第19話 スーパー落とし前タイムの始まりだ!


というわけで善は急げとさっさと装備をして王都へと向かう事にした……なぁに、晩飯の時間までには戻るさ!

 巨岩竜の時とは違って空対空を想定し、投擲用の槍を含めた白兵戦装備でいく。

 殆ど武装は無いので一番軽量で、クロガネにのって数刻飛べばあっという間に王都である。


 ……そして飛んで訪れた王都は散々たる有様だった。

 セドリックと、セドリックに同調する若手の貴族やならず者が入り乱れている。つでに道中出幾つも魔物の群れを見つけたが、結界を破られているのか少なくない数の魔物が王国に侵入しているようだったし、諸将や王国外縁部部では侵入してきた魔物との戦いで、セドリックの事に構ってる余裕なんてないだろう。示し合わせたようで不気味なのと、巨岩竜の被害の上にこれだと本格的にどうにもならなさそうだなとは思うけどとりあえずそこは王国に自力で何とかしてもらうとしよう。


 さて、セドリック、セドリックと王都の上空を飛んでいると、王城の上空に白青ツートンカラーのやたらかっこいい……いや、“前世で見覚えがある”シルエットが腕組みしながらこちらをみていた。同じタイミングでそれに気づいたクロガネも空中で停止してくれる。向こうとこちらの間の距離は2~300メートルくらいあるかな?


 ―――うわぁ、あれが王国を建国していた英雄の……伝説の鎧ねぇ。


 多分この世界の人間が見ると異質な甲冑のように見えるんだろうけど、その実それはとあるロボットアニメに出てくるロボデザインそのままなんだよなぁ。

 目が2つにツノが2つが生えてる伝統的な頭部造形は俺が日本に生きていた前世でみたことがあるし、何なら模型をつくったことだってある。バエ……いや、うん。

 ……確かクーデター起こそうとして失敗したキャラが乗ってたロボットだよなアレ。

 はっきりといえばこの世界に本来ある筈のないものだ。

 どちらかというと同人誌即売会とか造形即売会にいるガワレイヤーさん達が着るガワコスプレを予算青天井で超絶リアルに作ったという方が説明がつく。ついでに全体的なsilhouetteがバリバリ作画でアレンジされてるのは製作者のこだわりだろうか?ロボットアニメでバリバリ作画されるとロボット好きはたまんないからね、わかるとも!

 ……ということはやはりこの世界に転生してきたのは、俺が最初でもなければ最後でもないのだろう。

 あの装備は建国の英雄の装備とのことだが、俺よりはるか昔にこの世界に転生してきた誰かが持ち込んだチートの遺物ではないかと思う。

 ……建国の英雄、ロボットアニメとか好きだったんだろうなぁ。さぞ楽しく異世界ライフエンジョイしてたんじゃなかろうか、話が合いそうな気がする。

 とはいえそんな事はこの戦いが終わってから考えるとして、王子の始末だな。まずはあの装備は勿体無いけど……。


「ハッハッハ、この俺を恐れず出てきたことは褒めてやるぞユーマ・サザランドゥ……!俺という偉大なる王っ!の栄光ある未来を邪魔したお前をぶっ殺すのぜーっ、待っていたぜ、

この瞬間をよぉ……!!」


 剣を手に取り、右手に持った剣の剣先をこちらに向けてイキりちらしているセドリック。いつにもまして強気だなぁ。というわけで俺もクロガネに背負わてている装備から投擲用の槍を以て構える。


「御託は良いからさっさと始めるぞ。お前を始末する理由はありすぎるから説明はいらないな?」


「いちいち勘に障るヤローだ!!!今の俺はオジキとの戦いの反省からトレーニングを積んでよりを体になじませた、いわば完全究極体グレートセドリックだ!!ホラホラかかってこいよユーマァサザランドゥ!!」


 何か無駄に自信満々に叫んでるな、あと完全究極体ってことは虫けらってことかな??まぁ良いか、かかってこいというのだしさっさとはじめるか。!

 クイクイとこちらに手招きをしているセドリック。よーしそれじゃぶち殺し確定ね!!とホバリング飛行をしているクロガネの背に跨ったまま、目標へ向かって追尾するよう魔力を込めた槍を投擲する。お前の胸(しんぞう)にラブハートしてやんよ!


「―――“刺したり突いたり穿ったりするなんか凄い槍”(ゲイボルグ)!!」


 音を置き去りにし、赤い稲光のような一撃となってセドリックの右胸に突き刺さる俺の投槍。


「……はぇ?」


 間の抜けた声をあげながら自分の胸から伸びる槍を観て、遅れて絶叫を上げるセドリック。


「うぎゃああああああああああああああああっ!!?槍が、槍がささってりゅうううううううっ!?……くそっ、鎧がなければ即死だったぜチクショウ!!」


 おっと、仕留め損ねたか。セドリック自体はゴミだけど鎧のスペックはやっぱり侮れないな~、初手で心臓抉って終わらせるつもりだったんだけど。

 セドリックは刺さった槍を引っこ抜き投げ捨て、鎧に穴が空いたことにキレ散らかしている。


「てめえふざけんなクソボケカスこら!!これ国宝なんだぞ何傷つけてんだ!!!っていうかお前俺を殺す気かよ!?!?!?」


「そう言ってるだろ?俺はお前みたいにぶっ殺すなんてシャバい事は言わん、ブッ殺したは使ってもいい。というわけで最初からクライマックスだぜ」


 慢心してるのか調子にのっているのかたわけなのかはたまた全部か、戦場だというのに間の抜けたことをいっているセドリック。


「ユーマァ!初手から殺意全開とか人の心とかないのか!?」


「お前相手にそんなもんあるわけないだろ。どんどん行くぞ馬鹿王子……悲鳴を上げろ、豚のような」


  いやぁ何言ってるんだろうね、あの頭お花畑王子。そんな事より命の心配しなよ。

 というわけで次の槍を取り出して構える。これは王子という害虫駆除の作業なのでサクサクと進めようね、折角だし出し惜しみはないぞ。

 …セドリック、お前がどこか転生者の遺物でイキってるなら、お前の前にいるのは転生者そのものなんだぜ?


