第3話 封筒

「単刀直入にいう。俺は、狗だ。痩せっぽちの、顔色の悪い男である。どこぞの女子供も男ですら、気味悪がるだろうガーゴイルの魔除けと歴史ある石像が埋め込まれた、一年中を雨風に打たれているような暗黒の王城に住んでいる。そして数人の使用人がいる。他は結婚すればおいおい分かるだろうから書きたくないが、この結婚がうまく行くように願うのが、勤めというもの。好きな食べ物は毒のないもの」


「はじめてお手紙差し上げます。トキと申します。

こんなことを言ってはなんですが、皆好きに書けば良いと言い書き方を教えてくれません。それなのでわたしの家のことから。我が家は薬師の家系です。

ですが、わたしには危険な植物しか教えてくれません。理由は効能のある薬草が多すぎるかららしいです。それと、憧れているものはアルテミス様です。察していただけると助かります。この結婚自体は嬉しく思っておりますがどうか思いが通じますように」


果たして決められた時間。水の国の生む水の波紋が、二人の特別な黒と金の封筒と、桃色に花の絵の封筒が回収され、交互に届けられた……。

二人の想いを封じ込めながら……。

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