第3話 爆速で躓く王子の未来【王子視点】

 この国の王子である俺を殴りたい放題に殴りやがってあの童貞野郎……!!

 謁見の間でユーマにタコ殴りにされた後、その怒りに震えつつも鏡の前で全裸になり、ポーズをとっていく。神よ俺は美しい!ふぅ。

 ユーマにいためつけられた顔が完治しているのを確認するために様々な角度からポーズをとったが大丈夫みたいだな……ヨシッ!

 ボコボコに晴れ上がっていた顔は高級治療術士を何人も使って回復させ、俺のモテモテイケメンフェイスも無事元通りだ。高級治療術士1人で死の淵にある重病の患者10人を完治できると言われるが、下級市民の命より俺様の美貌の方が大事だからな、緊急招集かけて治させたぜ!!

 ……だが傷は治っても痛みそのものは消えないので主に顔が痛いんだぜ、ボケユーマがよ。


 ……俺だって、何も最初からディアナを疎んじていたわけではない。

 国のために働く聖女であるディアナを大事にしてやろうと思った気の迷いもあった。

 だが、以前王宮に宿泊しているディアナが風呂に入っているのを覗いたとき、ディアナの身体に残る大小の傷をみてしまい、心と俺の股間に宿し聖剣が萎えてしまったのだ。ディアナが国のために冒険をしているというのは聞いていたし、その過程で治り切らない怪我の傷跡が残ったのだろう……けどそんなの関係ねぇ!

 ディアナは顔はそこまで悪くはないが、傷の残った体をみたらいざヤるとなったときに俺の股間の聖剣もやる気をなくしてしまう気がする。

 王子であり、ゆくゆくは王になる俺がそんな嫌な気分をしながら女を抱きゃなきゃいけないなんてぶっちゃけありえない。


 俺という神に祝福されし次代の王は全てが意のままに完璧であるべきだと思うし、あんな下々民上がりの女で満足してはいけないと思うのだ。

 そこで目をつけたのがユーマの幼馴染であるリリアン。高貴な家の生れの箱入り娘で美しい肌、整った顔、そしてはちきれんばかりの胸。完全に俺の女になるべくして生まれたと言っても過言ではない。特にあの胸、もう本当に凶暴なくらいの胸。……あと幼馴染ってことは寝取られるべくして寝取られるものだしな!!どうせ誰かに寝取られるんだろうしそれなら俺が寝とっても問題ないっしょ!

 俺は即座にリリアンにアプローチをかけたが、正妻にしてやると言ったらその日のうちに俺に身体を許したんでチョロいもんだぜ。ちなみに当然初めてだった。……何もかも思ったとおりにうまくいく、やはり俺は神に愛されし王子なんだよなぁ!

 

 それからディアナとユーマと連れのドラゴンが旅している間に俺はリリアンとヤリまくりながら、俺とリリアンが婚約者になるための一計として、聖女教会に大金を払ってリリアンを聖女として認定させた。

 聞けば、魔力量でいえばリリアンはディアナの二倍あるというのでこの国を守る結界の維持は容易いようだし、それならリリアンを聖女にしてしまえば合理的に俺の女にできる。

 やっべ、俺やっぱり神に愛されてる超天才世界級美男子すぎるんだよなぁ!!

 何よりあのユーマの女を寝取って抱いてる事が何よりのスパイスとなり、俺の聖剣さんも出力最大にもなるんだぜ。これは跡継ぎが産まれるのもそう遠くないんじゃないか??


 ―――そんな事を振り返りつつ、俺は腹心でありリリアンの親である大臣を呼び寄せて今後の事を話し合った。ディアナとユーマを追放したのはいいが、国民に対してはどう喧伝するか。


「全国民に祝い金をバラまきつつ、王子の栄光と、真なる聖女として我が娘リリアンを讃えるように私の手の者に流布させます。そしてユーマとディアナを貶める噂も広めます」


「いいと思うけどだがそんなに景気よく金をバラまいても大丈夫なのか?」


 国庫のお金と言っても無限じゃない筈。


「後から税率あげてバラ撒いた以上に搾り取るので問題ないです」


「そうか、なら問題ないな。よし早速やれ」


 俺の言葉に頷き、リリアンパパは早速動き出した。さすが大臣だけあって即断即決である、ちなみに俺とリリアンが肉体関係にある事を暴露したときに即座に俺に寝返ったのでリリアンパパは有能だ。


「―――セドリックよ」


 そしてリリアンパパを見送った後、親父が部屋を訪ねて来た。突然の訪問に驚き飛び上がるが、親父は昏い顔をしていた。シケた顔したおっさんだなぁ、これからは俺より目立つユーマが消えて俺が輝けるようになったっていうのによ。


「あぁ、父さん。どうしたんだよ」


「お前は……お前は何という事をしたのだ。あんな馬鹿げた追放劇をするなど、何と愚かな事を…」


 あぁん、何言ってるんだこのおいぼれ?


