第25話 偽聖女の取り巻きもきっちり潰すべし

 

「な、なんなのよその動き、私の杭が当たらないなんてなんなのよ!貴族たちを殺した時とは違う、慢心無しの本気なのに……!!」


 バルフェが俺を化け物でもみるかのような目でみながら叫んでいる。……まぁ、そうねぇ。何もわからないまま潰されて拷問されるのも可哀想だし、一息つくのも兼ねて少しだけ無駄口につきあってあげるとしようか。


「何回かみて理解したけど、アンタのその魔法は指定した場所に杭を生やすんだろ?発動までの時間が極端に短いから、お貴族様達みたいな一般人相手なら無双出来るだろうね。

 でも俺はアンタのいう本気の状態が相手だとしても、魔法の発動を確認してから回避できるくらい単純に速いのさ、素早いリューサンだからな!

 小足見てから昇竜余裕でした……っていってもわかんないだろうけど俺にはそれが出来るんだ」


「そんな事ありえない!私の魔法は教会の中でも最速、磔刑のバルフェなのよ!私の術より早く動けるなんてある筈がない!」


 そう言いながらバルフェが手を振り指を動かすたびに杭が生えて俺を狙ってくるが、発動を見てから回避してバルフェに近づいていく。

 ……バルフェが言うとおり、この世界で一般的に使われている強化呪文をかけたぐらいだとこの“出の速い”杭の魔法は回避できないと思う。実際、お貴族相手に撃っていた時よりも杭の発生や精度は上がっている。

 それでも余裕なのは俺が発動している自己バフは俺のオリジナルで俺しかできないちょっと特殊なものなのだが、そこまでわざわざこいつに説明してやる必要も無いから言わないけど。


「ありえないなんてことはありえないとかなんとかいうらしいよ?……ありえてる現実受け止めて目の前の事実をみたほうがいいよ。ほら、もう目の前だ」


 リリアンを抱えたままバルフェの前まで歩いていくと俺を見上げながら歯を鳴らして震えている。


「あっ、あっ、あ、あっ……!何やってるのよあいつらぁ、はやく迎えに―――」


「とりあえず……そぉい!」


 バルフェが何か言おうとしていたけど、片腕がふさがっているのでローキックで膝下を蹴ってやるとボキボキという音とともに足がへし折れて崩れ落ちる。


「いぎゃああああああああああああああっ?!」


 痛みと衝撃に汚い悲鳴を上げて地面の上を転がっているバルフェ。


「よし、足はつぶれたな?これで逃げられないしゲームセットだ。

 後は連れ帰って拷問にかけて洗いざらい喋ってもらうけど、逃げたり反抗できないようにきっちり行動不能にさせてもらおうか……お貴族様達を虐殺してくれた落とし前には足りないけどな」


「ひ、ひいいっ、やめて、いだい、いだい!私に痛いことしないでよぉ!私、女の子なんだよぉ?!」


 近づく俺を怯えた目で見ながら手だけで後ずさろうとするバルフェ。よくみると股間がぐっしょりとぬれているので恐怖のあまり失禁してしまったのだろうか、ちょっと臭う。


「リリアンにも言ったけど俺は女の人にはきちんと尊重して接するよ。けどリリアンやお前みたいな下種相手には遠慮しねンだわ。慈悲ねンだわ―――そぉい!!!」


 そのままバルフェの二の腕を踏みつけながら腕をあらん方向に折り曲げると、いい音が鳴って曲がってはいけない方向へ曲がる。


「ぐぎゃあああああああああああああああああああっ?!!」


「あと、痛いかもしれないけど即死させられないまま針串刺しにされたお貴族様達よりはマシだと思うぞ。というわけで反対側の腕もそぉい!!」


「オ゙ァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」


 雄たけびなのか悲鳴なのかわからないけれどとりあえず四肢全部潰して身動きできなくして確保完了。この場で命を獲らないだけまだマシだと思ってほしいね。……帰ったら拷問が待ってるけど。

 オッオッと虚ろな目で涎を垂らしながら呻いているけど意識を失わないあたりはリリアンとの練度の差だな。

 よっこいしょういちっ!とバルフェも脇に抱え、目的の2人を確保したのでクロガネの様子を見てみる。


 クロガネはといえば衣服が裂けたりボロボロになっていて、ズボンはまだ残っているけど上半身の衣服は袖ぐらいしか残っておらず素肌が随分露出してしまってほぼ半裸……うーんこれはサービスショット。

 とまぁそんな冗談はさておき、人の姿で本来の力を発揮していないのにローンをしっかり追い込んでいた、さすが出来る子っ!

 ローンもローンでクロガネを狙って炎の魔法を連打しているが、それをギリギリで見切ったり回避しながら距離を詰めていき懐に飛び込んでいく。……いいぞクロガネー、ペンライトでもぶんぶん振って声援を飛ばしてあげたいかっこよさ!

 

「やられる?この私が、こんな子供に――――?!」


「貫かせてもらうぜ……!」


 驚いた顔のまま反応が間に合っていないローンの胸をクロガネの刀が貫く。血を吐くローンを突き飛ばしながら刀を引き抜くと、ローンは床に倒れて動かなくなった。よしよしクロガネの勝ちだな!


「勝ったぜ、大将」


 そう言って俺に向かってサムズアップをするクロガネ。やばっ、俺の相棒……イケメンすぎ?!


「……しかし重臣含めて結構な家臣団が死んだなぁ」


 滅茶苦茶になった謁見の間を見渡しながらぼやく。


「仕方がないさ大将。俺達が何もしなくても消されてたと思うし……うーんこの国、もう立て直すの無理なんじゃないかな」


 それは確かに。どのみちこの国はおしまいなんだろう。お師匠が後始末はなんやかんやするだろうけどね。


「……ぴ、ぎゅ、いちゃあ……おもにぜんしんがいたいのぜぇ……」


 そんな声がきこえたのでみると、俺の槍で地面に固定されたままセドリックが呻いていた。そういえばほとんどしんでいるけどまだ生きてたなぁこいつ……。気を取り直して介錯してやるか。

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