いや、そういうことじゃ……!」

「……これは驚いた。私、クラスメイトじゃなくて非常食扱いだったのかよ……」




 ひくっ、と榛原アリスの頬が奇妙に痙攣した。

 異様な眼光に界人が砂浜に正座させられたまま硬直すると、榛原アリスがそこらに落ちていた流木を拾い上げ、右手で握って左手にトントンと叩きつけた。




「そうかぁ……なら、殺られる前に殺っとこうか――ここなら誰も見てないよね?」

「おっ、落ち着いてくれ榛原さん! 榛原さんを食べる気なんかない! 本当にない! 違うんだよ! 榛原さんが肉だったら、の話なんだよ! 俺ってそれ以外の価値基準知らないからさ!」

「それにしたっておかしいでしょうが! クラスメイトの女の子の評価基準が食ったら美味いか不味いかなんておかしいにも程があるわ!」




 声を張り上げながら、榛原アリスは自分の身体を手で示した。




「第一ホラ! 私ってグラビアクイーンって呼ばれてんだよ!? 色んな意味で食っちまったらこれ以上なく美味そうでしょうが! こんな豊満なおっぱいしてんだよ!? めっちゃ脂が乗ってて美味そうでしょうが!」

「え? あ……うん、そうだな。胸の部分は確かに――」

「えっ」

「うーん、脂肪分が多そうだよね、榛原さんの胸って。そうだな、一回サラッと茹でて余分な脂を流してから味噌仕立てで煮たらどんなもんか……」

「……やっぱり食べる気だったんだ。やっぱり、ブチ殺――!」

「え!? うっ、うわああああ、ごめんごめん! ついだ、つい!! 本当に食べようなんて思ってない! 思ってないから! 勘弁してくれ!!」




 界人は今までの人生で一回もやったことがない土下座で詫びを入れると、ふーっ、ふーっ……! という榛原アリスの呼吸音が徐々に落ち着いてきた。




「……まぁ、界人君が嘘をつけるぐらい都会的に進化してるとも思えないから、多分嘘じゃないと思う。許す」

「あ、ありがとうございます……!」

「それと、私がいいメスじゃないという発言については?」

「取り消します……!」

「……食ったら美味そうって思うの?」

「思います、あ、いや、思いません……! あ、どっちで答えたらいいんだ……!?」

「美味そうでしょうがッ!!」

「はい! その通りです! 榛原さんは美味しそうです! 是非とも食っちまいたいです!!」




 界人が大声で言うと、榛原アリスがようやく落ち着いた。

 落ち着いたと見えるのに、榛原アリスの顔はまだどこか赤く見えた。




「……くっ、なんか、なんかエロいなぁ。食っちまいたいとか面と向かって女の子に言うセリフじゃなくない……?」

「どっ、どう言えばいいんだよ……! わかんないよ俺……!」

「あーもう、いいよ、私には許す。私以外の女子に食っちまいたいとか言っちゃダメね? ……ハァ、もう、朝から怒鳴ったらお腹減ったよ」

「う、うん……それじゃあ今日も食料調達に行くか」

「一応聞いとくけど、食料って私のことじゃないよね?」

「も、もう勘弁してくれよ……!」




 界人はほとほと困ってしまい、榛原アリスから顔を背けた。


 背けた先で――何者かの視線を感じた。

 はっ、と目を凝らした瞬間、そこにいた何者かがびくっと震えたのがわかった。




「あ――!」




 界人が声を発した瞬間、影は森の奥へと走り去ってしまった。鬱蒼と木が生い茂る、如何にも手つかずの原生林と言える森である。




「え!? な、何よ界人君!? 突然何の声!?」

「今そこに誰かいた――! 走って逃げたぞ! 俺たち以外にも生存者がいたんだ!」




 生存者。その一言に、榛原アリスが血相を変えた。




「ほっ、本当!?」

「でもおかしいぞ、なんで逃げたんだ!? 榛原さん、追いかけるぞ!」

「え!? あ、ちょ、待って――!」




 返答を待たずに森の奥へと駆け出した界人に、榛原アリスもばたばたと駆け出した。





◆◆◆




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