第19話 告白
あれから、二人は本当に、百日触れ合わずに過ごしてみることにした。しかし、どうしても、年若い二人。何度クロキはトキの部屋を訪れようと思ったかわからない。トキも、初めてクロキの部屋を大胆にも訪ねてみようか、と考えたり。
その度に事情を全ての使用人に話しているので、ぐっと耐える。都の方では「老人たち」が一度に全て消え失せてしまったので混乱している。
いつか時が来たら自分も輪に入り宥めたいとクロキが言い、トキも同行したいと申し出ていた。
百日が過ぎた時、あの黒い馬車で少しだけ屋敷を出てみようと誘われた。久しぶりのお出かけなので針子が仕立ててくれた新しい服に袖を通したトキ。
クロキは白い服も気に入ったようで上は白いシャツだが、下は黒い乗馬用の服だった。
御者に頼んでほんの少しだけの距離を行ってもらって、楽しい振動に揺られながらトキが喜んでいると、クロキがなにかを我慢したように、いつもより顔色がよく見えるような表情をしている。
馬車が緩く止まる。
「トキ」
意を決して言う。
「はじめてあった時は、とにかく、トキのことを抱きたいと思った」
いきなりの会話にトキは御者のことを心配したが、
「御者は、しばらく帰ってこない」
根回しが、ここでも済んでいる。
「どう思った」
「あ、わたしも、仮面を取ったクロキ様を見て、生まれて初めて、からだが、その、」
「からだが」
「反応してしまって、このひとと、一線越えるのかと思ったりすると、からだがほてってしまって。熱くなりました……クロキさまを見てから」
「!、そうか!そうか、」
旦那様が嬉しそうだ。
「この百日、つらかったです」
「待ってくれ、そんな事を言われたら、自尊心が効かなくなる」
「御者はいつ頃戻ってくるんですか」
「俺が扉を開けて合図をしたらだ」
「ところで、その、この馬車、でしたね、装飾が」
「あっ」
まだ体が通じ合う前に、催淫剤にあてられたクロキが、トキに迫り……。
「トキ、愛おしい、好きだ。何度でも抱きたい、何度でも、」
「私も、恥ずかしかったけれど、クロキ様の指も手も何もかも気持ちよくて、おかしくなりそうで、好きです。身体に触れられる前から、感じてしまうほど、クロキ様じゃなきゃだめなんです。好きなんです。はしたなくてごめんなさい。どうか、嫌いにならないで」
クロキがトキに覆い被さる。
「今日の衣装は、お針子が一生懸命縫ってくれたんです」
「そうか、なら、大切に脱がさねばな、我が妻よ。これは、
運命の恋だ
」
昼間の明かりの中、日光を反射する乳房とそれを口に含むクロキ、ゆっくりボタンを外していって何度も感じた細い腰のくびれが出てくる。まずは、唇にキスをしなければ。豊かな胸も俺のものだが、この熟れた果実のような唇は、おれが貪るものだ。
「旦那様、馬車の中でこんな、いけません、汚しちゃう!」
「存分に汚せ、なにも最後までやろうとは思わない。続きは夜、俺の部屋でだ。でもまずは、」
思いが通じ合った新妻の嬌声を森の中で響かせる。
「やだっ!だめですよっ!だんなさまっ、そんな、んっ、聞かれちゃう、恥ずかしい!」
「俺の姿に一目惚れして身体を熱くしたんだ。まだまだ、感じられるだろう?」
「!、そんな、ここで、続きは、クロキ様のお部屋でと……」
待てない。
「何回目かな、お前とこうして、繋がるのは!」
愛しい人のものが自分のなかに何度も慣れない場所にずぶずぶと進んで、
「百日ぶりなのに」
トキは涙目にレースの手袋をした手を顔にやり、表情を窺わせようとしない。
「なら、いやか?」
「ああっ、何度でも、突いて、ください……」
トキが観念し、夢のような刺激が腰に何度も突かれて、すぐにクロキが、止まり、一息吐く。
1時間ほど黒馬車で森林浴に出かけ、二人は身なりを整える。屋敷に帰ってからの入浴。
晩餐そして、みんなが寝静まった時間に、トキは、生まれて初めて男の人の部屋を訪ねる。
本当にいいんだろうか、あんなに結婚と身体目当てかどうかで悩んで、告白されればまた身体ごと引き寄せられて。それでも、私達は、あのエルフの種族が命懸けで一通だけ取り寄せてくれた良縁。こうなることは必然だったのか。
黒い大きな扉をノックする。
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