千葉県I市の禁足地

無雲律人

◆前編

 俺は涼太。今は夏休みで宿題と予備校通いで忙しい。


「高校二年生の間にどれだけ勉強できるかが受験の合否を分けるわよ。だから張り切って勉強しなさい!」


 教育熱心な母ちゃんからは毎日そうせっつかれて息が詰まる。


 だからだ! だからこそだ! 俺は親の目を盗んでこっそりと夏の一日を楽しもうと思う。夏と言えば暑い。暑いと言えば涼みたい。涼みたいと言えば怪談。怪談と言えば肝試し、だ!


 善は急げと、晴れた蒸し暑い日の夜中の零時に、おれはに来た。


 そう、地元千葉県I市では有名な『やぶ知らず』だ。


 藪知らずは、ぱっと見ただの狭い竹林だ。だがそこには昔から言い伝えがある。入ると二度と出られなくなって神隠しに遭う、というものだ。


「へへっ。中に入って自撮りして、それをエクシッターに載せれば大バズりよ。俺にも収益化の話が来たりして。ぐへへ」


 深夜の藪知らずの周りには人気ひとけは無い。国道に面している立地からか、ぽつぽつと車は通るが日中ほどではない。俺は、車がいなくなった瞬間を見計らって正面の祠がある所から突入した。


「こんな狭い竹林で出られなくなるって? 笑わせるなよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る