第30話 領地へ帰ろう~後の事はご自由にどうぞ~


 そんなこんなでさくさくと竜騎士を斬り捨てていくと、やけくそになったのかバリアに突撃する奴がいた。


「ただでは死なん、せめて口封じぐらいはできねば無駄死になる!!」


 どうならダメージで動けないバルフェに向かって一人の竜騎士が特攻するつもりの模様。竜をバリアにぶつけて破り、自分は死なば諸共でバルフェに突っ込むという算段みたいだけど……冗談ではない!そいつには帰って色々吐いてもらわなければいけないのだ。

 即座に足から雷を放出し、特攻する騎士の正面に回り込む。


「やらせねぇよ、コレは俺の戦利品だっ!!」


 キックバックを上段から振り下ろせば、騎士ごと竜が真っ二つ。危ない危ない、折角の捕虜を殺されては困るなぁ。

 残っていた教会の竜騎士達が全員バラバラになって床に転がるまで時間はかからなかった……バラバラに吹っ飛んじまってる、ミンチよりひでえや。

 柄にもなくテンションが上がってはしゃいでしまったけれど、おかげで一人も逃さず殲滅できたのでヨシッ!

 キックバックは切れ味は物凄い反面、燃費の悪さで斬撃の瞬間だけ刃を回転させる等して魔力消費を軽くする工夫が必要だったが、クロエのおかげで斬り放題になったので思わずはしゃいでしまった。アクションゲームで無限に撃てるロケットランチャーを解放されてヒャッハーとゾンビを倒しまくるみたいなものだし、仕方ないね。


「ひとまず子供に見せられない有様になってるから死体は燃やしておくぜ」


 クロガネがビューッとと息で死体を灰にする。クロガネが斬った3人はまだ息があるようなので、こいつらは拿捕して連れ帰ろうかね、別に人質にするわけではないが教会の暗部をゲロさせたり情報を吐かせる奴は何人いてもいい。

 今度こそ静かになったしこれで打ち止めだろう。


 そうだ、まさおはどうしているかなとみていると、クレータ上にえぐれた石畳に倒れていた。自爆攻撃でも喰らった後みたいにボロ雑巾みたいになってる。や、ムチャしやがって……って感じ。生きてる、のかなぁ?


「うわーん、かみさまー」


 カーテンから出てきたミミィちゃんがててててっとまさおに駆け寄っていく。あっぶね、クロガネが灰にしておいてくれなきゃ幼女にグロ画像みせるところだった。子供のいる所では自重しよう、反省しなきゃな。


「クロエ、あの全裸も回復してやってくれないか?」


 クロエにそう声をかけたところでミミィちゃんが半べそをかきながら歌を歌いだした。手を上にあげてから振り下ろしながらおうたをうたっているので皆で動きをとめて見守る事にする。


「きょうじんっ!かみさ~ま~♪むてきっ!かみさ~ま~♪」


ミミィちゃんのおうたに合わせてまさおがピクッと動いた。……おっ、生まれたての小鹿みたいにガクガクと足腰が震えているけどまさおがゆっくりと立ち上がった。立った立ったまさおが立った!!


「さいきょうっ!かみさ~ま~♪ふじみ~っ!かみさま~♪」


 ミミィちゃんのおうたに反応して立ち上がったまさおは、ミミィちゃんと同じように手を上げ下げしながら調子を合わせている……んだけど、目は虚ろだし頭からはギャグ漫画みたいにピューッと血が噴き出てるのでどう見てもオーバーキルされてるんだよなぁ。

 おうたを歌い終えたミミィちゃんはまさおにとびついて喜んでいるが、当のまさおは笑顔だけど10割ぐらい死んでそうにみえる。目の焦点があってないし……。


「立ち上がられましたが、回復は必要ですか?」


「……た、多分?」


 自信は無かったがとりあえず回復をしてもらうと泣いて感謝していた。あぁ、やっぱりダメージはきちんと入っていたんだ。


 クロエは皆が回復したのを確認すると、分身体を引っ込めて来た時と同じように地脈経由で帰っていった。便利な能力だよねー。

 城も王都も酷い事になっているが、あとの事は生き残った家臣や衛兵なり近くの都市の人間がなんとかするだろう。という事にして捕虜達とまさおとミミィちゃんを連れて帰る事にする。

 帰りは人数が多すぎたので城にあった馬車を拝借し、ドラゴンに戻ったクロガネが馬車を引くという事で低空を長高速飛行するドラゴン馬車での帰りになった。晩御飯の時間までにはかえらなきゃいけないからな!!


 そうして帰る道の馬車の中では、ミミィちゃんがまさおに膝枕されて寝ている。あ、ちなみにいつまでも全裸でいられても困るので謁見の間にあった高そうな布を腰布みたいに巻き付けてもらっている。

 教会側の捕虜とリリアンは猿ぐつわと縛り上げて荷台の隅に転がしておいた。何かうーうー言ってるけど無視。そのうーうー言うのを辞めなさいって言ってるでしょー。



「それじゃ改めて、成り行きになっちまったけどまさおたちにはひとまず俺のいる流刑地に来てもらって、詳しい話はそこで聞かせてもらおうか」


「おー、助かる。今の時代で他に行き場ないからなぁ」


 俺の言葉に二つ返事で頷くまさお。ついでなので気になって要る事をまさおに聞いてみる。


「そういえばお前、躊躇なく竜騎士の群れに突っ込んでいったけどなんであんな真似したんだよ。フルボッコにされるのはわかってただろ?」


「いやぁ、俺バカだから身体張る事しかできねーから」


 俺の言葉にさもありなんと答えるまさお。そ、そうか……。お陰で助かったので素直に感謝しておこう。


「けどお前の能力があってもダメージ自体は入ってるみたいにみえたけど?」


「あぁ、それな。ダメージは入るんだけど死なないというか、イメージ的にはHPが1以下にならないだけだ、ずっとこらえるしてる感じ。けどオーバーキルされてる分のダメージは入ってる。死ぬ程痛いぞ」


 それは強力だけど不便というかなんというかな能力だなぁ。こらえるができてもきしかいせいができないのは……。というかまさお、攻撃能力0だよなぁ。まるでサンドバッグになるための能力みたいだ。


「そうだ、戦闘後にミミィちゃんのおうたに合わせて起き上がってただろ、あれもお前の能力か?それともミミィちゃんの魔法か何かか?」


「やせがまんだよ、やせがまん」


 やせがまんか~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!能力どころか魔法ですらなかった。


「ミミィの前の俺は強靭無敵最強のかみさまでいなければいけないんだぜ!」


 キリッ!とするまさお。あー、子供の夢を壊すような真似はできないよなぁ、わかるよ。偉いぞまさお。そう頷いていると、今度はまさおが聞き返してきた。


「それより少年、王城をあのまま後にして良かったのか?事後処理とか――――」


「あぁ、いいんだよ。どうせこの王国は滅亡する、タブンネ……多分ね。だから俺達がすることはない」


 まさおの言葉に応えながら俺はあくびをする。今日は慌ただしい一日だった。帰ったらゆっくり寝よう……王国は遠からず何らかの形で滅びるんだろうけど、それは俺には関係ない。後はご自由にどうぞ、なんだぜ。

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