「伸びろっ、“ゴッドキルランス”!!」


 次に取り出した槍は伸縮自在の魔槍、とても速く長く伸びるので距離を気にせず使えるのが特徴だ。伸縮の瞬間にきらり、と閃光が煌めき一瞬でセドリックまで槍が伸びる。


「うおっ、まぶしっ!」


 そんなことを言いながら慌てて飛び退くセドリック。


「なんだよそれ、ずりぃぞ!!インチキ効果もいい加減にしろ!」


「何、13㎞くらい伸びるだけだ……㎞って言ってもわかんねーだろうけどな」


 そう言いつつ伸び縮みさせての突きを何度も繰り出すが、セドリックに剣で切り払われて穂先を切り落とされてしまった。


「ちょこまかと怠い攻撃しやがって……掠ったけどそんなポコチンみてーなショボい突きじゃ俺をイかせることなんてできなかったなぁフニャチンユーマァ!!!!今度は俺の番だ、いくぜーっ!」


 別にターン制バトルってわけでもないのに律儀に叫んで突貫してくるあたりなんというか戦いの場数が足りてないよなぁと思いながら普段使いしている槍を背中から抜いて構える。


「ずっとずっとお前が邪魔だったんだよユーマァ!王子の俺は!存在するだけで万人から愛され敬われ尊敬されるべきだっていうのに!お前がいたから俺はずっとパッとしなかった!!」


「お前の努力不足では?何もしないで人から愛されようとかおこがましいんじゃないか」


「黙れーっ!王子というのそういうものなのだ!お前さえいなければ俺の人生はこんな風にはならなかったんだよ!!あの世で俺に詫び続けろ、ユーマ・サザナンドォ!!」


 酷い逆恨みだが二本の剣の連撃は中々馬鹿にできない。鎧の力で強化されているのか、こちらも槍を回転さて弾いたり、薙いで攻撃を受け流すので手いっぱいだ。なにより接近しての機動力は自分の羽根で飛んでるセドリックに分がある……だからといって負ける要素はないけど。


「……クロガネ、いくぞ!!フォーメーションB!!」


 俺の声にクロガネが俺を振り落とし、俺の背後へと回る。その様子に警戒したのかセドリックが距離を取るために俺から離れた。

 だがその間にクロガネが人が乗れる程度の大きさだった通常時の姿から、幼竜形態へと自身のサイズを変えつつ俺の肩を足で掴む。


「これがフォメーションB(ブラ=サガリ)だ!!」


「ブラ=サガリ…だと…!?」


 俺の言葉にセドリックが困惑しているが、ブラ=サガリとは銀河の果てで平和を護る為に戦う騎士達が使い最強の究極奥義だ……という冗談はさておいて、騎乗時と違って速度は出ないが空中で自由に行動が出来て小回りが利くスタイルである。

 空中での白兵戦は初めてじゃないし、その対策なんていくらでもある。―――お前とは、踏んだ場数が違うのさ。


「そうでなくちゃな、簡単にお前を殺しちまったら意趣返しにならねえと思ってたんだ。てめえは惨めに無様に苦渋を飲ませたうえでぶっ殺したいと思ってたんだよ!!!」


 そういいながら再びセドリックが突っ込んできたので、右手に槍を、左手に刀を持ってセドリックが振るう剣と打ち合う。


 「無能と蔑まれ王位を追われた俺が英雄と謳われたお前を1人で葬る!!その姿は俺の立場を変える!!王者に相応しい産まれと血統こそがこの世界を統べる力を手に入れることができるのだと知らしめるのだ!!

 そうして今まで冷遇されていた暴力と欲望を求める強者達が俺の元に集いこの国を強くする!!品性とか知性とかそういうのはいらん、暴力だけがあればいい!!そうなれこの国は最強になり俺の勝ちだ!!力こそ最強!!そのためにはお前は邪魔なんだよ、ユーマァ!!」


 セドリックが何やら熱心に叫びながら攻撃してきてるけど、それは普通に治安が悪化するだと思う。

 そしてしゃべるのに熱心になっていて手元がお留守だったので、セドリックの右手の剣を横殴りに刀で殴りつけてへし折ってやる。


「何?!俺様の最強っ!の剣が……!?」


 ―――はい、隙あり。


 折れた剣に驚いた様子で動きを止めたセドリックの腹に、即座に刀を奥まで突き刺してやる―――柄まで通ったぞ、と。


「あ…あんぎゃああああああああああああああああああああああああっ?!!」


 品がない、実に汚い悲鳴だった。

 腹を貫通された痛みに耐えられなかったのか、絶叫と共に墜落していくセドリック……いやぁ本当に豚のような悲鳴をあげるとは思わなかった。

 しかし面倒だけどここできっちりトドメをささないといけないので、堕ちていくセドリックを追いかけて俺も地面へと降下していく事にする。

 ……セドリック、悪いけどお前もう詰んでるんだよ。

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