「リリアンとの事を儂に打ち明けた時、お前は儂と約束したな?ユーマに対して頭を下げて詫びると。リリアンを奪う事になったその謝罪をすると。頭を下げて許しを請うと」


「あぁ、その事か―――その事なんだけど、よくよく考えたらさ、いずれこの国のトップに立つ王子の俺が、たかが騎士に頭下げるって……おかしいなって思ったんだよね。だから別に頭下げる必要とか詫びる必要とかも無いかなっていうか、別に奪うも何もこの国にあるんだから俺のモノっていうか」


「このバカモノ!!貴様のその軽はずみで浅はかな行動でこの国がどれほどの窮地に立ったのか理解しておるのか」


「きゅうちぃ?何いってるんだよ父さん、この国は完全平和が訪れてるし、俺の元には選りすぐりの貴族の息子たちを集めた壮麗な“セドリックパーフェクトプリンス騎士団”がいるんだぜ?」


「……駄目だ、お前では話にならん。わしはお前の育て方を誤った」


 そう言いながら肩を落としさっていく親父の背中を見る。さっきの出来事以来、親父は疲れ切ってるみたいだ。しかしむかつくなぁ、何が育て方を誤っただよクソ親父。……うん?あれ?親父がいなくなれば俺、国王じゃね??


――――つーか、ヤる??


 密かにそんな事を考えつつ、リリアンパパに相談するかと考えつつ、その日はリリアンを部屋に呼びつけてヤリまくった。婚約者になったし、もう人目を気にする必要もないしな!!俺って天才すぎるわ。


 だがその翌日、国の西にある村が魔物に攻め滅ぼされた事、そして西の砦が陥落しかけていることが早馬で告げられた。は???リリアンが結界張ってるはずじゃなかったっけ?まぁ引き継いだばかりの隙を突かれたのかもしれないので仕方がないけどさぁ。

 それより何やってんの雑魚兵士。給料泥棒かよ、っていうか死んでも戦って来いよ。兵士の代わりなんていくらでもいるんだし、神聖なるこの俺の王国の領土を魔物に獲られるとか無能すぎるだろ。死ぬまで持ち場で戦えよそのための兵士だろ。

 そして昨日のうちに国の西側には現地から早馬や伝令が飛んだのか、西側の領主たちが砦への援軍を申し出たり準備をしているようだった。ノンノンノン、ダ~メェ~だめだめ。


「ハッ、使えない雑魚兵士に任せてるからそうなる。そんな領主共の援軍なんか不要だ、俺のセドリックパーフェクトプリンス騎士団で蹴散らしてやるぜ!!」


 たかが魔物の群れ位、フル装備の俺の騎士団なら余裕だ。俺は親父にそう提案し、魔物の数が100体程と聞いたので選りすぐりの300名を向かわせた。親父は俺の提案を最後まで拒否していたが、リリアンパパが巧みに説き伏せてくれた。ユーマやディアナが去った今、国の今後の為にも俺の功績とした方がよい、と。リリアンパパからも精兵400名が増援として派遣されることになり、合計700名の大部隊が派遣された。7倍の兵力差、こんなん一方的な蹂躙になっちゃうよなぁ☆


 そして到着したその日にはひとり残らず全滅した―――こっちの軍が。


「全滅……?!精兵400名が全滅……?!半日もたたずにか」


 リリアンパパはさすがにショックをうけていた。重歩兵、フル装備の騎士、そして砲兵、魔導兵を加えた特等の軍400名に、俺のセドリックパーフェクトプリンス騎士団300名が1日も持たずに皆殺しに遭うなど、ありえない。しかもその間に砦は陥落し、砦の駐屯兵も、避難民も等しく皆死んだらしい。


 別に兵士や下々民が死ぬのはどうでもいいが、俺の騎士団まで全滅とかマジでありえねぇ。部隊を任せた隊長の奴も、


「勝利の栄光を王子に!」


 とかいってたくせにあっさり壊滅してるし、本人も戦死したのか消息不明になってるしよぉ。なんなんあの口だけ無能野郎。

 国の東をおさめる王弟、もとい辺境伯のオジキだけは親父からの待機命令を無視して伝令が届くや否や全速力で行軍して国を横断していたらしく、俺が派遣した部隊が全滅するのと入れ替わりで到着して砦を取り戻したみたいだ。そのせいで俺や俺のセドリックパーフェクトプリンス騎士団は「口だけ無能王子」「お飾り騎士団」と陰口をたたかれることになった。クソクソクソクソッ!!オジキもなんてタイミングで参戦しやがる、つーか俺の騎士団もっと粘れよどうして俺の騎士団すぐ死んでしまうん?!

 なんでこんなことになってるんだよ!!リリアンパパの策も金バラまくだけで無駄になっちまいそうだしどういう事なんだよ。


……あー、やってられねぇ。どいつもこいつも使えねーやつだぜ。俺の輝かしい未来に泥を塗った奴らなんか死んで当然なんだぜ、気分が悪い。ともかく今日はリリアンとヤリまくって寝よう。嫌なことはヤって忘れるに限るぜ!まぁ領地は取り戻したんだし、なんとかなるなる☆俺王子!だしなっ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る