第11話 仙女の香りは桃の香り
気づけばトキにキスをしていた。最初は手首に、腕に。跨ってからは唇に。トキは身体を熱くしながらクロキの愛に耐えている。
(これで嫌われたくはない)
「トキ……」
時折り名前を呼んでやると、
ちいさく、はい、と返事をする。それがたまらなく愛おしい。
トキの嫌がる事はしたく無い。
一方、トキはあの初めてクロキと対面した時のような欲情を感じ始めていた。いや、こんなに触られたら、また。どうしたらいいのかわからない。この気持ちは、クロキ様のことが好きという気持ちだろうけれど、欲情しているだなんて、思われたくない。
きらわれたくない。
身体がお互い熱を持ち、服が邪魔になる。
クロキはトキの大きく開いた胸の部分をずり下げる。
「やっ」
月明かりにあまりにも形の良い胸が流れるように服の抑圧から解き放たれる。そこの先にもクロキはキスを忘れない。
トキは泣きながら
「クロキ様も、脱いでください」と懇願する。
クロキが動揺する。熱い身体に確かにマントとその下の婚礼衣装は邪魔だった。
「先に言っておくが気味が悪いぞ」
クロキが金のブローチを外し、マントを剥いで、その間、トキはずっと緊張している。
やがてクロキは真っ白な、真っ新な裸体になってしまった。確かに肋骨が浮いているが、醜くはない。
「触ってもいいですか?」
「……いい」
触れてみる。熱かった。自分の手が緊張で冷たいのかもしれない。
ああぁ、という声と共に、クロキは身体を捻りたそうな、動きを見せる。脇腹を撫でれば撫でるほど、クロキは反応するらしい。
クロキがキスをしてきて、少しだけ、舌をトキの口に入れ、トキが不思議に思っていると、今度はお返しとばかりに熱い手のひらで全身を撫でられ!ビクビクと魚のように反応する。感覚が敏感になっていて、そして、あの場所が……。
「トキ、声の出し方がわかるか?聞きたい」
「恥ずかしくて声もでません」
「これから止まらなくさせるよ」
クロキは腰に引っかかっていたドレスをトキから脱がし、恥ずかしがるトキの下着に顔を埋める。
「いやあっあっ」
脚を開いたトキはクロキの頭を押さえて、しかしその力強さに頭は少しも動かない。
クロキは体を離してから
「髪からは椿の香りがするが、ここからは桃の香りがする。仙女だからか」
トキは、気づかれたと思った。
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