◆中編
竹林に入ると、そこは恐ろしいほどの暗闇だった。たった一メートル進んだだけなのに、国道の明かりは入って来ないし、車の音すら聞こえない。鬱蒼と茂った竹のせいで、月明かりすら届かないのだろう。風になびいて聞こえてくる竹の葉の音が、ただただ不気味だった。
「や、やっぱ奥まで進むのはやめようかな!? 竹林の奥をバックにして自撮りだけして帰るか!」
早々に日和った俺は、車道側に顔を向けて竹林と自撮りをしようとした。が……。
「あ、あれ? 道路は?」
歩道を挟んで見えるはずの車道が見えない。というより、歩道すら見えない。明かりが一切見えない。
「て、て、停電だよな!?」
俺は動揺したが『停電』という言い訳を見付けて気を落ち着ける。そうだ、そんなわけない。たった一メートル進んだだけで出られなくなるだなんて、富士の樹海ですらそんな話は聞いた事が無い。
「よ、よし。とりま自撮りだけでも」
平静を装ってスマホのカメラのシャッターを切る。一応そこで取れた写真を確認すると……。
「ひ……ひえっ!!??」
俺の背後に俺と同年代くらいの少年が写り込んでいた。
「な、な、なんだこれ!!!!!!」
後ろを振り返ると、そこにはガチで少年が立っていた。
「ひ、ひぃぃぃ!!!!!!」
俺は恥も外聞の無くひたすら絶叫した。逃げたかったが俺の腰は抜けてその場に尻もちを付いてしまっていた。
「怖がらないで……」
少年が淡々とした口調で言葉を紡ぐ。
「しゃ、しゃべったぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
俺の目からは涙がとめどなく溢れ、鼻水も垂れて、身体全体がガクガクと震えていた。
「だから怖がらないで良いって。僕も君と同じ肝試し民だから」
「は……はいぃぃぃ!!!!!! 殺さないでーーーー!!!!!! って……え?」
少年は俺にそっと手を差し出す。
「とりあえず立ちなよ。それから涙と鼻水を拭いて。話はそれからだ」
俺は少年がくれたティッシュで顔を拭くと、やっと落ち着いて声を出せた。
「君も肝試しに来たのか? あのさ、今ってこの辺停電中?」
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